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現地でカンパイ! これぞ飲むべき 全国 美酒の旅|宮崎県日南市

vol.14
小さな蔵がひしめく町で
味わい多彩な芋焼酎に巡り合う

油津(あぶらつ)を中心に広がる県南の海岸線一帯は「日南海岸国定公園」。鬼の洗濯板ともいわれる波状岩に囲まれた青島、鵜戸(うど)神宮は神話の地でもあり、宮崎屈指の景勝地だ。

飫肥藩が約2年半かけて開削した堀川運河。油津の町を東西に分け、川と港を繋いだ900mほどの水路は、飫肥杉の積み出しの効率を飛躍的に高めた。映画『男はつらいよ』のロケ地でもある。

焼酎造りではまず、米から麹を作り、発酵させて酒母(しゅぼ)へと育てる。次に蒸して細かくした芋、酒母、水を加えて、もろみへと熟成させる。1回のみの蒸留ゆえ、素材の香りや味わいが生きる。

「日南酒造会館」には宮崎県南地区の13蔵約200種がずらり。蔵によって10銘柄ほど出しているところも。味わいはバラエティに富んでいるので、まずはあれこれ試飲してみて。

風光明媚な日南に焼酎の酒蔵が多い理由

 宮崎県の南部に位置する日南市は、海と緑が織りなす美しい自然のなかで、古い町並みが情緒を漂わせている。なかでも飫肥(おび)は、武家屋敷の門構えに、石垣、白壁の家々が建ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された地。天正16(1588)年から明治初期にかけての約280年間、伊東氏5万1千石の城下町として栄え、九州の小京都といわれている。
 藩の財政を支えたのは飫肥杉で、油分が多く腐りにくいため、建築材や船材として重宝されたそう。杉を港へと運ぶため、整備された堀川運河では、今年も11月に開催される堀川まつりで、往時を再現した筏(いかだ)流しが行われる。飫肥杉で町の繁栄を築いた歴史を今に伝えている。

 さて、日南市内には、堀川運河のある油津(あぶらつ)、醸造蔵が多い大堂津(おおどうつ)など、各所に9つの焼酎の酒蔵が点在している。江戸から明治にかけて、醤油や味噌の醸造から始まった蔵や、飫肥杉で財を成して酒造りに乗り出した蔵など、成り立ちはさまざま。そんな日南の焼酎の特徴を各蔵に問えば、「水も芋も仕込み方も、蔵によって違いますからねぇ」と、首をかしげながらも、「やさしい味わい」と口を揃える。

 日南は魚の町でもある。国内初の漁港認定を受けた油津港は、日本有数の近海マグロの基地。さらに近年では、近海カツオ一本釣りの漁獲量日本一を誇る。
 そこで、魚料理にもぴたりと合うよう、焼酎はクセがなく、まろやかな味になったともいわれている。人々が集う飫肥城下町のお膝元であるため、食中酒である芋焼酎の需要は昔から高かったのだ。

 日南に焼酎蔵が多いわけは、隣接する串間市とともに、サツマイモの名産地であるのも理由のようだが、なにより、水の豊かさが大きい。宮崎県は全国的にも年間降水量が多い県のひとつだが、なかでも日南は雨の多い地で、水は緑豊かな大地に浸み込み、ミネラルをたっぷりと含む。裏山、井戸、湧き水など、各所で取水でき、存分に使える環境に恵まれているのだ。

自分にあった1本を見つける日南焼酎の探訪旅へ

 日南市内4蔵では、予約すれば蔵見学も可能だ。芋焼酎の仕込みは8月末から12月末まで。蔵によっては、春仕込みで、麦焼酎やそば焼酎を仕込むところもある。また、昔ながらの伝統仕込みや、飫肥杉で作られた木桶を用いる蔵など、日南ならではの酒造りはなかなか興味深い。なかには、麹造りやもろみ造りなどの仕込みを体験できる蔵もあるので、チェックして訪れたい。

 日南の焼酎をあれこれ試してみたいなら、JR日南線飫肥駅から徒歩約10分の「日南酒造会館」へ。日南酒造協同組合が直営する焼酎販売所で、日南市のみならず、串間市、南郷町、北郷町の13蔵200種近くの銘柄が一堂に会している。しかも、そのうち30種ほどが無料試飲できるというから、頼もしい限りだ。

 また、市内でキャンプする広島東洋カープのイベントをきっかけに、日南市内の「京屋酒造」「小玉醸造」「櫻乃峰酒造」「古澤醸造」「松の露酒造」で「焼酎日南協同組合」を設立。日南焼酎の統一ブランド酒として「乾杯日南」も発売した。通常は20~25度のアルコール度数だが、こちらは12度。女性でも飲みやすいよう、するりとした飲み口に仕上げられ、名前のごとく、乾杯の酒にぴったりだ。

 かつおめしに、マグロの胃袋をネギやニラと煮たごんぐり煮、魚のすり身をふんわり揚げたおび天に、海草を煮詰めて味噌漬けにしたむかでのりなど、ご当地料理も多彩。それらをつまみに、ゆるゆると日南焼酎の杯を重ねたい。

日南市で焼酎蔵見学してみよう
京屋酒造

創業天保5(1834)年といわれ、代々、大甕仕込みを継承。子会社の農園では、原料の芋や米の有機栽培にも取り組んでいる。爽やかでフルーティーな味わいと香りが魅力の「甕雫(かめしず)」1.8リットル 20度4325円は、2015年のモンドセレクションで金賞を受賞。無料の蔵見学は9~16時、日曜休。2日前までに要予約。
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櫻乃峰酒造

