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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

美濃赤坂線 みのあかさかせん

正式線名は東海道本線。通称・美濃赤坂線と呼ばれる。大垣駅から美濃赤坂駅(ともに岐阜県大垣市)までの5.0km、3駅。石灰石などの積み出しのため、大正8年(1919)に開通した。

 美濃赤坂駅舎はクラシカルで、昔の学校の木造校舎を想起させる佇まいで、うれしくなった。窓や柱、駅名を書いた木の看板も映画のロケに使えそうだ。ホームへと風が吹き抜ける感じもいい。


ノスタルジックな雰囲気が素晴らしい美濃赤坂駅舎。
映画に使える

 数人の駅員が見えた。無料貸し出し自転車もあるようだ。時刻表を見ると、次の電車は13時12分大垣行き。1時間以上ある。どうしようか。駅の近くに「赤坂・青墓地域観光マップ」という立て看板があった。この先に、中山道赤坂宿があったようだ。歩いて5分ぐらいで急に道は茶色い木の板塀の家に挟まれ、え? と思うと中山道に出た。


中山道の緩やかなカーブに、家のシルエットに、
宿場の匂いが残る

赤坂港会館。当時の建屋を復元したもの。
水運の時代があったのだ

 ああ、これはイイ感じ。旧街道のシルエットが道の両側に残っている。赤坂港跡というバス停があり、明治を思わせる小さな洋館が建っている。「赤坂港会館」を復元したものらしい。こんな陸の奥地に港? と思うと、石垣で護岸された川が流れている。コイがたくさん泳いでいた。ここを江戸時代は小舟が行き来したらしい。大垣は、松尾芭蕉の奥の細道のむすびの地だった。

 旧宿場町と旧街道のゆったりとした道のうねり。何の土産物も、きらびやかな名所がなくとも、こういう歴史の薫りが残る道をただ歩くだけで、なんともいえず楽しい。とはいえ、次の電車を逃すと、16時7分まで列車がない。美濃赤坂駅に戻ることにする。まだ余裕があったので、駅前に一軒だけある喫茶店「西鉄サロン」に入る。客はボクひとり。アイスコーヒーを頼んだら、煎餅が2枚付いてきた。こういうところは名古屋っぽい。

 飲み干して駅に向かうと、ホームに列車が到着したところ。2両車だが意外にも(失礼)新型っぽい車両でオレンジ色のラインがカワイイ。


美濃赤坂駅に停車中の車両。意外にも新車。
10分足らずで大垣まで

 乗り込んで、電車が動き出すと、10分とかからず大垣駅に戻る。駅前であったかい肉そばを食べた。そしたらデザートに柿がひとかけら出た。歩いていて柿の木や干し柿を見ていたので、なんとなくうれしい。

※「旅の手帖」2016年1月号より掲載しました。

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