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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.22 加賀市の
坂網鴨[石川県加賀市]


片野鴨池は湿地保護のため、周辺農家や坂網猟師、ボランティアの手により、1996年より水田耕作が再開され、鴨が飛来できるよう、環境保護活動が行なわれている。

越冬のために飛来する鴨は、マガモなど約20種弱。加賀市鴨池観察館では12月20・21日、1月3・4日の6:30から「ガンの飛び立ちを見よう!」というイベントを開催。

人の気配で鴨が逃げるため、普段は見ることができない坂網猟だが、1月12日のみ「坂網見学会」で伝統猟法を見ることができる。問い合わせは加賀市鴨池観察館 TEL.0761-72-2200

「鴨池たんぼクラブ」で春に行なわれる鴨池の田植え。水田と里山が織りなす風景があってこそ、鴨の飛来地となっている。

文人墨客が数多く訪れた加賀温泉郷には、山間の山中温泉、総檜の美しい古総湯がある山代温泉、柴山潟を望む爽快な片山津温泉、北陸最古の湯が自慢のあわづ温泉と、4つの温泉地が点在。写真は山代温泉の「古総湯」と呼ばれる共同浴場。風情とともに個性的な湯を味わいたい。

夕暮れのひとときに網で仕留める伝統の“坂網猟”

 坂網鴨とは、石川県加賀市の伝統猟法“坂網猟”で仕留めた鴨のこと。落穂などのエサを求めて片野鴨池から近くの水田へ飛び立つ鴨を、Y字型の網を空に投げ上げて捕らえる、銃を使わない古式ゆかしい猟法だ。

 坂網猟で用いる網は、長さが3.5m、Y字の先端は幅1.8mもある大きなもの。ナイロン糸をひねって太くしたものを編んだ猟師の手製だ。これを、数m~10m以上の高さにまで投げ上げるのだが、鴨が周辺の丘を飛び越えてエサ場へ向かうのは夕暮れのわずか15~20分間ほど。目がきかない夕闇のなか、羽音とシルエットを頼りに、機会を逃さず鴨を仕留めるのは、名人技としかいいようがない。

 坂網猟が始まったのは、約300年前の江戸時代の元禄年間。大聖寺藩の藩主が坂網猟を奨励したことにより、盛んになったと伝わる。猟場である片野鴨池は、もともと海風により飛んできた砂が谷川をせき止めた天然の堰止湖。その湖底にトンネルを掘り、水を抜き、浅くして水田耕作を始めると、さらに水位が浅くなり、岸辺が切り立った崖となった。そこへ鴨が越冬しに多く飛来するようになったのだ。そこでこの辺りでは、夏はたんぼ、冬は坂網猟が行なわれるようになったという。

 腰近くまでの水と泥につかり、稲刈りを舟で行なっていた水田耕作だったが、近年の機械化に加え、減反政策が追い打ちをかけた。水田を放置すれば、数年で雑草が生えはじめ、やがて木々が茂りだす。水田が原っぱや森へと変われば、鴨が好む山に囲まれた池や、エサ場となる浅い湿地が消えることになる。
 そこで1996年、「鴨池たんぼクラブ」が結成され、ボランティアやイベントで集まった子どもたちが一緒に、昔ながらの手作業で水田を耕作。秋には坂網猟師たちが、猟場や池の浅瀬の雑草取りを行ない、鴨と共生する鴨池を維持している。

野生の鴨ならではの風味と旨みが味わえる理由

 鴨は野生の渡り鳥ゆえ、他の猟法で捕れた鴨と、違いなどないように思うかもしれない。でも、決定的な違いが1つだけある。それは捕獲方法だ。
 坂網鴨は、エサを求めて飛び立つ空腹時に網で捕獲されるため、数日後でも内臓からの傷みがなく、臭みが出ない。また、無傷で捕獲されるため、血が肉に回ることなく、肉本来の旨みを損ねることがない。さらに、野生の鴨がもつ、肉と脂のバランスのよさに加え、肉質がきめ細か。脂身に旨みがあるのだ。

