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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.10 御前崎(おまえざき)のクエ [静岡県御前崎市] 


市のシンボル、明治7年(1874)築の御前埼灯台は、中に入ることもできる(大人200円)。御前崎市は昼の日照量が全国トップレベルで、北部は茶畑、南部はイチゴやメロンなどのハウス栽培などがさかん

静岡県温水利用センターでのクエの給餌風景。クエはもともと20℃以下の水温では成長せず、1年の半分は成長しない。センターでは2年かけて30〜40cm、1kg程度の出荷サイズまで生育させる

静岡県温水利用センターから各店に届けられたクエ。自然界では単独行動が基本のため、狭い生け簀の中で激しく争い合うことも

御前崎市観光協会の認定店のみが受けられる「御前崎クエ料理組合」の証。これを目じるしに訪れよう

「幻の高級魚」を幻でなくした完全養殖の技術

 クエという魚をご存じだろうか。スズキ目ハタ科の大型魚で、関東以南の温暖な海に生息。市場に出回る量が極端に少ない、いわゆる「幻の魚」だ。中部関西圏では「クエ」、九州では「アラ」と呼ばれている。
 大きいものだと体長1m、重さ20kg前後にもなり、釣り好きの間では「一度は釣り上げてみたい」と言われる大物である。1kgで 1万円は下らない高級魚としても知られ、刺身はもちろん、鍋にしても絶品。皮と身の間にゼラチン質がたっぷり含まれ、頭部には濃厚な旨みがぎっしりだ。

 そんなめったにお目にかかれないクエだが、ここ御前崎市ではわりと身近な存在である。駿河湾と遠州灘に挟まれた同市では、年々漁獲高が減少して「幻の魚」となっていたが、平成17年度に国内で初めて完全養殖に成功。その技術は今や世界レベルであり、いま再び、クエは御前崎の特産品となった。

 一般的な養殖は稚魚をつかまえ、生け簀で育てる方法だが、「完全養殖」というのは親魚から卵を採り出し、孵化から行う。そのため、より安定した供給につながるのだ。
 孵化したあと、一才魚までは、飼育に温水が必要となる。クエの養殖を行う静岡県温水利用センターでは、以前まで、隣接する中部電力浜岡原子力発電所から提供される温排水(タービンを回したあとの蒸気を水に戻すために用いる冷却用の海水。普通の海水より水温がやや高い)を使用していた。
 全炉が稼動停止している現在、御前崎市観光協会内に設置されている「御前崎クエ料理組合」によると、「ボイラーで海水を温め、養殖を継続しています。放射能検査も徹底しており、シーズン直前の10月頃、養殖のクエから無作為に抽出し、検査を行います」とのこと。
 これからも安心してクエを楽しめるように、引き続き徹底した調査、より安全な技術の開発など期待したい。

 天然物に比べ、御前崎市が養殖するクエは体長30cm、重さ1.0~1.5kgとずいぶんと小ぶりだ。しかし、かえって扱いやすいので調理の幅が広がり、価格を抑えることも可能になったという。 さらに、御前崎産クエは正真正銘のクエである。ハタとかけ合わせた「クエハタ」ではなく、クエとクエの間に生まれた100%クエだ。脂ののり具合がほどよく、上品な甘みがあり、ぷりっとした食感を楽しめる。

 毎年11月に行われるオータムフェスタ「御前崎市大産業まつり」では、市の特産品としてクエを使った寿司、鍋が出され、人気を博している。また、「御前崎クエ料理組合」に加盟する飲食店や宿泊施設では、やはり養殖のクエを使い、ほかでは食べられない逸品をふるまう。旬は11月に始まり、翌年3月ごろまで。今シーズンは残りあと少しだ。さあ、急ごう!


SPOT いざ、クエ料理を食べよう!

御前崎クエ料理組合に加盟する飲食店、及び宿泊施設は現在11店舗。
静岡県温水利用センターで養殖されたクエは一般には流通されず、これら加盟店に卸される。
引渡し日は火曜日と金曜日に限られているので、場合によっては品切れになることも。 事前に予約が吉!

特産品のクエをメインに扱う
創業50年の割烹料理店|かいづか仲町店

目を引くのは、ずどんと迫力あるクエ姿煮。一匹まるごと、酒、砂糖、醤油で甘辛く煮付けたものだ。刺身、唐揚げなどクエの異なる表情を堪能したい人にはコース料理もおすすめだ。店主は御前崎クエ料理組合の理事で、御前崎の味を幅広く提供するため、足繁く地元の市場に赴いている。

クエ姿煮:7800円
クエのコース料理:一人前2500円~
営業時間:17:00~22:00、水休
住所:御前崎市池新田3921-14
交通:菊川ICから車で31分
TEL.0537-86-4752 店ホームページはコチラ

青い空、青い海を眺めつつ
御前崎らしい美味を味わう|御前崎グランドホテル

眼下に遠州灘を従えるリゾートホテルで、自慢は料理。素材一つひとつにこだわりを持つなか、頭から尾まで食べ尽くせるオプション料理のクエ鍋が人気。旨味がじわぁっと出て、出汁まで美味。最後の一滴まで残さず飲み干したい。館内の水槽で、7~8年物の大きなクエを飼う。

一泊二食付き:12600円〜
クエ鍋:4~6人前10500円※オプション
住所:御前崎市御前崎1412-1
交通:相良牧之原ICから車で30分
TEL. 0120-373-626 店ホームページはコチラ

こぢんまりしたほっこり宿で
じんわりとクエの旨味を味わう|民宿 かけ家

代々受け継がれてきた金目鯛の姿煮と並び、冬の目玉とされているのは、やはりクエ料理だ。新鮮さを生かした姿造りはしっかりとした歯ごたえがあり、噛むほどに旨味が広がる。〆のクエぞうすいも絶品。御前埼灯台や御前崎・遠州灘県立自然公園の程近くにあり、食後の散策も楽しみ。

一泊二食付き:
基本料金 7875円/クエコース 12600円 (クエ姿造りは4名〜。3名以下は刺身)
金目の姿煮:4500〜5000円※オプション
住所:御前崎市御前崎1631-2
交通:牧之原ICから車で30分
TEL.0548-63-2640 店ホームページはコチラ

御前崎市周辺でクエを扱う飲食店リストはコチラ 御前崎ツーリズムガイド

ACCESS いざ、御前崎へ行こう!

<東京方面から>

・JR東京駅から東海道新幹線「こだま」で約1時間30分の静岡駅下車、車で約80分(所要時間約3時間)
・JR東京駅から東海道新幹線「こだま」で約1時間45分の掛川駅下車、車で約45分(所要時間約3時間)

<名古屋方面から>

JR名古屋駅から東海道新幹線「こだま」で約1時間5分の掛川駅下車、車で約45分(所要時間約2時間)

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取材・執筆・構成:信藤舞子(teamまめ)
写真提供:御前崎市観光協会静岡県温水利用センター、かいづか仲町店
※掲載されているデータは平成25年1月現在のものです。

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