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現地でカンパイ! これぞ飲むべき 全国 美酒の旅|長野県木曽郡

vol.15
ほんのり甘酸っぱい
木曽のどぶろく

山々を縫うように中山道が通り、宿場町が点在する木曽。山の国、水の国、森の国とも呼ばれている。

どぶろくは購入可能。写真は「民宿さわぐち」の「木一」、「旅籠つたむらや」の「男滝」「女滝」で、各4合瓶l800円。他に「のりえの家」も販売。

囲炉裏端で鍋をつつき、どぶろくを酌み交わすことこそ、木曽のお楽しみ。訪れるたび、発酵具合などが異なり、味の違いにも驚かされる。

米の種類や仕込み水はもちろん、土地の気候風土でも味は異なる。さらに宿ごとに、浸漬時間、蒸らし方、温度管理などで工夫が凝らされ、風味よろしく仕上げられる。写真は民宿さわぐちの仕込み風景。

どぶろく特区で蘇える木曽の素朴な白酒

 長野県南部に位置する木曽地域は、御嶽山、木曽駒ケ岳が連なる山深い場所。中山道の街道筋には宿場町も点在し、今なお木工、漆、祭りなどの伝統文化が息づいている。木曽どぶろくもそのひとつだ。

 そもそもどぶろくとは、炊いた米に、米麹や酵母を入れて発酵させただけの濁り酒のこと。古くから神々に捧げてきた酒で、米を用いた酒類のなかで最も素朴な白酒だ。かつては、どの家庭でもどぶろくを造っていたというが、明治期になると酒造は免許制となり、自家醸造が禁止されてしまう。

 ところが2002年、規制を緩めて地域の活性化をめざす構造改革特区制度のひとつとして「どぶろく特区」が認められた。特区となれば、農家が自家米で仕込み、自ら営む民宿などで提供することができるのだ。

 木曽には農家民宿が点在する。冬にはスキー目的の観光客は集まれど、大半が日帰り客だ。そんななか、地元の長老たちから、かつて折々に村人たちが集まっては、どぶろくを手に、踊り、明け方まで飲み明かしていた、という話を聞いた地元の民宿が団結。「どぶろくを通じ、木曽らしい故郷づくりをしよう」と2006年、「木曽どぶろく研究会」を掲げ、どぶろく特区に名乗りを上げた。

民宿ごとに味わい異なる手作りの味

 木曽の米、水、人が育む木曽地区でのどぶろく造りは、翌2007年に開始。現在6軒の民宿で醸造している。春夏秋冬を問わず仕込みを行い、秋の新米で醸したり、あえて古米を用いたり、水や米の配合を工夫するなど、造り方は醸す人のさじ加減次第。さらには、夏はさっぱり、冬は濃厚な味わいにと、季節に合う喉越しや風味に仕上げるのも、腕の見せどころだ。

 仕込んで10日ほど発酵させると、シュワシュワと発泡がはじまり、まずは爽やかな喉越しのどぶろくが誕生する。さらに10日ほど熟成させると、今度は発酵が落ち着き、まろみが出てくる。発酵の進み具合で味や風味が変化するのもおもしろいところだ。
 どぶろくは、そのまま飲むのが一般的だが、「サイダーで割ったり、少し温めて燗酒にしたりして飲む方もいますね。お好みの飲み方でいいんです」とは、「木曽どぶろく研究会」副会長の澤口禎久さん。民宿手作りのどぶろくは、冬の鍋料理や春の山菜料理にもよく合い、サイダー割りは洋食にも合うと評判だ。

 どぶろくは飲むだけにあらず。
 冬の木曽のジビエ料理でもある、味噌仕立ての猪鍋。この仕上げにどぶろくをたっぷり入れ、まろやかな風味とともに味わう「どぶろく鍋」は、冬の寒さを吹き飛ばす一品だ。どぶろくには肉を柔らかくするほか、旨みやまろやかさを引き出す効果もある。肉にまぶしたり、漬け込んだりと、木曽ではあれこれ料理にも用いられるという。

 どぶろくを中心に、木曽で受け継がれる郷土食と食文化。民宿ごとに異なるどぶろくの風味を味わいに、ほっこりと温まりに出かけたい。

木曽どぶろく研究会
⇒民宿以外で飲める宿
ファームインひまわり TEL.0264-27-6330 
高原荘 TEL.0264-36-2400

木曽どぶろくが飲める宿
旅籠 つたむらや

妻籠と馬籠の間にある大妻籠地区に、養蚕農家を改築した旅籠が建つ。ヒノキ風呂にゆったり浸かったら、囲炉裏の端で2種類のどぶろくを。合鴨農法で育て、はざ干しした有機米で仕込んだ「男滝」と、甘口で呑みやすい「女滝」。養魚場が隣接し、食卓にはアマゴ、イワナ、信州サーモンも上る。

■旅籠 つたむらや
料金:1泊2食付7500円~ 、1泊夕食付7000円~
※冬季は暖房料金として1部屋500円増し
住所:長野県木曽郡南木曽町吾妻1479-1
交通:JR中央西線南木曽駅から南木曽町地域バス12分の大妻籠下車、徒歩2分
TEL.0264-57-3235
・詳しくはコチラ