明治10(1877)年創業。地元産飫肥杉の木桶で芋を蒸すことで、余分な水分がぬけ、甘みのある焼酎に。さらに、一次も二次も昔ながらのかめ壺仕込み。「黒麹平蔵」720ミリリットル 25度1300円は宮崎県産の黄金千貫を用い、深い味わいと上品な香りが特徴。無料の蔵見学は12月末までの木・金10時~11時30分・13~15時。1週間前までに要予約。
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古澤醸造

明治25(1892)年創業。創業以来、県内唯一の土蔵の醸造蔵を守り継ぐ。秋は南九州産の黄金千貫(コガネセンガン)やジョイホワイトなどを用いた芋焼酎を、春は麦、そば、米焼酎をていねいに仕込んでいく。なかでも「八重桜いも」1.8リットル 25度1955円は、やさしい香りと甘みがゆっくり口中に広がる逸品。無料の蔵見学は要予約。時期によっては不可のため、問い合わせを。
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櫻の郷酒造(焼酎道場)  

明治27(1894)年創業の「井上酒造」が、飫肥杉造りの新たな蔵を平成6年に設立。3年以上甕貯蔵した「無月」1.8リットル 25度2581円は、香りやわらかく、奥深いまろやかさをもつ。体験型ブルワリー「焼酎道場」も併設し、南九州産の黄金千貫を用いた仕込み体験も可能。蔵見学は通年可。30~40分の仕込み体験は1カ月前に要予約。
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日南焼酎の三大ポイント
サツマイモ

芋焼酎の主原料であるサツマイモ。鹿児島産や南九州産など、身も皮も黄白色の黄金千貫が主流だが、宮崎の県南地区では皮が紅い宮崎紅系も栽培されている。糖度が高く、甘みのある品種ゆえ、フルーティーな味わいに仕上がるのだ。

仕込み水

日南はとにかく水が豊か。裏山の湧き水を用いる京屋酒造、井戸水を用いる古澤酒造など、各蔵ごとに仕込み用の水源をもつ。敷地内に宮崎の名水21選の榎原(よわら)名水が湧く井上酒造には、俳人・種田山頭火が水のうまさに詠んだ句を刻んだ石碑も残る。

乾杯日南

「焼酎日南協同組合」では平成24年、5蔵で共同開発した「乾杯日南」300ミリリットル 247円を販売。12度とアルコール低めでまろやかな味わいだ。さらに日南市では、一昨年より「地元本格焼酎による乾杯を推進する条例」も施行。市中に乾杯の声を響かせている。

日南焼酎と楽しむ! 特選ご当地自慢
おび天|ふわふわ食感の日南名物つまみ

江戸時代に藩内で編み出されたのがおび天。「元祖 おび天本舗 本店」では、シイラなどの魚を丸ごとすり潰し、国産大豆で作った豆腐を混ぜ合わせ、味噌や醤油、黒砂糖で味を調えて揚げている。ふんわりフワフワの軽やかな食感がクセになり、ほのかな甘みが芋焼酎と好相性だ。

■元祖 おび天本舗 本店

おび天12枚:970円、おび天詰め合わせ(おび天5枚、おびあげ、ごぼうちぎり):1135円など
営業時間:9:00~17:00
住所:日南市飫肥4-1-20
休み:なし
交通:JR日南線飫肥駅から徒歩10分
TEL.0987-25-2763
詳細はコチラ

日南一本釣りカツオ炙り重|一本釣りカツオの旨み堪能!

近海カツオ一本釣りの漁獲量日本一を誇る日南市で生まれた、新・ご当地グルメ。一本釣りは傷がつきにくく、ストレスが少ないため、鮮度も活きも抜群。各店が趣向を凝らしたタレに漬けられ、そのまま食べてよし、卓上七輪で炙ってよし、茶漬けにしてかっこむのもよし。日南市内10店舗、東京1店舗で提供。

■日南一本釣りカツオ炙り重

日南一本釣りカツオ炙り重:1300円、替え皿:350円
交通:JR日南線油津駅・飫肥駅など
TEL.0987-23-2211(日南商工会議所内 日南一本釣りカツオ料理推進協議会)
提供店舗はコチラ

鵜戸神宮|風光明媚な日南海岸の洞窟に鎮座

美しき海岸線を眺めながら朱塗りの橋を渡れば、ご社殿が。彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)と結ばれた海神の娘、豊玉姫命(とよたまひめのみこと)が、天孫の御子を産むため霊窟に造られた産殿で出産。その御子こそがご祭神だ。「霊石亀石」の穴に入れば願いが叶う運玉投げや、おちちあめなども有名だ。

■鵜戸神宮

開門時間:6:00~19:00(10~3月は7:00~18:00)
住所:日南市宮浦3232
交通:JR日南線伊比井駅から日南・飫肥岬行き、または油津駅から宮崎駅・宮崎空港駅行きバス約20分の鵜戸神宮下車、徒歩10分
TEL.0987-29-1001
詳細はコチラ



取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:宮崎県、日南市観光協会、京屋酒造、櫻乃峰酒造、古澤醸造、櫻の郷酒造(焼酎道場)、元祖おび天本舗 本店、日南商工会議所、鵜戸神宮
※掲載されているデータは2015年10月現在のものです。

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