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鉄道が嫌いじゃない貴女におくる、女子力アップのヒント集『鉄子の部屋』 近頃認知度急上昇中なのが、女性鉄道ファン・通称“鉄子”。男性鉄道ファンに比べると、マニア度や緻密度においてはひけを取るかもしれませんが、情熱や遊び心は全く負けてない! 『鉄子の部屋』は全く新しい、女子のための楽しく明るい鉄道エッセイです。(注)鉄道が好きな女性を愛称で“鉄子”と呼びます。

*第10鉄* 3泊4日の長野欲ばりコース せっかく長野に行くのなら、あらゆる路線のあらゆる車両に乗らなくてはと思ったのだ。Part1

含まれる鉄分
★小海線 ★ハイブリッドこうみ ★JR鉄道最高地点 ★しなの鉄道 ★上田電鉄別所線 ★別所温泉駅 ★丸窓電車 ★長野電鉄 ★ゆけむり号(旧ロマンスカー)など

文=屋敷直子

 玄関を出たら雨だった。空のどこを見ても灰色で、太陽の気配はまったくない。いったい何の因果か。山方面へ行くから事態が好転するとは思えない。でも出発する。「長野のいろいろな電車にたくさん乗って、終点の温泉でのんびりする」ためには、雨なぞにくじけてはいられないのだ。

雨のなか、高原列車に乗る

 高尾から中央本線に乗る。いつもの生活だと高尾は終点だが、今日はここが始点。いつもの駅のその先へ。胸が高鳴る。雨でけぶった山々が続くが、大月を過ぎるとすこし晴れてきた。山梨県に入ると、なだらかな平地に見渡すかぎりブドウの木が並んでいる。むかし地理で習った「甲府盆地ではブドウが栽培されていて、特産はワイン」を肌で感じることができた。

 13時すぎ、小淵沢駅に到着。小海線のはじまりである。小海線では、平成19年の夏、世界初のハイブリッド車両「こうみ」がデビューした。ディーゼルエンジンと蓄電池を使い分けて走るエコ車両で、発車するときは蓄電池、加速するときはディーゼルと蓄電池でモーターを動かす。さらに停車時、ブレーキをかけるときに出るエネルギーを蓄電池に貯めておくこともできる。つまりムダがない仕組みなのだ。

 13時14分発の「こうみ」号は、大混雑。そんなに人気なのか? と驚くが、乗客はおじさま方、おばさま方がメインだ。「あら、なんだか新しい車両なのねえ」「きれいね」と、口ぐちにおっしゃっているところをみると、特に「こうみ」目当てではないらしい。

 いっぱしのイベント列車のような、にぎやかで期待感いっぱいの雰囲気で出発する。発車がスムーズ、と思ったのは気のせいか。でも音はたしかに静かだ。

 中央本線の景色とは一変して、緑濃い森の中を「こうみ」は走る。ときどきメルヘンな別荘がぽつぽつと建っているのが見えるくらいで、線路が通っているのが不思議なくらいだ。秘境というのとはまた違った隔絶感。景色が鮮やかで心細くならないローカル線、というのも新鮮だ。清里で、おじさまおばさま軍団が降りていかれる。大学のサークルの合宿というイメージだったが、今の清里はそうでもないらしい。

 次の野辺山駅までの間の線路脇には、JR鉄道最高地点(1375m)があり、車内でもアナウンスされる。

天文台とお弁当と鯉

 野辺山駅(標高1345.67m)で下車。レンタサイクルを借りて、野辺山天文台へ向かう。ここは星を観測しているのではなく、巨大パラボラアンテナの電波望遠鏡で宇宙に飛び交う目に見えない電波や光線を観測している。無料見学できるみたいだからちょっと行ってみるか、という気軽な気持ちだったが、予想外に圧倒される。

 構内には、直径45mのパラボラアンテナの他にも小さいアンテナが多数、整然と並んでいる。そのアンテナの間を運搬用のレールが延びている。しかもレールの幅はかなり広い。曇りがちな空の下、大小取り混ぜた多数のアンテナと長く延びるレール。さっきまで爽快な小海線に乗っていたことを、すべて忘れさせるSFな景色だった。

 野辺山駅で駅弁を食べ、ふたたび小海線に乗る。雲は次々と形を変えて動いている。雨が降ったりやんだりしているが、突然山の稜線から大きな虹が見えた。希望。

 駅には標高が書いてあって、どんどん下ってきているのがわかる。小海駅以降は民家が増えてきて、生活のにおいがしてくる。今晩は、中込で泊。佐久鯉が名物と聞いて、鯉料理を食す。刺身、からあげ、煮付け、鯉こく、ウロコの酢のもの、ウロコせんべい、など、まるっと一匹ムダなくいただいて、満足。10年ぶりくらいに自転車に乗った疲れが出て、21時、夢も見ずに眠る。

次回に続く

主な“鉄子”

神田ぱん
1963年生まれ。おひつじ座のO型。茨城県日立市出身。三児の母。ミニコミ『車掌』(内容は非鉄)の営業部員という顔も持つ。「ケータイ国盗り合戦」ではまだ武将止まり、目指せ太閤。文筆業。
屋敷直子
1971年生まれ。おとめ座のO型。川崎市生まれ、福井市出身。故郷を愛するあまり「ふくいブランド大使」に登録。会員番号05121359。特技はピアノ。0系新幹線ラブ。文筆業。
さくらいよしえ
1973年生まれ。てんびん座のA型。大阪府交野市出身。『日刊ゲンダイ』で連載。著書に『立ち飲み天国』(ライブドアパブリッシング)『読みキャベ』(交通新聞社)。転換クロスシート愛好家。文筆業。
H岩美香
1972年生まれ。しし座のA型。東京都目黒区出身。株式会社弘済出版社(現交通新聞社)入社後、時刻表編集部、月刊『散歩の達人』を経て、月刊『旅の手帖』編集部へ異動。忘年会はお座敷列車希望。サラリーマン。

書籍紹介

鉄子の部屋
『JR時刻表』『交通新聞』『鉄道ダイヤ情報』などでおなじみの交通新聞社が、満を持してお届けする、女子による女子のための鉄道エッセイ&ガイド本。
●定 価 1,365円(税込)
●仕 様 A5版160ページ

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