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鉄道が嫌いじゃない貴女におくる、女子力アップのヒント集『鉄子の部屋』 近頃認知度急上昇中なのが、女性鉄道ファン・通称“鉄子”。男性鉄道ファンに比べると、マニア度や緻密度においてはひけを取るかもしれませんが、情熱や遊び心は全く負けてない! 『鉄子の部屋』は全く新しい、女子のための楽しく明るい鉄道エッセイです。(注)鉄道が好きな女性を愛称で“鉄子”と呼びます。

*第8鉄* 3泊4日で鉄子必須のゴールデンコース ひたすら山中を走る、愛すべきローカル線を訪ねる。 Part3』

含まれる鉄分
★山田線 ★釜石線 ★三陸鉄道 ★上有住駅 など

文=屋敷直子

久々の生活のにおいを懐かしく思う

 3日目。寒い。山田線の車内温度計は15度。宮古から釜石までの山田線は、ときどき景色が開けて海が見える気持ちよい路線だ。
 宮古を出発すると、地元の高校生が次々に乗り込んでくる。通路をはさんで隣に陣取った彼女たちは、鏡をチェックする、朝ご飯のおにぎりをほおばる、友達が乗ってきて挨拶を交わす、トイレに行く、と乗車時間をとても有効に使っていた。未だ眠い当方は、思わず見惚れてしまう。途中の無人駅では、地元のおばあちゃんが金網にアサガオの蔓を丹念に巻きつけている。なんだかずっと人気(ひとけ)が少ない駅を通ってきたので、日々の生活を懐かしく感じた。
 釜石で花巻行きと盛(さかり)行きの車両の切り離しがあり、高校生は仕度を済ませて降りて行く。代わりに新日鐵の社員とおぼしき男性がオロナミンCを手に乗ってきた。

見つけた、あたしの上有住駅

 上有住(かみありす)に到着。降りた瞬間に感じた。「あたしの駅だ」。とうとう見つけた。滝観洞(ろうかんどう)という洞窟があるほかは、民家もないようなところだが、生まれ故郷のようにしっくりくる。何時間でもいられる気がする。実際、2時間ほど駅でぼんやりしたのだが。
 滝観洞は、岩泉の龍泉洞より本格的な洞窟で、受付でヘルメットと長靴を借りて、洞窟内の電気をつけてもらう。そうはいっても、電気は裸電球で、手すりは錆びて心もとない。行って帰ってくるのに、ゆうに1時間はかかる。暗いし足下は滑りやすいしで泣きそうになるが、なにより洞窟内でいきなり人と会うことが、いちばん怖い。
 めったに探検者は来ないと見え、管理しているおじちゃんに親切にしてもらう。実はもうひとつ、奥に洞窟があると聞かされてこちらも探検。洞窟の廃墟という趣で、かなりヒンヤリする。冷えた体を、食堂の天ぷらそばで温め、上有住駅をじっくり味わう。ホームに腰掛けて足をぶらぶらし、ホームに寝転んで空を仰ぎ、枕木を数え、駅舎にある時刻表を暗記しようと試み、ホームの端から端まで何歩あるか数え歩き、下り電車を見送り、とやっているうちに、あっという間に2時間が過ぎた。今でも、あの空気を鮮明に思い出す。あたしの上有住駅。あのときは、もう二度と巡ってこないからこそ、忘れがたく尊い。

次回に続く

主な“鉄子”

神田ぱん
1963年生まれ。おひつじ座のO型。茨城県日立市出身。三児の母。ミニコミ『車掌』(内容は非鉄)の営業部員という顔も持つ。「ケータイ国盗り合戦」ではまだ武将止まり、目指せ太閤。文筆業。
屋敷直子
1971年生まれ。おとめ座のO型。川崎市生まれ、福井市出身。故郷を愛するあまり「ふくいブランド大使」に登録。会員番号05121359。特技はピアノ。0系新幹線ラブ。文筆業。
さくらいよしえ
1973年生まれ。てんびん座のA型。大阪府交野市出身。『日刊ゲンダイ』で連載。著書に『立ち飲み天国』(ライブドアパブリッシング)『読みキャベ』(交通新聞社)。転換クロスシート愛好家。文筆業。
H岩美香
1972年生まれ。しし座のA型。東京都目黒区出身。株式会社弘済出版社(現交通新聞社)入社後、時刻表編集部、月刊『散歩の達人』を経て、月刊『旅の手帖』編集部へ異動。忘年会はお座敷列車希望。サラリーマン。

書籍紹介

鉄子の部屋
『JR時刻表』『交通新聞』『鉄道ダイヤ情報』などでおなじみの交通新聞社が、満を持してお届けする、女子による女子のための鉄道エッセイ&ガイド本。
●定 価 1,365円(税込)
●仕 様 A5版160ページ

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