 坂網猟の猟期は11月15日から2月15日までのわずか3カ月間のみ。一人の猟師が1日に捕獲できるのは上限5羽だが、1羽も捕れない日は珍しくなく、現在26名いる猟師全員の捕獲高を合わせても、年間わずか200~300羽前後。坂網鴨はまさに希少なA級食材なのだ。

 そんな坂網鴨を味わうなら、加賀の伝統料理「鴨治部鍋」がおすすめ。スライスした鴨肉に、小麦粉をまぶして鍋に入れ、野菜や麩と味わう冬の定番料理で、腹の底から温まる。ほかにもすき鍋、串焼き、そばなどでも味わえる。
 この冬、旅の目的にしたい幻の鴨肉、「坂網鴨」。加賀市内で味わい尽くし、加賀温泉郷で1泊。年末年始のご褒美旅にぴったりだ。

SPOT いざ、坂網鴨を食べよう!

希少な坂網鴨を食べられる店は加賀市内で現在2店舗のみ。奮発してコース料理にすれば、坂網鴨のさまざまな美味しさに出会えるはず。予約して出かけよう。

坂網猟師となって技と味わいを受け継ぐ|料亭・割烹 山ぎし

加賀伝統の鴨料理を供する老舗料亭。「鴨じぶすき鍋」は、治部煮を鍋に応用したオリジナル。ぐらぐら煮立つ鴨スープに、小麦粉をまぶした鴨と野菜を入れて。野趣あふれる旨みに、溶いたワサビが涼味を添える。3代目の山岸和伸さんは坂網猟師であり、自ら仕留めた鴨も使用する。

坂網鴨料理コース:5000円~
鴨じぶすき鍋:4200円、鴨治部煮:1200円
坂網鴨提供期間:11月15日~3月頃
営業時間:11:00~14:00・17:00~21:00L.O.、月曜(12月29日~1月4日)休
住所:加賀市大聖寺東町2-24
交通:JR北陸本線大聖寺駅から徒歩約10分
TEL.0761-73-1177 店ホームページはコチラ

地酒とともに味わう地物で彩る日本料理|加賀料理 ばん亭

地元加賀の豊かな食材を用いる加賀料理の店。冬の名物はやはり、「鴨治部鍋」。天然鴨肉の濃厚な風味は、地物野菜や麩にもしっかり染み込んでいる。坂網鴨の鴨づくしコースならば、燻製、天ぷら、串ものなども登場し、弾力ある歯応えを思う存分堪能できる。地酒とともにゆるりと味わいたい。

坂網鴨料理コース:5500円~
鴨治部煮膳:2300円、鴨治部煮椀:1300円
坂網鴨提供期間:11月15日~3月頃
営業時間:11:30~13:30 L.O.・17:00~21:30 L.O.、水曜(12月28日~1月4日)休
住所:加賀市大聖寺東町4-11
交通:JR北陸本線大聖寺駅から徒歩約5分
TEL.0761-73-0141 店ホームページはコチラ

TICKETSいざ、加賀へ行こう!

<東京方面から>

JR東京駅から上越新幹線で約1時間10分の越後湯沢駅下車、特急「はくたか」に乗り換えて約2時間35分の金沢駅下車、北陸本線普通列車に乗り換えて約54分の大聖寺駅下車(所要時間約4時間39分)

※東海道新幹線にご乗車される場合、「北陸フリー乗車券」はご利用になれません。

<大阪方面から>

JR大阪駅から特急「サンダーバード」で約2時間8分の芦原温泉駅下車、北陸本線普通列車に乗り換えて約13分の大聖寺駅下車(所要時間約2時間21分)

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【有効期間】4日間

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取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:KAGA旅・まちネット、加賀市鴨池観察館、料亭・割烹 山ぎし
※掲載されているデータは2014年11月現在のものです。

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