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まだまだ知られざるご当地の味 行って食べたい!ニッポンA級発掘グルメ

vol.27 三原のタコ [広島県三原市]


冷凍技術が発達したため、タコ干し風景は減っているが、海から揚がったマダコを水洗いして2~3日天日干しにする風景は、三原の夏の風物詩。炙って食べると酒の肴にもってこい!

昨今は疑似餌を用いるタコ釣りも行われるようになったが、三原伝統のタコ壷漁は、どっこいまだ健在。漁師は現在14名いて、伝統と熟練した技を受け継いでいる。

タコ壺からぬるりと姿を現わすマダコ。足が太くて短く、旨みがギュッと詰まっているのが特徴だ。

三原では毎年8月8日の「タコの日」にタコ供養祭を行う。タコの好物・サツマイモをお供えし、タコ漁師やタコ料理店主が顔を揃え、タコに感謝する。

タコを用いたお菓子まで揃う三原。「ゑびす家」では昭和60年考案の「たこ入りもみじ饅頭」を皮切りに続々販売。また「洋菓子ペガサス」には、希有な「たこバウムクーヘン」がある!

瀬戸内の海で受け継がれる一子相伝のタコ壷漁

 JR三原駅の名物駅弁といえば、50年も前から“たこめし”だ。というのも、瀬戸内海に面する三原市はマダコの名産地。大小さまざまな島が三島沖に連なるため、潮の流れが早く、岩場や藻場が多い。そこはタコの好物、カニ・エビなどの高級食材の宝庫で、水温も一定しているため、タコにとって絶好のすみかなのだ。三原で江戸時代より行われているのがタコ壷漁だ。タコに傷がつきにくく、捕りすぎない漁法として、世襲制で受け継がれてきた。

 1本1000mにも及ぶ仕掛けには、約10m間隔で100個ものタコ壷が付けられる。一般的には、その仕掛けの両端にブイ(浮き)を結びつけて目印とするのだが、三原ではそのブイはどこにも見当たらない。というのも、瀬戸内は昔から海の要所。船の交通量が多いため、ブイをひっかけて、仕掛けを台無しにしないため、島や山を目印にする“山立て”で、自分の仕掛けを探し当てるのだ。

 2人1組で行うタコ壷漁は、早朝3時半頃に出航。海底で3~7日経った仕掛けを探し出すと、引き上げ作業へ。タコの姿が見当たらない壺も少なくないが、ぬるりと足を見せた途端、船上に躍り出て、逃げ出そうとするものも。漁師さんは慣れた手つきで捕まえると、イケスへと放り込んでいく。多いときで1本の仕掛けから40~50匹獲れることもあり、なかには1匹2~3kgの大物が入っていることもあるという。

柔らかで、甘みと旨みをもつ百花繚乱のタコ食文化

 三原のタコ漁は、3月と産卵期の9・10月を除いて行われる。旬は夏の6~8月と、冬の11月~翌3月。なかでも最盛期は盛夏の8月だ。タコ足を広げた天日干しの風景は三原の風物詩だが、昨今は減少傾向にあるという。代わって三原で人気を博しているのが、“三原やっさタコ”だ。足先まで整った傷のないタコを、水ぶくれを防ぐために塩水できれいに洗い、急速冷凍したもので、2014年には商標も登録。冷凍することで獲れたての旨みはそのままに、身が柔らかくなるうえ、塩揉み要らずで扱いやすいと評判だ。

 そもそも三原のタコのよさは、足が短く、身がよく締まり、味のいいところ。市内の料理店では、昔から特産のタコ料理を出していたが、その料理の幅は広がる一方で、サブレやパイ、バウムクーヘンなど、独創的なタコスイーツまで販売されている。恐るべし、タコ・ワールド!

 10月開催の「みはら浮城まつり」や、430年余りの歴史を受け継いで2月に開催される「神明市(しんめいいち)」などのお祭りには、必ずといっていいほどタコ天などの露店が立つ三原市。タコのさばき方や食べ方のバリエーションなどを伝授する講習会も開催されている。タコを愛するタコの町では、タコ文化がしっかり根付き、伝承している様子。さぁ、タコの美味い季節の到来だ! 柔らかで風味のいいタコを味わい尽くしに出かけよう。

SPOT いざ、マダコを食べよう!

刺し身はもちろん、タコ天、たこ飯、酢の物などの料理もよく食べられるという三原。かつては塩揉みして調理されていたが、急速冷凍した「三原やっさタコ」の登場で簡単&手軽に味わえるように。タコ料理は専門店や居酒屋のみならず、ラーメン店や広島焼きの店にも進出。活きタコを使う店や「三原やっさタコ」を用いる店など、そのバリエーションはハンパなく幅広いのだ!

味わい変化(へんげ)が楽しめる活きタコ尽くしの料理|和食処 登喜将(ときしょう)本店

「三原らしい料理を」と考案されたのが、タコ尽くしのコース。たこ刺し、たこの柔らか煮のほか、珍しいたこ入りのジャガイモ饅頭や、タコの香味が際立つ釜飯までずらり。活きタコの風味を生かしつつも、食感や味わいは料理ごとに異なり、多彩なおいしさを実感できる。

たこコースA:3200円 ミニたこコースB:2600円
提供期間:通年
営業時間:11:30~13:30・17:00~22:00、水休
住所:三原市城町3-2-7
交通:JR山陽本線三原駅から徒歩5分
TEL.0848-62-7393 店ホームページはコチラ

ラーメンセットで味わいたい技を利かせた2種のタコ丼|ラーメン康KOH 本郷店(本店)

あっさり醤油味ながら、旨みとコクが際立つラーメン店にタコ丼が! 地元漁師などから仕入れたタコは新鮮で、柔らかく歯応え十分。そんな活きタコを燻ったスモーク丼は、タコの上品な旨みと燻香に心掴まれる。タコに下味を付けて揚げたたこ天丼は、ワサビを隠し味にしたタレとも相性抜群。

三原たこスモーク丼:900円(ミニラーメンとのセット1200円) 三原のたこ天丼:750円(ミニラーメンとのセット1000円)
提供期間:通年
営業時間:11:00~15:00・17:00~22:00、火・第3月曜休
住所:三原市南方3-5-16
交通:JR山陽本線本郷駅から車で約5分
TEL.0848-86-6758 店ホームページはコチラ

柔らかなタコの風味にうっとりする広島焼き|お好み焼き&お食事処 つぼみ

JR三原駅前に建つ地元民御用達の食事処には、獲れたて地元産タコを用いた広島焼きが。柔らかさと旨みを引き出すため、タコをさっと湯通し。ブツ切りやスライスをたっぷり加えて焼き上げていて、タコの甘みと風味が抜群に香る。三原城跡天守台の石垣を眺めながら、味わって。

三原タコモダン焼き:880円
提供期間:通年(3~5月は品切れの日もあり)
営業時間:9:30~20:00L.O.、不定休
住所:三原市館町1-2-10
交通:JR山陽本線三原駅北口すぐ
TEL.0848-63-3635 店ホームページはコチラ

TICKETS|いざ、三原へ行こう!

<東京方面から>

JR東京駅から東海道・山陽新幹線「のぞみ」で3時間34分の福山駅下車、
JR山陽本線に乗り換えて32分の三原駅下車

<大阪方面から>

JR新大阪駅から山陽新幹線「のぞみ」で1時間2分の福山駅下車、
JR山陽本線に乗り換えて32分の三原駅下車

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取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:三原観光協会、和食処 登喜将本店
※掲載されているデータは2015年7月現在のものです。

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