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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

北海産の新鮮な海の幸がてんこ盛り 海鮮てんこめし 旭川駅

 太平洋、日本海、オホーツク海という3つの海に囲まれた北海道は海産物の宝庫。中でも内陸の旭川には、各地の港から物資が集まってくるため、北海の味覚がたっぷり詰まった駅弁を楽しみにする人も多いだろう。その期待を裏切らないのがこの駅弁だ。

 パッケージの外側に開けられた円形の窓から中身をのぞくと、北海道の誇る海の幸がぐっと盛り上がって見える。そしてこの駅弁の真価は、箸を入れて初めて実感できる。表面に見える具材は大きくて目を引くが、酢飯の上にズワイガニのフレーク、海草、錦糸卵を敷いて味覚のバランスを整えるなど、隠れた部分まで気を遣っている。とくに感心したのは酢飯の炊き方で、海産物の味覚と相殺しないように淡白に仕上げているため、最後まで飽きずに食べられる。

 肝心のおかずは、カニ脚やホタテ、数の子、イクラ、ニシンの甘露煮といった色とりどりの海の幸。中でもカニ脚のしっとりとした食感が見事で、食べ終えてしまうのが惜しくなる。てんこ盛りというより、メガ盛りでも食べられそうだ。

Data
価格:1,470円
種類:海鮮系
調製元:旭川駅立売(株)
電話:0166-31-1515

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バチで切り分けるのが楽しいサバとベニザケの押し寿司 八戸小唄寿司 八戸駅

 民謡『八戸小唄』にちなんで三味線のイメージでまとめた駅弁。1961年の発売当初は売れ行きが伸び悩んだが、百貨店の駅弁大会で実演販売を行ったところ人気が爆発。数年後の全国駅弁コンクールで1位を獲得したことにより、その名が全国に広まった。

 厚紙製のパッケージを開くと、三味線の胴をかたどった容器が現れる。中身は八戸近海で水揚げされたサバとベニザケの押し寿司で、風味を逃がさないように大きめの白いビニールに包まれている。素材は適度に脂がのり、身のやわらかさもほどよいものを選んでいるそうで、酢と塩の調合や身の締め方などは発売当初からまったく変わっていないという。

 同封されたバチ形のナイフを使って、ひと口サイズに切り分けていく。食前の儀式のようなこの作業はとても楽しい。サバとサケの身には酢をしっかり効かせているが、旨味を消すほどではなく、あっさり仕立ての酢飯とのバランスは抜群。八戸を訪れるたびに味わうけれど、途中で飽きたことは一度もない。半世紀にわたって愛される駅弁の実力を思い知らされる見事な内容である。

Data
価格:1,100円
種類:海鮮系
調製元:(株)吉田屋
電話:0178-27-4554

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味付け半熟卵が牛肉の味わいを増幅させる 牛めし弁当 長野駅

 2007年6月の発売。半熟卵付きというアイデアが評判を呼び、いまや類似弁当も出るほどの人気ぶり。白米にオリーブオイルや梅酒を加えて炊き上げた“艶飯(つやめし)”の上に、信州牛のすき焼き風煮とタマネギをのせている。タマネギは肉の旨みをたっぷり吸収して甘みがある。付け合わせとして人気の味付け半熟卵、林檎のコンポート、野菜の醤油漬けなどを添えている。

 卵はそのまま食べるのではなく、牛めしの上にのせてから割るとよい。半熟の黄身がトロリと流れ出すと、何ともいえない艶っぽさがある。ふいに色気を増した牛めしをぐいっとかき込む。醤油に漬け込んだ半熟卵の甘さが牛肉の味わいを何倍にも増幅させて、文句なしにうまい。箸だけでさくさく切れる肉の柔らかさにも感動を覚えてしまうのだ。

 口直しのデザートは、信州産りんごにクコの実、林檎酢などを加えて仕上げたコンポート(フルーツの砂糖煮)。しゃきっとした食感を残しながら豊かな風味を醸し出しており、食事の最後を飾るにふさわしい味わいだ。

Data
価格:1,050円
種類:肉系
調製元:(有)吉美

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漂泊の俳人が愛したおかずを詰めた幕の内 山頭火弁当 新山口駅

 山陽新幹線「のぞみ」の停車駅となった2003年、小郡駅は新山口駅に改称された。駅のある町の名も小郡町だったが、2年後には市町村合併が行われ、山口市に併合されている。次第に名称が消えつつあるかつての小郡で晩年を過ごした俳人、美食家が種田山頭火(たねださんとうか)である。

 プラスチック容器を紙枠に収め、山頭火の顔写真や約7年間住んだという小郡の「其中庵(ごちゅうあん)」の画像などをのせた厚紙でふたをしている。肝心の中身は、鶏唐揚、エビフライ、鯖塩焼、合鴨ロールといった多彩なおかずを盛り込んだ幕の内弁当。おかずの多くは、漂泊の俳人、山頭火が好んだ素材をアレンジしたもの。中でも合鴨にレモンを挟んで巻いた合鴨ロールは山頭火の好物だったそうで、かみ締めるほどにやわらかい鴨肉から旨味がじわりとにじみ出てくる。鴨肉特有の臭みをレモンの風味が消し去っているのもさすがというほかない。手元に赤ワインを用意しておけば、美食家の愛した料理の味わいはいっそう深まるだろう。

Data
価格:1,050円
種類:幕の内
調製元:小郡駅弁当(株)
電話:083-973-0126

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※掲載されているデータは平成22年12月現在のものです。

小林しのぶ(旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家)

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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