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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。昭和56年、泉晴紀とのコンビ「泉昌之」で書いた短編漫画『夜行』でデビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B作の『中学生日記』(青林工藝舎)、ドラマ化され放映中の谷口ジローとの共著『孤独のグルメ』(扶桑社)、水沢悦子との共著『花のズボラ飯』(秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開。

八高線 はちこうせん

八王子駅(東京都八王子市)から倉賀野駅(群馬県高崎市)までの全23駅。92.0km。関東平野の西部を走る。今回歩いたのは埼玉県入間市、東京都瑞穂町、昭島市、八王子市あたり。

 走り出した電車の車窓からずっと景色を見ながら、線路に沿った道が案外少ないことが少し心配になった。相当ジグザグ歩くことを覚悟した。小宮と拝島の駅の間で多摩川を越えることがわかった。

 拝島を越え、箱根ケ崎を過ぎたところで風景が完全に変わった。畑が多くなり山が見えた。次の金子はたしか埼玉県なので、ここで電車を降りる。無人駅のような小さな駅だった。駅舎は木造で瓦葺きだったが、そう古くは見えない。駅前には塾と居酒屋しかなかった。田舎に来た感じがする。線路にできるだけ沿った道を探し歩き始める。駅前には新しい家も多く売り出し中の家もあった。都内への通勤圏という感じ。

 道沿いに漬物店の看板があり「左へ2㎞」と書いてあり、ああここは車社会なのだなと思った。茶畑が多い。雨に濡れた緑は美しく、植物が雨を喜んでいるのがわかる。国道と思われる車道を歩いたが、線路からどんどん離れていく気がする。「農道」と看板のある舗装道に入り、線路方面に戻ろうと歩く。「農道」という看板はふたつあった。書いてなければ農道には見えないが、そんな看板見るの初めてだ。私道ということか。

 麦畑からスズメの群れが飛び立った。そんな光景を見るのは何年ぶりか。茶畑が多い。そういえば狭山茶の狭山が近いはずだ。


散歩出発は金子駅。木造でシブイ

八高線は鉄道、ボクは農道を東京方面に歩いた

 ようやく八高線を発見し、近くを歩いていたが、雑木林に突き当たり、塀に沿って線路から数百m引き離された。工場がいくつか固まってある。雨は小ぶりのまま一向に降り止まない。道路の真ん中に窪みがあり、水たまりに電信柱が映っていた。

 広い道路に出て、東京方面に歩いていたら、塀に囲まれた森があったが、妙に美しい。なんだろう、この感じと思って中にちょっと入ったらゴルフ場だった。そうか、狭山カントリークラブだきっと。ボクはゴルフというスポーツに恨みはないが、狭い日本の自然を破壊して、不自然な人工自然を少人数で独占して遊ぶゴルフ場は嫌いだ。ちぇ、と思う。全部廃場して自然公園にしてほしい。ゴルフやりたい人は海外に行ってやればよい。そういうスポーツがあったっていい。

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