『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

  • mixiチェック

駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

まろやかな醤油の風味が香る愛媛の郷土めし 醤油めし 松山駅

 昭和30年代から販売されているロングセラー駅弁。掛け紙には、松山の方言が相撲の番付表のように書かれている。横綱は「よもだ」(おとぼけ)、前頭は「まがる」(さわる)とある。へぇーっと感心しながら駅弁をつまめる。ためになる掛け紙だ。

 フタを開けると、醤油の香ばしさが鼻をかすめる。名前の印象から塩辛い味を想像するが、実際はマイルドな醤油風味のご飯。古くから伊予地方では、米とゴボウ、ニンジン、松山揚げと呼ばれる油揚げといった具材を濃口醤油で炊き込んだご飯を「醤油めし」と呼び、ハレの席に欠かさずに出していたという。

 ご飯は冷めてもふっくらとしており、一粒ひと粒に醤油の風味が染み込んでいる。豊かなコクと奥行きのある上品な味わいに感心しきり。これだけでも十分に食べ進むことができるが、ご飯の上には鶏肉、シイタケ、タケノコ、キヌサヤなどを配し、さらにデザートにサクランボを添えるという贅沢仕様。春の里山のような彩りに食欲がもりもりわいてくるので、完食するのは間違いなし。

  • 価格:770円
  • 種類:炊き込み系
  • 調製元:鈴木弁当店
  • 電話:089-984-2100

鮮度抜群のカツオのたたきを味わえるアイデア駅弁 かつおたたき弁当 高知駅

 魚料理は大好物だ。けれど、ナマ魚を取り入れた駅弁は、ほんの数種類しか存在しない。そもそも常温で置くのが基本の駅弁にとって、ナマ魚はもっとも扱いにくいネタの一つである。その困難にあえてチャレンジしたのが高知駅の「かつおたたき弁当」。発熱体付きの熱々弁当とは逆の発想から生まれた、希少価値の高いアイデア駅弁である。

 手順は簡単。駅の売店で注文すると、冷蔵庫から刺し身入りのパックと保冷剤のセットを取り出し、弁当容器に詰めて渡してくれる。パックの中には、かつおのたたき5、6切れのほか、青ネギ、タマネギ、ショウガ、ニンニクなどの薬味が同封されている。カツオは鮮度の高いうちに強火で炙り、外側が焼けたところで氷水に入れて身を締めたもの。これに別添えの自家製ポン酢を豪快にぶっかけて味わうのが高知流。肉厚のかつおに薬味がぴりりと効いて極上のおいしさ。高知生まれの人がうらやましく思える瞬間だ。

 ナマ魚を使っているだけに、百貨店などで行われる駅弁大会では味わえない。ご当地ならではの味覚を堪能したい。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

高知泊の1泊2日 これぞ龍馬“電”?
  • 価格:1050円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:安藤商店
  • 電話:088-883-1000

薄味仕立ての茶飯が貝の旨みを存分に引き出す 品川貝づくし 品川駅

 品川といえば、かつても今も、とびきり上等な江戸前の魚介類が揚がる漁港のある町。その品川に東海道新幹線の停車駅が誕生したのは2003年9月で、この駅弁の販売も同時期にスタートした。

 品川の海と、寄せては返す波をイメージした青と白が基調のパッケージ。フタを開けると、ご飯の上に散りばめられた貝の量に驚く。品川はもともと漁師町で、東京湾の新鮮な魚介がたくさん揚がっていた。江戸前とくれば、やっぱりアサリ。甘辛く煮こんだアサリには、海の滋養を小さな身にぎゅっと凝縮したような旨みがある。駅弁に入っているのは、ほかに、通称“ソフトハマグリ”とも呼ばれるあさじ貝や、シジミ、小柱など。どれも噛むほどに味わいが深まり、食感を存分に楽しめる。そして何より、貝類とご飯との相性が見事。茶飯は薄味仕立てで、刻み海苔の豊かな風味がこの駅弁を忘れ難いものにしている。

 おかずはタケノコの金平、フキ、椎茸、人参、玉子焼きなど。煮物も薄口の上品な味覚で胃にやさしく、彩りも実にきれい。またもやビールが進んでしまう。潮風を感じながら味わいたい風流弁当である。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

品川駅は新橋駅と並ぶ日本最古の駅

加賀前田藩の宴席メニューを参考にした二段重ね駅弁 利家御膳 金沢駅

 NHKの大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』の放送を記念して2001年の春ごろに登場した。ブームに便乗した企画弁当とあなどってはいけない。調製元の大友楼は天保元年(1830)の創業。加賀前田藩の御膳所を長く勤め、料亭としても180年以上の歴史がある。加賀料理の伝統と格式を継承し、長年に渡って食通を魅了してきた名店である。

 そんな老舗料亭がつくった駅弁は、外見からすでに重厚感が漂う。容器は駕籠(かご)型のニ段重ねで、下段はひょうたん型の日の丸御飯と梅の花の形の炊き込みご飯など。上段は加賀藩前田家の宴席メニューを現代風にアレンジしたという加賀料理のおかずで、治部(じぶ)煮やレンコンの牛肉はさみ揚げ、ウナギの蒲焼、玉子焼き、笹蒲鉾などが彩り豊かに並ぶ。

 おかずのメーンとなる治部煮は、鶏肉の旨みを逃がさないように特製タレで煮たもので、ワサビを効かせた深い味わいがご飯にベストマッチ。他のおかずも抜群の仕上がりで、格調高い加賀料理の魅力を存分に味わえる。価格から考えても十分にお得な内容だ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

金沢駅で絶対買いたい! 大人スイーツ
  • 価格:1000円
  • 種類:幕の内
  • 調製元:(株)大友楼
  • 電話:076-221-1758
※掲載されているデータは平成23年5月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

バックナンバー

このページのトップへ