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現地でカンパイ! これぞ飲むべき 全国 美酒の旅|石川県能登町「聖地巡盃」 vol.13 能登杜氏のふるさとで神様と酒蔵を巡り歩く

2011年、世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」。生物多様性が守られた伝統漁法や農法、文化が今も受け継がれている。

「数馬酒造」では自社の田んぼで酒米作りから行う。地元で生まれ育った能登杜氏が、春から秋にかけて米を作り、冬場はその米を用いて酒を造る。

「松波酒造」では、能登杜氏最年長のベテラン杜氏と、蔵元である金七家の次女が、蔵人として酒造りを行っている。

聖地巡盃の宇出津「恋愛成就ルート」には、その名も酒垂(さかたる)神社が。北東から吹く“アイの風”に吹かれ、神様が酒樽に乗ってやってきたと伝わる、平安時代創建の古刹。町並みも望める。

聖地巡盃ではまず、ひめみくじを引いて。そこには謎が記され、各スポットに掲げた立て札を頼りに謎解きをすれば、神様の名前がわかるというもの。神様によってお言葉が変わる。

日本四大杜氏の一つ能登杜氏たちが生まれ育つ地

 JR金沢駅から和倉温泉行きの特急に乗車し、のと鉄道に乗り継いで穴水駅まで約2時間。さらに路線バスに揺られて約50分。能登半島北部に位置する能登町(のとちょう)にたどり着く。日本四大杜氏の一つ、今も能登杜氏たちが生まれ育つ日本酒の聖地だ。

 杜氏とは、日本酒を醸造する蔵人を統率するリーダーであり、酒造りの最高責任者。日本各地にはそれぞれの流派があるが、なかでも四大杜氏集団に数えられるのが、岩手県の南部、新潟県の越後、兵庫県の但馬、そして石川県の能登だ。能登杜氏は、旧内浦町(現・能登町)が発祥で、江戸時代にはすでに能登衆と呼ばれていたそうだ。

 能登杜氏がなぜ、技を磨いた杜氏集団になったのだろう。
 ひとつは、能登流を伝える「酒造講習会」の存在が大きい。明治34(1901)年の開催を皮切りに、伝統的な酒造技術を伝承するとともに、酒造技術の向上や人材育成を始めた。そして、数年後に「珠洲(すず)郡杜氏組合」を発足させると、杜氏たちが丹精込めて造った酒の品評会を催すようになり、味を競い始めたという。杜氏たちの腕はどんどん磨かれ、その名を全国に知らしめることになったのだ。大正10(1921)年には「能登杜氏組合」に改称し、昭和初期の最盛期には、402人の杜氏と1644人の蔵人が、全国各地の酒蔵に出かけたというから驚きだ。やがて「吟醸造りは能登流が一番」と、各地で言わしめるまでに至った。

 もうひとつは、能登ならではの食文化に起因する。
 いしり(魚醤油)や、こんかいわし(米糠いわし)など、伝統的な発酵食品が数多く伝わる能登は、“発酵半島”の異名ももつ。酒に限らず、味噌、醤油などで食材を“醸す”技術が伝統的に受け継がれた、醸し文化が根付く土地でもあるのだ。

 ところで、能登流とはなんだろう。町内にある、3つの酒蔵に尋ねてみると、
「お米の旨みを引き出す造り方」(数馬酒造)
「味わいは端麗辛口というより、深みのある旨口を造る」(松波酒造)
「口の中にすっと優しく広がり、キレのいい、お料理に良く合うお酒」(鶴野酒造店)
 と、さまざまな答えが返ってきた。
 海や里の恵みや、発酵食品を用いた深い旨みのある料理に負けず、口中で香味がふくらむ旨口の酒、これこそが能登流なのかもしれない。
 数馬酒造の数馬嘉一郎さんは「友達の漁師が獲った新鮮なイカの刺身を、甘口醤油で唐辛子に絡めてお酒と合わせると、たまりません」と相好を崩す。

能登町に暮らす人々の心にも触れられる酒蔵をめぐるイベント

 能登町にある3つの酒蔵では、年間を通して酒蔵を見学でき、利き酒も楽しめる。さらに時折、各蔵でイベントなども開催し、能登町の魅力を発信している。
 「竹葉」を醸造する数馬酒造では、会員制ながら、田植えや稲刈り体験、新酒披露会を催す。「大江山(おおえやま)」の松波酒造では、年に1度、酒蔵コンサートを開く。「谷泉」の鶴野酒造では、なんと杜氏体験ができるというから楽しみだ。

