『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

  • mixiチェック

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。

身延線 みのぶせん

富士(静岡県富士市)から甲府(山梨県甲府市)までの88.4㎞、39駅。霊峰富士の山麓を走る。沿線の富士山本宮浅間大社、身延山久遠寺、甲斐善光寺が有名。昭和3年には全通している歴史ある路線だ。今回は富士から富士宮(富士宮市)まで歩いた。

 今月は静岡県富士市と山梨県甲府市を繋ぐ身延線につたい歩き。富士駅から富士宮(ふじのみや)駅まで、約10㎞歩く。でもいつか電車で富士から甲府まで行ってみたいな。富士山の西側をずーっと北上していく。富士山の形って見る場所で微妙に違う。その変化を車窓からじっくり眺める鉄道旅。ビールでも飲みながら。いいなぁ。車にはできない旅だ。帰りは中央本線一本で東京に戻れる。空気の澄んだ冬がいいだろう。

 そうなのだ。せっかく富士山がでっかく見える富士市なのだが、夏はどうしても水蒸気が多くて隠れがち。富士市に着いた日も見えず。その日は駅前のホテルに泊。大浴場でひと風呂浴びたあと、駅前の居酒屋を「調査」しに出かける。いい炉端焼きの店に当たった。

 飲んでいると隣の客が「イルカのすまし」という、聞いたことのないものを頼んでいる。イルカ。さすが静岡。名前から、すまし汁だと思った。そしたら全然違う、見たこともない一品。薄切りされたそれは、凸レンズの断面型で、黒い縁取りがある。その客が帰ってから頼んでみた。クジラベーコンに似て、もっと淡泊で歯ごたえの強い珍味だった。戻って調べたら、イルカの背びれだった。うは。言われたらそのまんまだ。蒲原(かんばら)が有名みたいで、俗に「蒲原ゴム」と呼ばれているらしい。まさにそんな感じだった。


静岡には用水路が多い。生活にとけ込んでいる。
水音がいい

 さて、翌日は長散歩するので早々に帰って就寝。朝風呂にも入って朝食もしっかりいただき、9時前には歩き出す。市街地にもいたるところに用水路が流れている。5年前静岡を横断して歩いた時も、この用水路の多さ、水の豊かさに感心したものだ。夏の朝の用水路のやわらかな水音はころころと涼しげで、耳に心地よい。でも今日も暑くなりそうだ。

 「富士市民劇場」はいったいどこが劇場なんだろうという小さい建物だったが、9月には劇団東京ヴォードヴィルショーも来るようでポスターには佐藤B作の写真も載っている。


とびきり小さな劇場。
このどこで芝居が行なわれるのだろうか?
次のページへ
旅の手帖mini

散歩の達人MOOK

バックナンバー

このページのトップへ