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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。7月からテレビ東京系でドラマ『孤独のグルメ』の第4シーズンが放映中。

鹿児島本線 かごしまほんせん

門司港(もじこう)から新八代(しんやつしろ)までの232.3km81駅と、肥薩おれんじ鉄道を挟んで川内(せんだい)から鹿児島までの49.3km14駅。今回は北九州市の小倉から門司港、関門海峡付近を歩いた。

 

 初の北九州だ。小倉(こくら)から鹿児島本線に沿って門司港まで歩こうという計画。関門海峡を見るのも楽しみだ。
 夕方小倉に着いて、繁華街を散歩してたら、ゆるゆると自転車に乗った60過ぎくらいの男の人に「あれ、もしかしてクズミさん?」と、声をかけられる。『孤独のグルメ』をいつも観ているんだそうだ。ホテルのフロントの若者にも「もしかして」と小さな声で言われる。ボクの本をたくさん持っているそうだ。そのあと飲み屋でも握手を求められた。案外小倉で有名。小倉好きになりそう。

 翌朝、9時前に出発。いい天気。歩いていると、神社があり、そこの説明書きに、小倉から門司の大里にかけては「企救(きく)の長浜」と呼ばれていて、万葉集などにも歌われているという。そして、江戸時代にはこの道を、九州諸藩の大名が参勤交代で歩いたとあった。同じ道を歩いているボクは、大名行列に参列しているようなものか。ここから歩いて東京。気が遠くなる。でも、そう言われると、ゆったり曲がった道には旧街道の風情が感じられる。


この道を大名行列が江戸へと向かった

 線路の海側の国道を歩いていくと、やがて海が見えた。大小の貨物船が停泊している。入り江のようになっていて堤防で魚釣りしている人が多い。赤坂海岸という信号を渡る。右手のなだらかな山の斜面にびっしりと家が建っている。すぐ、自転車じゃ無理、酔っぱらってたら歩いて登るのキツイな、と思うのはボクが車の免許を持っていないからだろうか。小さい川をいくつも渡る。いずれも水が海の方から逆流しているように見えた。

 10時半、海の向こうに右手から延びてくる陸地が見える。本州だ! 山口県だ! なんだか感激する。感激の理由が自分でもわからない。でもなんだか心が揺れた。九州から本州を見たからか。なにかダイナミックな光景に感じた。


本州の最西端だ! なぜか感激した
釣り上げるところにちょうど出くわす

 ほどなく門司駅前に着く。なーんだ、軽いじゃないか。駅に向かう前に、余裕で海に面した公園に行く。釣りをしている人がいて、その釣り竿がものすごくしなっている。何かかかっている。しばらく見ていると、大きな魚が海面に現れた。釣り上げたそばに行って「なんて魚ですか?」と聞くと釣り人は「チヌだな」と答えた。今調べたらクロダイの俗称だ。40cmはあった。

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