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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。作曲・演奏をした『孤独のグルメSeason4』サウンドトラック盤(地底レコード)が好評発売中。

武豊線 たけとよせん

大府(大府市)から武豊(武豊町)までの19.3km、10駅。明治19年(1886)全通の古い路線。
今年の3月から全線が電化され、名古屋近郊の通勤通学路線としてさらなる活躍が見込まれる。

 

 愛知県の知多(ちた)半島の根元を走るJR武豊(たけとよ)線につたい歩きした。いつもは線路につたい歩いて、その列車で帰ってくる。でも今回は始発駅の大府(おおぶ)から終点の武豊まで、先に列車で行き、逆につたい歩いて亀崎駅まで戻り、そこから列車で大府に帰る。つまり、歩く土地を先に列車から見てしまう。答えを知って散歩に行くようで、ちょっとつまらない気もするが、まぁ、歩いてみなけりゃわからない。

 なにしろ「大府」がなんと読むのかもわからなかったボクだ。武豊線には「乙川(おっかわ)」なんていう駅もある。難読駅のひとつではないか。ボクの乗った車両は、座席がクロスシートで、空いていたので快適だった。列車の座席の配列方式のロングシート(横座席)とクロスシート(縦座席)という名称も、つい最近知った。この連載をしていて、否応なく知っていく鉄道用語も多い。


武豊駅のかわいい使用済みきっぷ入れ

 武豊駅に着いたのは午前10時25分。改札は無人。昔の郵便受けのような、水色のペンキで色が塗られた木製きっぷ回収箱にきっぷを入れる。ちょっと楽しい。でも駅前には商店街のようなものは何もない。電車から、線路に並走する青い線が引かれた細い道が見えて、そこを歩きたいなと思った。と思い出したら、駅の脇に青い線を引いた細道がある。見えた道は線路の反対側だったが、きっと繋がっていると思って歩き出す。少し行くと踏切があって、やはり車窓から見えた歩道に繋がった。こんな些細なことが嬉しい。


青い線の道と武豊線列車。左は武雄神社の森

 踏切を渡ったところに、武雄神社という古そうな神社があった。立ち寄って、今日の散歩の無事を祈願する。この神社の起源は奈良時代かそれ以前で「月詠みの森」と呼ばれる月見の名所だったそう。たしかに神社のまわりは広くはないが鬱蒼(うっそう)と豊かな森。知多半島では珍しく暖帯林に覆われて、自然林の面影を残した貴重な森とある。伊勢神宮でも明治神宮でも森が怖いほどに深い。日本人古来のアニミズムをこんなところで感じる。

 もう少し歩くと蓮花院というきれいな寺があり、新四国第二十三番札所と石柱に彫られている。中に入ると「知多四国八十八ヶ所霊場」というのがあるようだ。お遍路みたいだが、四国からこんなに遠くで? なんでも弘法大師が東国めぐりの折に来たらしい。そしたら「西浦や 東浦あり 日間賀(ひまか)島 篠島かけて 四国なるらん 」という歌も残っているという。こじつけのような気もするが、それも日本的なおおらかな解釈と思え、微笑ましくもある。奥の方の高台に別の寺も見えた。

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