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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

流鉄流山線 りゅうてつながれやません

馬橋(松戸市)から流山(流山市)までの5.7㎞、6駅。
平成20年までは総武流山線と呼ばれていた。
かつて西武鉄道で使われていた車両が2両編成でいくつも走っている。

 


まさか流山から富士山が見えるとは思わなかった

 平和台駅。まだまだなのか。流山に着いたらまっ暗だな、と思ったら意外にも駅間短く流山駅に到着。5時少し前。坂を上って跨線橋からホームを見下ろし、赤い車両があるのも見つけ、へー、と思って前を見たら、西の空の底に富士山が小さくクッキリとそのシルエットを見せていた。おお!声が出た。スマホなんかに頼らず、自分の足と知恵でここまで歩いたご褒美だ。こんなところからも見えるのか。神々しい。感動した。やっぱり富士山は、日本人にとって特別な山だ。

 ちょっと駅前を見たが、ついにまっ暗になったので、来ていた電車ですぐ帰ることにする。ホームから車庫が見え、黄色い車両とオレンジの車両もあった。いいなぁ。


手編みの模様が全部違うのが、いかにも手作りだ

鉄道ファンでなくともグッとくるこのアナログ書体

 ホームのベンチに手編みの毛糸座布団が敷いてあったのが微笑ましい。柱の駅名「ながれやま」の字が、手書きの明朝体っぽくて、アナログ感あってよかった。マニアならグッと来るだろう。いや、鉄チャンでなくとも。
 電車が発車してわずか12分で始発馬橋に戻る。実は今日歩き始める時、馬橋の駅前に銭湯の煙突を見つけていた。すぐそこに向かう。玄関には「馬橋バスセンター」とあったが、今地図で見たら「馬橋湯」だ。お年寄りで混んでいた。短いつたい歩きだったが、焦ったせいか足が疲れている。この湯があってよかった。湯に浸かり今日を振り返る。

 馬橋の駅に戻り、階段を上ろうとしたら、横にエレベーターがある。これで上がって帰るか、と思ったら降りてきたエレベーターのガラス越しになんと翌日一緒に演奏するピアニストの女性が乗っていた! 彼女はボクと同じ吉祥寺に住んでいる。それがこんなところで! ドアが開く前からお互い驚いて笑った。旅に偶然は付き物とはいえ。

※「旅の手帖」2015年2月号より掲載しました。

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