 さらには、能登町のスポットとともに、酒蔵を巡る「聖地巡盃」も昨年よりスタートした。そもそも、日本酒は神様に供えるお神酒。そこで、その土地の風土や人と密接に関わってきた神社を参拝しながら、酒造りの町を巡り歩いて、能登の奥深い心に触れようというものだ。能登町には、さまざまなご利益のある神社も点在。そこで、宇出津(うしつ)「恋愛成就ルート」、松波「仕事運上昇ルート」、鵜川「巡り会い運上昇ルート」の3つのコースを設定。神様に出会い、酒蔵でお神酒を頂きながら、神様のいる町を巡り歩く。嬉し楽しいイベントを機に、能登杜氏の里を訪ねたい。

【聖地巡盃 能登編】
日時:2015年9月12日(土)・13日(日) ※10月以降も定期開催の予定
問合せ:能登町ふるさと振興課
TEL.0768-62-8532
詳細はこちら

【六感が目覚めるサウンド in 松波酒造】
ラテン・クラシック・ジャズを取り混ぜた京都発の2人組ユニット、ジュスカ・グランペールが奏でる音色が情熱的だ。
日時:2015年9月12日(土)
場所:松波酒造 酒蔵
料金:前売り券3000円、当日券3500円(オリジナルジュスカ日本酒付き) 
※定員70名
問合せ:松波酒造
TEL.0768-72-0005
詳細はこちら

能登町の三酒蔵で試飲&蔵見学してみよう
数馬酒造

明治2(1872)年に酒造りを開始。能登の若手農家と連携し、無農薬・無化学肥料の酒米と、柳田村の超軟水湧き水で仕込む。「竹葉 能登純米」720ml 1512円は、世界のトップシェフが集う料理学会「マドリッドフュージョン」で採用された銘酒。無料の酒蔵見学は通年可能。第2・4日休。1週間前までに要予約。
詳しくはこちら

松波酒造

明治元(1868)年創業。昔ながらのこしきで酒米を蒸し、寒さを味方に低温発酵し、もろみを酒袋に入れ、槽(ふね)で丁寧に搾る伝統仕込み。「大江山 復刻純米酒」720ml 1458円は、冷やもぬる燗もイケるやや辛口。無料の酒蔵見学は通年可能で、3日前までに要予約。
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鶴野酒造店

寛政~享和年間(1789~1804)頃の創業。蔵の敷地内に湧き出る軟水と、近隣の契約農家で栽培された酒米「五百万石」で、伝統的な酒造りを行う。「谷泉 特別純米酒」1.8ℓ 2916円はやさしい口当たりながらも、後味キリッ。酒蔵見学は通年可。2週間前に要予約。
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◆日本酒と楽しむ! 特選ご当地自慢
いしりを用いた料理|能登伝統の調味料を隠し味に

醤油よりも旨みが強い、日本三大魚醤のいしり。2000坪の敷地に建つ小さな民宿「ふらっと」では、夕食のイタリアンに能登伝統のいしりを用いる。地元食材満載のキジハタのカルパッチョや、パンプキンスープなどに隠し味として使い、深みを生む。宿泊は1日4組限定。

■民宿ふらっと

平日1泊2食付き2名利用時:1人12960円~
住所:能登町矢波27-26-3
休み:水曜
交通:のと鉄道穴水駅からのと鉄道転換バス約1時間の矢波弁天下車、送迎車で3分(送迎車は要予約)
TEL.0768-62-1900
詳細はコチラ

九十九湾(つくもわん)|本百景に選ばれた美しき海岸線

東西1km、南北1.5kmの小さな湾でありながら、大小の入り江が九十九も連なることからその名が付いたリアス式海岸。日和山公園からは、風光明媚(めいび)な景色が一望でき、遊覧船乗り場では、カニやエビと戯れることも。遊覧船(大人1000円)に乗船するのもいい。

■九十九湾

交通:のと鉄道穴水駅からのと鉄道転換バス約2時間の九十九湾バス停下車
TEL.0768-62-8532(能登町ふるさと振興課)
詳細はコチラ

キリコ祭り|能登ならではの奇祭

キリコとは、能登の祭りでは欠かせぬ大奉燈。神輿の先導として町を練り歩き、夏の夜をゆらゆら幻想的に彩る。能登町最大の「あばれ祭り」は6月に開催されたが、9月開催の柳田大祭、小木袖キリコ祭りなど、形状や大きさもさまざまに各地で登場。見比べてみよう。

■キリコ祭り

住所:能登町内各所
TEL.0768-62-8532(能登町ふるさと振興課)
詳細はコチラ



取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:能登町ふるさと振興課、数馬酒造、松波酒造、鶴野酒造店、民宿ふらっと
※掲載されているデータは2015年8月現在のものです。

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