民宿 さわぐち

築130年になる板葺き石置き屋根で、どっしりと構えた梁、黒光りする柱など、木曽の山宿風情が心にしみる。とろとろ薪が燃える囲炉裏端では、猪や熊などの鍋を。コシヒカリと木曽ヒノキも育む森の名水で仕込むどぶろく「木一」を味わえば、甘酸っぱさの奥から芳醇な香りが立ちのぼる。

■民宿 さわぐち
料金:1泊2食付8500円~
住所:長野県木曽郡上松町小川5462
交通:JR中央西線上松駅から車で10分(送迎あり)
TEL.0264-52-3422
・詳しくはコチラ

民宿 りんどう

標高1000mを超える高原で育てた自家米「恋姫」と、木曽川源流の水でゆっくり発酵させたどぶろく「恋娘」は、まろやかな味わい。冬はどぶろく鍋や、粕汁なども登場し、隣接する田畑で育てた野菜や野趣あふれる天然キノコがたっぷり。朗らかな女将さんのあったかいもてなしにもほっこりする。

■民宿 りんどう
料金:1泊2食付7500円~
住所:長野県木曽郡木祖村菅3070-1
交通:JR中央西線藪原駅から木祖村コミュニティバス「ひまわり号」25分の五月日下車、徒歩10分
TEL.0264-36-2174
・詳しくはコチラ

櫻の郷酒造(焼酎道場)  

養蚕農家を改築した自炊型の農家民宿は、飲み物、食べ物の持ち込みが自由。縁側、黒光りする板戸など、昔ながらの風情が我が家のようにくつろげ、心から和んでしまう。夜は囲炉裏端で手作りどぶろくを傾けて。自家米のあきたこまちと、まろやかな湧水で、ていねいに仕込まれている。

■のりえの家
料金:素泊まり3800円(5~10月は3400円)、どぶろく1号300円
住所:長野県木曽郡木曽町新開7875
交通:JR中央西線木曽福島駅からおんたけ交通バス開田高原線で20分の宮前または野中橋下車、徒歩5分
TEL.0264-27-6314
・詳しくはコチラ

木曽どぶろくの三大ポイント
湧き水

どぶろくの仕込み水に用いられるのは、清冽な木曽の山の水。冬に降り積もった雪が春に溶け、山々に染み込み、夏でもひんやり冷たい。山奥から湧き出るまろやかな水が水源で、湧水を用いている宿もある。

米・雑穀

どぶろく造りは米が一般的だ。山深い土地ながらも、各宿がもつ田んぼで手塩にかけて育てられた自家米が用いられる。古代米や、キビ、アワなどの雑穀を加えて独特な旨みや風味、食感を醸すことも。

どぶろく特区

明治32(1899)年以降、自家醸造はご法度だが、2002年、小泉内閣が地域活性化のため「どぶろく特区」を認可。2006年には、木曽町、上松町、南木曽町、木祖村、王滝村の全域が「木曽地域どぶろく特区」に認定された。

木曽どぶろくと楽しむ!特選ご当地自慢
木曽路 氷雪の灯祭り|夕暮れからの幻想的風情

奈良井宿に始まったアイスキャンドルまつりは、2007年より、期間中木曽郡全域で順々に開催されるように。宿場町が柔らかな灯りに包まれ、しっとり幻想的。例年1月下旬から2月上旬まで開催される。

■木曽路 氷雪の灯祭り

TEL.0264-23-1122(木曽観光連盟)

宿場町|江戸時代にタイムスリップ!

江戸期の五街道のひとつ、中山道。京と江戸の間に69ある宿場町のうち、塩尻から中津川までの11宿が木曽路に点在する。旅籠の軒灯り、千本格子など、江戸風情色濃い妻籠、奈良井宿に、島崎藤村ゆかりの馬籠などなど、色香漂う街並みを探訪したい。

■木曽の宿場町

TEL.0264-23-1122(木曽観光連盟)
詳細はコチラ

木曽漆器|受け継がれた伝統工芸

良質な木材産地で、昔から木工作りが盛ん。そのひとつが漆器だ。木肌が美しい「木曽春慶」、まだら模様の「木曽堆朱」、ツヤツヤの「塗分呂色塗」は、伝統工芸品。妻籠「永徳屋」には、普段使いできる素朴で丈夫な木曽漆器が充実。修理や塗り直しも引き受ける。

■永徳屋

汁椀:2500円~、漆塗ぐいのみ:4200円~
住所:長野県木曽郡南木曽町吾妻2189-1
時間:9:00~17:00
休み:不定休
交通:JR中央西線南木曽駅からおんたけ交通バス8分の妻籠下車、徒歩3分
TEL.0264-57-3010
詳細はコチラ



取材・執筆・構成:佐藤さゆり(teamまめ)
写真提供:木曽どぶろく研究会、木曽観光連盟、永徳屋
※掲載されているデータは2016年2月現在のものです。

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