『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

  • mixiチェック

駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

天然エビの旨みを存分に味わえる寿司駅弁
えびずし
和歌山駅

 和歌山駅では、国鉄民営化以前から阪和第一食堂と水了軒(現・和歌山水了軒)の2業者が駅弁を販売している。長い歴史の成せるワザか、きちんとすみ分けされており、前者は阪和線(2・3番線)、後者は紀勢本線(4・5番線)のホーム上に売店がある。

 えびずしは、阪和第一食堂が調製する名物駅弁だ。白いプラスチック容器の中には、色鮮やかなエビをのせた握り寿司が6カン並ぶ。内容がシンプルなだけに、素材には徹底してこだわっている。シャリは秋田県産あきたこまちを炊いた酢飯、エビは大ぶりで肉厚の天然ものを使っている。つやつやと色味のよいエビをのせた寿司をつまんで口中にほうり込む。何より感嘆するのはエビの絶妙な茹で加減。天然ものならではのプリッとした食感を見事に残しており、ひと噛みごとに海の幸特有の旨味を味わえる。酢飯との相性も抜群で、少々高めに設定された値段にも納得できる。

 添付されたレモンの汁を食べる前にふりかけておくと、全体の味をしゃきっと引き締めてくれる。エビ好きならずとも見逃せない逸品といえそうだ。

和歌山・紀北エリアの社寺でプチ修行体験
  • 価格:1000円
  • 種類:海鮮系
  • 調製元:阪和第一食堂
  • 電話:073-472-1903

ブランド鶏肉を使用した半世紀以上にわたる人気駅弁
とりめし
宇都宮駅

 近年、すっかり“餃子の街”のイメージが定着している宇都宮。餃子がメーンの駅弁もあるが、今回取り上げるのは「とりめし」。弁当製造の老舗、松廼家で半世紀以上にわたって人気トップを譲らない名物駅弁である。

 長方形の容器に弁当名を大書した掛け蓋の、シンプルな外見とは裏腹に、持ち上げるとずしりと重量感がある。コシヒカリを炊いた茶飯の上には、足利市の生産農家が育成するブランド鶏「いっこく野州どり」のそぼろと2切れの照り焼きがのる。茶飯を覆い尽くすようにぎっしりと敷き詰められたそぼろは、しっとりとした食感と上品な薄味仕立てでとてもおいしい。しかしここに集中すると味覚は単調になる。そんなときにアクセントとなるのが、副菜として添えられた葉唐辛子とわさび漬け。どちらも辛口のため、味覚がぴりっと引き締まって、最後までさっぱりとおいしく食べられる。

 つくね寄せは、平成23年のリニューアル時に加えられた。ほどよい甘口で、しかもやわらかい。歯ごたえのある照り焼きとの食感のギャップもこの駅弁の魅力の一つである。

「トレたび」おすすめプレイバック

宇都宮餃子をはじめ、さまざまなグルメを堪能
  • 価格:700円
  • 種類:肉系
  • 調製元:松廼家
  • 電話:028-634-2426

庄内豚をたっぷり味わえる山形の“ごちそう”
おらだのごっつお
山形駅

 弁当名は山形弁で「おれたちのごちそう」の意味。山形県のごちそうといえば米沢牛が頭に浮かぶが、県では豚肉の生産にも力を入れており、ブランド化も進んでいる。この駅弁で使用されているのは庄内豚。引き締まった肉と、きめ細やかな脂肪が醸し出す豊かな味わいが特徴の高品質豚肉だ。

 県産米のはえぬきを炊いたご飯の上には、厚切りされた庄内豚が折り重なるように盛られている。一見ではチャーシュー丼のようなイメージだが、味覚はどうか。この豚肉は、表面をこんがりと焼いた後でボイルし、県の名産である洋ナシ(ラ・フランス)とサクランボのピューレを使用したタレに漬け込んで仕上げた。やわらかい肉質を維持しながら、豚肉のまろやかな旨みとタレのフルーティな味覚が見事に合体している。

 副菜の中では、野菜と唐辛子を細かく刻んで醤油漬けにした「オーからい」がおいしい。その名のとおりピリッと辛い漬物で、単調になりがちな豚肉丼の味覚にアクセントを加える。このほか山クラゲ、甘酢生姜、厚焼き卵なども収められており、ごちそうの名脇役として存在感を示している。

■「トレたび」おすすめプレイバック■

山形駅ではご当地発車メロディ「花笠音頭」が響き渡る
  • 価格:1000円
  • 種類:肉系
  • 調製元:森弁当部
  • 電話:023-623-1380

漱石の好物を盛り込んだ松山駅のおにぎり駅弁
坊っちゃん辨當
松山駅

 夏目漱石は、1年間だけ愛媛県尋常松山中学に英語教師として赴任したことがある。その体験をもとに仕上げたのが小説『坊っちゃん』で、発表から1世紀以上が経過したいまも高い人気を誇る。ちなみに作品中に登場する鉄道は、四国最初の鉄道として開業した伊予鉄道で、現在は当時の蒸気機関車をモデルにした「坊っちゃん列車」を走らせている。

 駅弁「坊っちゃん辨當(べんとう)」は、松山駅がリニューアルした平成12年11月に発売された。おかずは漱石の好物でまとめられており、梅干ときなこのおにぎりを中心に、エビ天、肉巻きフライ、さらに幕の内弁当の三種の神器である焼き魚、卵焼き、カマボコを盛り込んだ。さらにデザートとして愛媛名産のミカンを使ったゼリーを添えている。

 中でも異彩を放つのは、きなこのおにぎり。塩味のご飯に、ほんのりと甘いきなこをまぶしたもので、おはぎを思わせるレトロチック味わいが心をなごませる。

 複数で松山駅を訪れた場合は、「マドンナ辨當」(870円)も合わせて購入するとよい。こちらはピンクの不織布の巾着に収めた二段重ね弁当だ。

  • 価格:620円
  • 種類:幕の内
  • 調製元:鈴木弁当店
  • 電話:089-984-2100
※掲載されているデータは平成25年1月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

バックナンバー

このページのトップへ