『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

大鰐線 おおわにせん

大鰐駅(青森県大鰐町)から中央弘前駅(弘前市)までの13.9㎞、14駅を結ぶ。 大鰐温泉と弘前市街をつなぐ路線はJR奥羽本線もあり、一時は廃線の検討もなされたローカル線である。

 青森は弘前(ひろさき)、弘南鉄道大鰐(おおわに)線につたい歩きに行った。前夜、台風が温帯低気圧に変わった影響で、青森と北海道は強風と豪雨に襲われた。実際ボクが乗っていった新幹線は、強風のため新青森駅到着が30分も遅れた。五能線は運行停止。翌日の天気予報は80%雨。

 ところがどうだ。翌日9時に宿を出た時点で、雨どころか、雲は多いものの、青空さえ覗いている。風も強くない。晴男の面目躍如。まずは奥羽本線で大鰐温泉駅に行き、そこから、弘南鉄道につたって弘前に戻ってくる。

 ホテルの朝食が団体客で混んでいたので、大鰐温泉で立ち食いそばでも食って朝飯にするか、と思ったのが失敗。そんなもの、ない。駅から外に出て温泉街まで行ったが、飲食店・喫茶店、どこもまだやってない。店が開きそうな気配すらない。そもそも人が歩いていない午前9時半。開いてるのは理容室と和菓子店だけ。和菓子で朝ご飯は無理。鰐come(わにかむ)という地域交流センターが開いていて人もけっこういて、おいしそうな郷土ランチコーナーがあるも11時開店。今10時。腹ペコで歩き出すのか、と駅に向かったその時、駅近くの山崎食堂にのれんが出るのが遠目に見えた! 救いの神!

 一も二もなく入る。ここで食べた大鰐温泉もやしラーメンが、おいしかった。見たこともない細い豆モヤシがどっさりのった醤油ラーメン。歯ごたえよく、豆の味が、細く黄色いちぢれ麺に不思議なマッチング。やはり腹が減っては戦もできぬ、だ。


山崎食堂の大鰐温泉もやしラーメン。
見たこともないもやし。おいしい

 ところで、この時はまったく初めての大鰐温泉と思っていたが、帰って来てから高校の同級生が「大鰐温泉といえば、修学旅行で泊まったのそこだったな」と教えてくれてビックリ! 全然覚えていない。ボクらの修学旅行は、青森のリンゴ農家の手伝いをするというものだった。行きはなんと上野に夜10時集合で寝台車で青森まで。ユニークでしょ。翌日はグループごとに軽トラックの後ろに乗り込んで、山のリンゴ園に直行、収穫の手伝いをして、昼は農園で農家のオジサンと豚汁とおにぎり。最高の思い出だ。なのに、宿が大鰐温泉だったなんてすっかり忘れてる。木造の古い(ボロい)宿だった。

次のページへ
旅の手帖mini

散歩の達人MOOK

バックナンバー

このページのトップへ