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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

甘口の鯛そぼろがおいしいロングセラー駅弁
元祖鯛めし
静岡駅

 明治30年(1897)発売の「上等御弁当鯛飯」がこの駅弁の前身だ。115年にもおよぶロングセラーの誕生には、紆余曲折があった。

 弁当発売の5年前、静岡市では大火事が発生し、加藤弁当店(現・東海軒)も被害を受けた。馴染みの魚屋が見舞いの品として持ってきたのが甘鯛。この魚は煮ると身が崩れやすく、商品化するのは難しい。そこで店主は一計を案じ、鯛の身をそぼろ状にしてご飯にのせた。このご飯は子どもたちの人気を得たため、かねてから子ども向きの駅弁をつくりたいと考えていた店主は、調理人とともに工夫と改良を重ねて駅弁を完成させたという。

 発売から1世紀以上を経てなお高い人気を誇る「元祖鯛めし」。ご飯は、桜飯と呼ばれる醤油ご飯がベースで、これに鯛そぼろを混ぜた。このご飯の上には、淡いクリーム色の鯛そぼろがぎっしりと詰められている。マダイやヒメダイ、魚卵などでつくられた鯛そぼろは甘口仕上げだが、醤油ベースの混ぜご飯とのコンビネーションが抜群で、飽きることなく完食へと導かれる。100年を超えて売れ続ける商品には、愛される理由があるのだ。

銘菓「うなぎパイ」はじめ、様々なスイーツを紹介
  • 価格:570円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:(株)東海軒
  • 電話:054-287-5171

8種類の駅弁のメーン食材を一度に味わえる
北の駅弁屋さん
函館駅

 海の幸を使った駅弁がずらりと並ぶ函館駅の売店。どれもおいしそうに見えて、一つに決めるのは難しい。それなら同駅で販売されている人気駅弁のメーン食材を詰め合わせた弁当をつくろうと発案されたのがこの駅弁。オリジナルを調製したのは、みかど(株)函館営業所だが、同社は平成24年1月に閉店したため、ジェイ・アールはこだて開発(株)が引き継いだ。

 9分割された仕切りの中には、かつて同駅で販売されていた8つの駅弁(うに弁当、鰊(にしん)みがき弁当、鮭ハラス弁当、ほたてめし、いくら弁当、いか飯、かに飯、つぶ貝弁当)のよいところが彩りよく詰められている。バラエティに富んだおかずを少量ずつ味わいたいという欲張り派にとっては究極の内容といえる。中でも存在感を示すのは、身欠きニシンの煮付けとカズノコのコンビ(鰊みがき弁当)。タレをたっぷりかけた肉厚のニシンと、やわらかくほろりと仕上げたカズノコとのバランスが何よりすばらしい。カズノコは、日持ちを考えれば塩辛く作るのがふつうだが、味覚を優先させた英断に拍手を送りたい。

 人気駅弁のため、夕方には売り切れる日も多いそう。確実に入手するには事前の予約がお勧めだ。

「トレたび」おすすめプレイバック

札幌から上野を結ぶ「走るホテル」

金沢の老舗料亭が腕をふるうチダイとベニザケの押し寿司
お贄(にえ)寿し
金沢駅

 駅弁の名称は、加賀一宮の白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)で行なわれる「御贄講大祭(みにえこうたいさい)」に由来する。この祭礼は、新鮮な海の幸を奉納するのが慣わしで、献上品は「御贄」と呼ばれている。調製するのは金沢の料亭、大友楼。天保元年(1830)の創業と伝わる老舗で、明治31年(1898)の北陸本線金沢駅開業と同時に駅弁事業に着手した。現在も弁当部門があり、多様な駅弁を製造・販売している。

 パッケージは、大名行列などに使われた長持ちをイメージしており、さおの部分が箸入れになっている。フタを開けた瞬間、紅白のめでたい色模様が目に飛び込む。内容は、古代酢を使用した酢飯の上にベニザケとチダイをのせた押し寿司で、酢の芳香に食欲を刺激されてテンションが高まる。

 2種類のネタではチダイが旨みたっぷり。固めに仕上げたシャリと、しなるような歯ごたえが特徴のチダイの身のハーモニーが絶妙で、次から次へと手が伸びて止まらなくなる。ボリュームは少なめだが、600円で老舗料亭の味覚を賞味できるのだから得した気分だ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

加賀名物で彩られた格調高い味
  • 価格:600円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:(株)大友楼
  • 電話:076-221-1758

調製元自慢の郷土料理を詰め込んだ幕の内駅弁
福山観光双六(すごろく)弁当
福山駅

 ダイヤ改正により新幹線「のぞみ」が福山駅に停車することになったのを記念して、平成15年に発売された。掛紙には福山市内の観光名所をめぐる双六と、切り取って遊べるように組み立て式のサイコロとコマもプリントしている。

 中身は、9分割した容器にマツタケ飯やのり巻きなどのご飯のほか、ままかり、牛肉煮、タコ煮、エビ天ぷらといった多彩なおかずを盛り込んだ幕の内弁当。創業は明治中期までさかのぼるという調製元自慢のおかずがぎっしり詰め込まれており、「浜吉オールスターズ」と呼ぶにふさわしい内容になっている。

 娯楽つきの駅弁だが内容は軽視しておらず、郷土料理を巧みに織り交ぜた駅弁として評価は高い。中でも食を進ませるのは、ままかりの酢漬け。酢加減が絶妙で、ご飯のみならずビールまで進んでしまう。季節の果物を取り入れたデザートもおいしく、細部までスキがない。1日30個程度しか調製されないので、夕方には売り切れ必至。売店などで見つけたら即買いがお勧めだ。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

福山駅のちらし寿司も登場
  • 価格:1100円
  • 種類:幕の内
  • 調製元:(株)浜吉
  • 電話:0848-62-2121
※掲載されているデータは平成24年12月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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