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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

秘伝のタレが瀬戸内産アナゴの旨みを引き出す あなご飯 高松駅

 アナゴの産地は瀬戸内海と江戸前が二大勢力だが、数的には瀬戸内海産が圧倒する。今回紹介するのは、瀬戸内海産の良質アナゴを使った、高松駅を代表する駅弁だ。

 金比羅さんの帆掛け船を連想させる舟形の八角形容器を厚紙のパッケージで包み、ヒモで十字にしばった。中身は、香川産のヒノヒカリをイリコのダシ汁と薄口醤油で炊いたご飯の上に、アナゴの蒲焼や刻みアナゴ、アナゴの八幡巻、錦糸卵、煮エビ、醤油豆、銀杏を散らしたアナゴ尽くし弁当。アナゴの蒲焼は、脂が十分にのっており、歯ごたえもよい。ほどよい甘さのタレが冷めてもおいしいと評判の炊き込みご飯にぴったりで、両方を一気にほお張るとおいしさも倍増する。アナゴを主役にした駅弁は、宮島口駅(広島駅)や徳山駅(山口県)などでも販売されているが、いずれも甲乙つけがたい名作揃いなので、機会があればぜひ食べ比べてほしい。

 脇役で光るのは醤油豆。ソラマメを醤油で甘辛く煮た香川県の郷土料理で、香ばしい味わいが田舎料理の風情を漂わす。駅構内には宇高連絡船で出されていた連絡船うどんを提供する店がある。時間に余裕があれば立ち寄りたい。

岡山~高松駅を結ぶ快速「マリンライナー」で瀬戸大橋へ
  • 価格:950円
  • 種類:炊き込み・海鮮・珍素材
  • 調製元:(株)高松駅弁
  • 電話:087-851-7711

懐かしくて味わい深い高菜の古漬に心をつかまれる 高菜べんとう 佐世保駅

 九州ではお馴染みの漬物、高菜の古漬をメーンにした駅弁。明治維新から間もない明治5年(1872)創業の老舗、松僖軒(しょうきけん)が調製している。

 長方形の発泡材容器に掛け紙を巻き、ひもでしばった。掛け紙には、20年以上前の発売当初から変わらないハイカラなイラストが描かれている。ご飯の上には高菜漬け、牛肉と鶏肉のそぼろ、錦糸卵がのっており、くっきりと3色に色分けされた様子が目を引く。メーンの高菜古漬は、ちりめん、唐辛子、魚粉、ごま油、ラー油などで丁寧に味つけした後、塩抜きし、しんなりするまで炒めて仕上げている。色合いこそ華やかさに欠けるが、フタを開けた瞬間に漂う独特の香りが食欲を誘う。郷土の味として長年にわたって親しまれてきた深い味わいには、高菜好きでなくても心をわしづかみにされるはずだ。

 牛肉と鶏肉のそぼろには、肉の臭みをとるために生姜を使用した。さっぱりとした味覚は、濃厚な味覚の古漬と好対照をなしており、弁当全体の完成度を高めている。再訪した折にまた食べたくなる一品だ。

「トレたび」おすすめプレイバック

地域に根差した本物のB級ご当地グルメ「佐世保バーガー」を紹介
  • 価格:800円
  • 種類:炊き込み
  • 調製元:(株)松僖軒
  • 電話:0956-23-6721

濃厚だが上品な煮汁がおいしい伊東駅の名物駅弁 いなり寿し 伊東駅

 祇園は、戦後間もない昭和21年(1946)に伊東温泉で創業した。昭和34年(1959)には当時の国鉄伊東駅構内で「いなり寿し」の販売を開始。これが伊東駅で最初の駅弁となった。現在も祇園の看板商品である「いなり寿し」は、数あるいなり寿司弁当の中でも人気・おいしさともにトップクラスだ。

 “いなり”という文字の替わりに鳥居を描いたシンプルな掛け紙を開けると、ラップで密封した6個のいなり寿司が現れる。油揚げは、先代社長の頃から取引している豆腐店にオーダーしたもので、これを昔から変わらない味付けで数時間煮込む。ほどよい甘辛味に仕上げた後、コシヒカリのブレンド米を使った、もっちり感のある酢飯をたっぷり詰め込んで出来上がり。特筆すべきは、たっぷりの煮汁。垂れないように工夫しながら口に運ぶと、甘口だが上品な味わいの汁がジュワッと口中に広がる。後味がさっぱりとしているため、2個3個と次々に食べられるのがこの「いなり寿し」のセールスポイント。毎年秋に開催される明治神宮の例大祭に献上されるというのも納得の見事な仕上がりだ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

夏!海!食!湯! リゾート気分で旅する一日
  • 価格:570円
  • 種類:その他
  • 調製元:(株)祇園
  • 電話:0557-37-3366

多彩なおかずをかき混ぜて味わうのが醍醐味 漁師丼 小田原駅

 酷暑として長く記憶されるだろう平成22年8月に発売された駅弁。小田原市内の酒匂川(さかわがわ)河口近くに本社がある東華軒が調製している。

 駅弁名を大書した厚紙のパッケージに、円形の黒いプラスチック容器を収める。中身は、白飯の上にアジの干物の白味噌和え、金目鯛の醤油和え、桜エビの素揚げ、卵そぼろ、広島菜みどり漬けなどの食材をふんだんにのせた郷土色豊かな弁当。多彩なおかずの中では桜エビの素揚げが絶品だ。フタを開けた瞬間から香ばしい匂いが食欲をそそり、誘われるままに口に入れるとサクサクとした食感と豊かな旨味を存分に味わえる。

 このように食材を一品ずつ味わうのもよいけれど、中身をかき混ぜて丼めしふうに味わうのがこの駅弁の醍醐味。混ぜるほどに磯の香りが立ち昇り、周りの目も気にせず豪快に口に運べば、ご飯や魚介、漬物などの味覚や食感が渾然一体となって押し寄せてくる。改めてパッケージを眺めると、「漁師が楽しむ、まかない弁当」というフレーズが。このおいしさを漁師に独占させるのはもったいない。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

地元の女子生徒が東華軒と共同考案した和風駅弁も登場!
  • 価格:840円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:(株)東華軒
  • 電話:0120-70-1186
※掲載されているデータは平成24年8月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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