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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

木箱の中で鯛が舞い踊る、上品で美しい押し寿司 鯛の舞 敦賀駅

 塩荘(しおそう)は、敦賀駅で立ち売りの弁当販売を開始して以来、1世紀以上の歴史を刻んできた老舗。同社には「元祖鯛鮨」というヒット商品があるが、「鯛の舞」はその上位バージョンにあたる駅弁だ。

 パッケージを開けると、木箱に収められた美麗な鯛寿司が目に飛び込む。以前、旅チャンネル(スカパー!)の「駅弁女王と行く!全国鉄道グルメの旅」という番組で筆者と共演した三遊亭楽麻呂師匠は、この様子を見るなり「鯛が舞っています!」と叫んだものだ。

 内容は、若狭湾の近海でとれた鯛の身を三枚におろして薄塩で締めた後、福井県産の「華越前」とコシヒカリをブレンドした酢飯と合わせた押し寿司。ほのかに甘い酢飯が鯛の旨味を引き出しており、極上の味わいを堪能できる。通常版の「元祖鯛鮨」との違いは、品のよさにある。かみ締めるうちに容器に使われた杉材の香りが寿司の味覚と絶妙に絡み合い、上質かつ上品なおいしさを醸し出す。強気の価格設定だが、その価値は十分にある逸品だ。



敦賀駅で駅弁を買って出かけよう
  • 価格:1350円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:(株)塩荘
  • 電話:0770-23-3484

見せ方にも工夫を凝らした、宝石箱のような海鮮ちらし おたる 海の輝き 小樽駅

 ニシン漁で活況を誇った小樽では、漁師めしでさえ豪華だった。そんなかつての輝きを、現在によみがえらせた駅弁である。

 長方形の発泡材容器にフタをのせ、中身の画像を掲載した掛け紙を巻いている。内容は、イクラやウニ、シシャモの子、シイタケ、レンコンなどを彩りよく盛り付けた海鮮弁当。イクラは、えりも町から入荷した「銀聖」ブランドのイクラを塩抜きした後、醤油と酒、オリジナルの調味料に漬けて味付けした。口に運ぶと舌の上でイクラがぷちっと弾け、タレと渾然一体となった旨みを堪能できる。ウニも北海道産で、醤油と砂糖をつぎ足した秘伝のタレで炊いており、酢飯との相性は抜群だ。酢飯には、シシャモの子「とびっこ」を隠し味に使っており、ぷつぷつとした食感を楽しめる。

 素材をよく吟味した駅弁だが、盛り付けにも工夫を凝らした。中でも“輝き”を表現するイクラは、置き方ひとつで表情が変わるため、とくに慎重さを要するという。フタを開けた瞬間の感動を演出する美しい仕上がりに、職人技がきらりと光る。

 さまざまな輝きに満ちたこの駅弁、函館本線の車窓ぎりぎりに迫る小樽の海を眺めながら頬張りたい。

「トレたび」おすすめ情報

上野駅をモチーフにしたという小樽駅をチェック

鳥取名物満載の駅弁で居酒屋気分を満喫 とっとりの居酒屋 鳥取駅

 鳥取は、京都や広島と並ぶ西日本の酒処。この駅弁は、地酒に合う弁当として開発されたもので、販売開始時間を午前10時以降にするなど細部の設定にもこだわった。

 細かく仕切った容器には、アゴ(トビウオ)とイカの寿し、とうふ竹輪、イカの子の煮付け、長芋の天ぷら、大根なますカニ爪添え、スルメ麹漬けなど14品の鳥取名物を詰め合わせた。酒の肴にぴったりの品目が並んでおり、左党なら酒のフタをはずす時間さえ、もどかしく感じられるだろう。中でも目立つのは、アゴ寿し、アゴ竹輪、アゴと梅シソ巻きのフライといったアゴ料理の数々。5?7月に水揚げされたアゴを独自の方法で冷凍保存し、おかずとして使ったものだ。アゴ竹輪は、すり身にしたアゴを竹輪として焼き上げたシンプルな料理だが、通常の竹輪とは異なる香り高い一品に仕上がっており、つい杯を干すスピードがアップする。アゴ寿しは、アゴの身をのせたバッテラ風の押し寿しで、酒を伴う食事の締めに最適だ。

 掛け紙の裏が品書きになっており、酒のみでなくても楽しみながら味わえる。1日10個の限定販売。

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醤油なしで味わいたい和歌山伝統のチャリコ寿し 小鯛雀寿し 和歌山駅

 小鯛寿司は、源平時代に平維盛(たいらのこれもり)が有田の奥城山にこもった際に振舞ったといわれる兵食。尾をつけたまま握った形が、ふくら雀のように見えることから、別名“雀寿司”とも呼ばれる和歌山県の郷土料理だ。

 その伝統の味覚を駅弁で再現したのが「小鯛雀寿司」。中身は、地元で“チャリコ”と呼ばれる紀淡海峡の小ダイを三枚におろし、秘伝の合わせ酢で締めて握った寿司を6カン並べたもの。醤油はついておらず、しおりには「そのままご賞味ください」と書かれている。塩味を利かせて小ダイの甘みを引き立てるという昔ながらの製法で調製した寿司を、調味料なしで味わってほしいという熱い思いがひしひしと伝わる。調製元の意を汲み、そのまま食べてみる。ふわりとやわらかく握ったシャリと、しなるような歯ごたえが特徴のタイとのハーモニーが絶妙で、1つまた1つと手が伸びてついに止まらなくなる。

 この駅弁は、調製元の和歌山水了軒が明治31年から販売する超ロングセラー。6個入りのほか7個入りや12個入りもある。

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沿線基礎知識がわかる2009年記事
※掲載されているデータは平成23年6月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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