八代海南部の沿岸では、風力で底引き網を引いてエビを獲る「ケタ打瀬(うたせ)漁」が行われている。300年以上の歴史をもつ伝統漁法で、帆船が海に浮かぶ様子は、八代海の冬の風物詩として有名だ。鹿児島県の家庭では、獲れたエビを正月の雑煮に入れたというが、そのエビをイメージしてつくった駅弁が「えびめし」である。
トンネル型の容器に仕切りを設けて、ご飯とおかずを区別した。ご飯は、刻みエビをたっぷり混ぜた炊き込み飯で、その上にむき身のエビがのる。おかずは鶏の揚げ煮、じゃがいもの衣で包んだ和風エビフライ、だし巻き卵、さつま揚げ、そして煮物と郷土色豊か。エビの旨みが濃厚な炊き込み飯と、薄味仕立てのおかずとのバランスのよさが抜群で、文句なしにおいしい。「九州の駅弁ランキング」で堂々の2位入賞という好成績の実績もあり、毎年トップ10に入るという納得の仕上がりだ。
まずは煮物を肴に日本酒をちびり。ほろ酔い加減になったら、えびめしをかき込む。これぞ駅弁通の食し方といえそうだ。