1/2秒という超スローシャッターで流し撮りをしました。まるで線路と列車が緑のじゅうたんの上に浮いているかのような作品に仕上がりました。
【アクセス】
JR松本駅などから大糸線を利用。
【便利なきっぷ】
【おすすめ情報】
鉄道写真では列車を止めて写し撮るということがメインなので、1/500秒や1/1000秒などといった高速シャッターが多用されます。そして、使用レンズや列車のスピードという条件によって、どのシャッター速度を選択するのかということに重点が置かれます。今回はそれとは逆の発想で、超スローシャッターで作品を創り上げるヒントをお話ししましょう。
スローシャッターでまず一番に思い浮かべるのが「流し撮り」です。1/60秒前後のシャッター速度で、背景を流して列車を止める技法です。流し撮りをされる人は多いと思いますが、超スローシャッターでの流し撮りは、列車に迫力を出すという通常の流し撮りとは全く違う作品にすることができます。超スローシャッターというのは、1/2秒から1/8秒程度のシャッター速度のことで、これだけスローシャッターで撮影すると、背景は流れるというイメージではなく、「色」として浮かび上がってきます。そう、色の中に列車が浮かび上がっているような作品にすることができます。ただし、技術的にはかなり難しく、運まかせといった感がありますが、まぐれでも成功した時の感動は最高です。
次に紹介するのは、列車をわざとブラすことによって、列車の動感を出すというテクニックです。悪天候の時などは、光がないのでフラットな写真になりがちです。すなわち列車が風景に溶け込んでしまい、列車の存在感が薄れてしまうのです。そんな時はスローシャッターで列車をブラしてあげるのが効果的です。ここでのポイントはブレてはいるものの、列車の容姿が分かる程度のシャッター速度にすることです。列車のスピードにもよりますが、極端にスローシャッターにし過ぎると、列車が帯状になってしまい列車だか何だか分からなくなってしまうことがあるからです。悪天候の場合は、超スローシャッターにしても絞り値は対応できるとは思いますが、晴天の日など明るい条件では、レンズの絞りだけでは絞り切れず、スローシャッターを切ることができません。そんな時は、光の量を減光することができるNDフィルターを装着して撮影します。3絞り暗くすることができるND8フィルターあたりがとても重宝します。また、デジタルになってf22など小絞りにすると発生する「絞りボケ」を回避するためにも、NDフィルターを使用して、f8やf11程度に設定して撮影した方が、高画質な作品に仕上がります。
超スローシャッターの楽しみはまだあります。それは、列車のライトを光跡にして作品にするテクニックです。列車の通過する時間すべてにシャッターを開けることによって、列車のライトが光跡となって浮かび上がります。もちろん夜明け前や日が暮れてからの撮影となります。先頭車のライトは想像以上に明るく、レンズフレアなどが発生し、なかなかうまく撮影できません。赤い尾灯を光跡として撮影するのがおすすめです。
超スローシャッターを利用することによって、肉眼では見ることのできない世界を創造して作品にすることは、自分の想いを表現する一つのツールになることは間違いありません。ぜひ一度チャレンジしてみてください。もちろん、三脚は忘れずに……。
風景写真で滝をスローシャッターで撮影するということは定石です。列車も適度にブレてくれて滝に負けない存在感が出ました。シャッター速度は1/2秒です。
【アクセス】
JR高崎駅などから上越線を利用。
【便利なきっぷ】
【おすすめ情報】
黄昏の上野行き「北斗星」をブラして撮影しました。ブルートレインならではの旅情を表現することができました。シャッター速度は1秒です。
【アクセス】
JR長万部駅などから室蘭本線を利用。
【便利なきっぷ】
【おすすめ情報】
駅の情景を撮るときは、列車をブラしてあげた方が主題である駅を惹き立てることができます。列車を止めてしまうと、撮影意図が伝わりにくくなります。シャッター速度は0.3秒です。
【アクセス】
JR会津若松駅などから只見線を利用。
【便利なきっぷ】
【おすすめ情報】
夕暮れに浮かび上がる富士山ですが、この時間帯に列車を止めて撮影するのは難しいです。スーパーあずさの尾灯を光跡にして作品に仕上げました。シャッター速度は30秒です。
【アクセス】
JR新宿駅などから中央本線を利用。
【便利なきっぷ】
【おすすめ情報】
横浜市生まれ。大学卒業後、鉄道写真家・真島満秀氏に師事。青春18きっぷなどのJRポスターを撮影する他、JR時刻表では「ごちそう路線旅」を担当。(社)日本写真家協会会員、日本鉄道写真作家協会会員。