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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.26 渡島(おしま)半島のくりりんかぼちゃ [北海道森町周辺]


活火山の駒ヶ岳の麓に広がるみよい農園。収穫は8月1日~9月末頃の約2ヶ月間。みよい農園の直売所でも販売される。

4月中旬に種を蒔き、苗を作り、5月9日頃から畑に定植していく。みよい農園では30年以上、無農薬・無化学肥料で栽培を続けていて、有機JAS認定農場となっている。

ホタテ貝殻の付着物から堆肥を作り、畑にまき、海洋深層水も用いて栽培。海由来のミネラルは、海洋深層水だけでも270種以上あり、畑には栄養がぎっしり詰まっている。

1株で2玉のみを育てるくりりんかぼちゃ。畑のミネラルが凝縮されるため、糖度が高く、果肉の旨みが濃くなる。

健康的に育ったくりりんカボチャを追熟させ、糖度20度越えに。25度以上のものを「黄金のかぼちゃ」と名付けている。

海のミネラルを取り入れた有機栽培で畑が激変!

 北海道南西部、函館平野を擁する渡島(おしま)半島に、メロンよりも糖度が高いかぼちゃを作る人がいる。それが、みよい農園の明井(みよい)清治さんだ。みよい農園がある茅部郡森町は、活火山の駒ヶ岳の麓に火山灰土が体積され、水はけがよく、カボチャの一大産地。界隈では一般的に、みやこ南瓜、くり将軍南瓜などの品種が栽培されているが、明井さんが8年前に目をつけたのが、くりりんカボチャだった。
「形がいいし、果肉の色が濃く、実も肉厚。天候の影響も受けにくく、私が理想にしていたカボチャにもっとも近い品種だったんです」と、目を輝かす。
 そもそも、くりりんかぼちゃは決して糖度が高い品種ではない。糖度が高くなったのは、明井さんが実践する栽培方法に起因している。

 明井さんが行なうのは有機栽培だ。それこそ、“有機栽培”という言葉がなかった昭和52年より無農薬・無化学肥料での栽培に取り組んでいる。しかし、農作物が病気や害虫にやられることもしばしば。そのなかで、土中の微生物をも研究を続けた。
 ある時、明井さんは「地球上にあるミネラルすべてを与えて栽培しなくては」と思うに至ったという。一般的に植物には、窒素・リン酸・カリの三大栄養素が必要といわれるが、明井さん曰く「そんな3つでおいしい野菜が作れるわけがないんです。地球の歴史は海に始まり、その後に陸地ができました。つまり、陸地にあるミネラルは、海のミネラルなんです!」
 内浦湾に面する森町は、ホタテ養殖のメッカでもある。そこでホタテ貝に付着する海藻やフジツボ、カラス貝などで堆肥を作り、海洋深層水も栽培に用いると、畑が激変したという。カボチャの品質がみるみる良くなり、糖度も高くなったのだ。

 現在は、畑のミネラル管理と微生物による天敵療法で、農作物の害虫や病気対策を行ない、道内唯一の有機JAS認定のカボチャを生産。さらに、5日間熟成させることで、ほくほく食感で、しつこさのない自然の甘みが濃厚なカボチャに仕上げているのだ。

糖度が20度を超える甘み濃厚なかぼちゃ!

 みよい農園のくりりんかぼちゃは、平均糖度が18~20度。メロンなどのフルーツよりも甘みがあるが、時には驚愕の糖度30度超えのカボチャもあるという。その味わいを試した人々から評判は広まり、道内はもちろん、首都圏でも驚きの声が上がり、知名度をぐんぐん広げている。

 カボチャのなかには、形が不細工だったり、小さかったり。そんな規格外を売りものにならないからと廃棄するのはもったいないと、みよい農園では、料理やお菓子に使えるように、自社工場でスープや裏ごしレトルト商品の製造を開始した。これにより、スイートなカボチャを用いたスイーツ作りが、函館を中心に料理店や洋菓子店を中心に広がっている。カボチャスイーツが道南の名物になる日も近いのだ。

SPOT いざ、くりりんかぼちゃを食べよう!

みよい農園のくりりんカボチャは、甘み濃厚ゆえ、スイーツに最適。函館を中心に、渡島半島各地のレストランシェフやパティシエなどから絶大なる支持! 自然な甘みがやさしくのぼるカボチャスイーツが続々と考案されている。

舌触りがなめらかな黄金色したプリン|プティ・メルヴィーユ 末広店&ファクトリー

上質なフランス菓子が並ぶなか、森町出身のシェフの手により考案されたのが、かぼちゃのプリン。高い糖度をもつカボチャゆえ、独自の製法とくりりんかぼちゃの自然な甘みが、プリンの甘みと深みのあるコクを引き出している。3個入りは生クリーム添え、5個入りはキャラメルソース添えだ。

かぼちゃのプリン:3個入り1200円、5個入り1200円
提供期間:通年
営業時間:9:30~20:00、無休
住所:函館市末広町10-18
交通:函館市電十字街駅から徒歩2分
TEL.0138-26-7755  店ホームページはコチラ

函館スイーツを牽引する老舗考案の上品な甘み|ヨシダのお菓子
吉田食品 

創業1942年以来、函館のお菓子を作り続ける老舗店が、くりりんかぼちゃの甘みとおいしさに感動。カボチャ餡に仕立て、函館特産の真昆布を使ったパイ生地で包んだ。サックリ軽く、ふわりと広がるカボチャの甘みがクセになる。バウムクーヘンをはじめ、カボチャスイーツは増加の一途だ。

はこだて自慢くりりんかぼちゃパイ:3個486円、5個777円
提供期間:通年
営業時間:9:00~18:00、日曜休
住所:函館市高盛町16-9
交通:函館市電堀川町駅から徒歩10分
TEL.0138-51-4210 店ホームページはコチラ

地元の旨味を料理に閉じ込めた湖畔のカフェレストラン|レストラン Table de Rivage(ターブル・ドゥ・リバージュ)

大沼湖畔の湖月橋たもとに建つカフェレストランでは、旬の地元食材を用いた料理やスイーツが登場する。くりりんかぼちゃも、そのひとつ。濃厚な甘みを生かし、加糖をほとんどせずに焼き上げたチーズケーキや、なめらかなスープは、口中で深い甘みがゆっくり広がっていく。

くりりんかぼちゃのチーズケーキ:500円
提供期間:8月下旬~10月下旬(予定)
営業時間:11:00~19:00(L.O.)、火曜休
住所:亀田郡七飯町字大沼町141
交通:JR函館本線大沼公園駅から徒歩約10分
TEL.0138-67-3003 店ホームページはコチラ

ACCESS|いざ、渡島半島へ行こう!

<東京方面から>

JR東京駅から東北新幹線「はやぶさ」で2時間59分の新青森駅下車、
特急「白鳥」または「スーパー白鳥」に乗り換えて2時間5分の函館駅下車(所要時間約5時間20分)

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取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:みよい農園、プティ・メルヴィーユ、ヨシダのお菓子 吉田食品、レストラン Table de Rivage
※掲載されているデータは2015年7月現在のものです。

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