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久住 昌之 Kusumi Masayuki(文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。作曲・演奏をした『孤独のグルメSeason4』サウンドトラック盤(地底レコード)発売中。

香椎線 かしいせん

宇美(宇美町)から西戸崎(福岡市)までの25.4km、16駅。今回は和白から西戸崎までを歩いた。
西戸崎そばの西戸崎港からは福岡市営渡船があり、志賀島まで18分、博多港まで15分で結ぶ。

 

 ワンダーワールドの地図を見ると、中に入ってずっと歩けば、西戸崎(さいとざき)駅方面に出る別の出口があるようだ。しかたない。410円払って、園内に入る。こんな有料つたい歩き初めてだ。


広大な公園にボクひとり。観覧車の向こうから歩いてきた

 観覧車が大きく見える。よく見ると動いているが誰ひとり乗っていない。というか公園内には誰もいない。かなり広大な敷地に、俺ひとり。寒い。乗り物的なものは観覧車ぐらいで、あとはよく整備された公園。すごく大きな池もある。でも誰にも会わない。紅梅が咲いている。足を止めず歩く。ようやく西口というのに着く。

 午後2時半。そこからまた15分ほど歩いて、西戸崎駅に到着。疲れた。志賀島へのバスまで30分あった。ここで昼飯食べていたらバス乗り過ごすかな、と悩んでいたらたまたまタクシーが1台通った。思わず手を挙げてしまう。また。志賀島へ行くのは橋だと思ったら、細い細い砂州の上の道路だった。左手の外海は波が荒く、内海は穏やかで海が全然違う。


金印公園より。晴れてきて、海がきれいに見えた

 志賀島は漢委奴(かんのわのなの)国王の金印が出た島として知られる。タクシーで一気にそこに連れて行ってもらい、碑を見て少し休んで港まで海岸の道路を歩いて戻る。


金印公園から志賀島の港へ向かう道。気持ちのいい道

 水は澄んでいるが黒々として、やはり日本海だ。ごく小さな港町はのんびりしてよかった。やっぱり島だ。

 3時半、港のそばの「光ちゃん食堂」というシブ過ぎて泣ける食堂でチャンポンの昼食。店主のおばあちゃんが、切り干し大根とジャガイモと大根の煮物を出してくれる。サイコー。港から船で博多に帰る。大きな双胴船だったが、客はボクだけだった。


泣けるほどシブイ。志賀島の「光ちゃん食堂」で遅い昼食

※「旅の手帖」2015年4月号より掲載しました。

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