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駅弁の女王小林しのぶが選ぶ 絶対に食べたい駅弁

煮アサリとハマグリの旨みが炊き込みご飯にマッチ|潮干狩り弁当|千葉駅

 遠浅の海岸が多く、潮干狩りスポットが各所に整備されている房総半島の特徴を活かした駅弁。昭和3年(1928)創業の老舗、万葉軒が調製している。

 掛け紙はどこか昭和の時代を思わせるレトロな雰囲気。千葉県とアサリ貝をイラストで描いている。中身は、アサリとハマグリをのせた炊き込みご飯を中心に、イワシのつみれ、ヒジキ煮、イカの味噌焼き、野菜の煮物といったおかずを添えたもの。県産の食材が数多く使われており、地産地消弁当と呼ぶにふさわしい内容だ。

 メインとなる炊き込みご飯の味はどうか。ショウガを効かせた煮アサリと、甘辛く味付けたハマグリという対照的な味覚のコンビネーションがおもしろく、薄口に仕上げた茶飯を勢いよく進ませる。中でも煮アサリは噛むほどに磯の風味が色濃く漂い、房総の海岸線にゴザを敷いてのんびり弁当を食べている気分にさせてくれる。
 千葉県内の潮干狩りシーズンは初春~夏までだが、富津海岸のように9月初めまで可能な場所もある。天気の良い1日はこの駅弁を携えて、潮干狩りに出かけてはいかがだろう。

まさにハマグリづくし 万葉軒の「やきはま丼」を紹介
  • 価格:760円
  • 種類:珍味
  • 調製元:(株)万葉軒
  • 電話:043-224-0666

宮内庁御用達のこだわり地鶏を使った“津軽弁”|青森シャモロック弁当|弘前駅

 この駅弁は、「弘前観光コンベンション協会」が認定する“津軽弁”のひとつ。郷土の素材を大切に扱った名品だ。

 発泡材の枠にプラスチック容器をはめ込み、フタをのせて掛け紙で包んだ。内容の画像をプリントした掛け紙には「鶏にこだわり鶏を極める。」というコピーが添えられている。

 中身は、鶏のダシ汁で炊いたご飯の上に鶏の治部煮3切れ、錦糸卵、シシトウを彩りよく盛り付けた鶏肉弁当。使われている鶏は、青森畜産試験場が開発した地鶏「青森シャモロック」で、赤みを帯びた歯応えのある肉質と上品な味わいに特徴がある。
 おかずのメーンである鶏の治部煮は、身がよく引き締まり、しっとりとジューシーな味わいの中に弾力感がある。弾むような噛み応えを楽しんでいると、きめ細かい肉質の中からミルクのような濃厚な旨みが口中いっぱいに広がって、ちょっと得したような幸せな気分を味わえる。宮内庁御用達の高級地鶏の実力はまさに本物だ。弘前駅の東西を結ぶ自由通路の売店で購入できる。

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秋田から弘前を経由して本州の果て青森へ

ゆずの香りが食欲をそそる福島駅のロングセラー駅弁|伊達鶏ゆず味噌焼き弁当|福島駅

 10年以上も前に登場したロングセラー駅弁で、現在でも福島駅でトップクラスの人気を誇っている。弁当名を大きく描いたボール紙のパッケージに真っ赤な発泡材容器を収めている。中身は、ご飯の上に鶏そぼろと錦糸卵を敷き、さらに伊達鶏の味噌焼きとシシトウ、シイタケ煮、しば漬けをのせたもの。

 フランスから輸入した鶏種を自然の中で飼育したのが伊達鶏で、穀物中心の特別な飼料を与えているため、やわらかい歯ごたえの鶏肉に育つという。この高品質の鶏肉をゆず味噌と一緒に焼いたのが、おかずのメーンとなる伊達鶏のゆず味噌焼き。風味豊かなゆずは皮が厚く、香りも強い。鶏肉のまわりにゆずの刻みを散らしているため、香りがいっそう湧き立って食欲をそそる。

 鶏肉はジューシーで、食感もよい。非常に残念なのは3切れしか入っていないこと。もっと食べたいと思わせるこの演出が人気の秘訣かもしれない。

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これが駅弁!? 28種類のスパイスを使った本格カレー|有田焼カレー|有田駅

 JR九州が主催する「九州駅弁グランプリ」で一昨年は優勝、昨年は準優勝し、一躍全国にその名が知られた有田駅の駅弁。焼カレーは、ご飯の上にカレーとチーズなどをのせてオーブンで焼いた料理で、佐賀県有田町にあるカフェ「創ギャラリーおおた」の名物として人気があった。
これに着目したのが、佐世保駅の駅長時代に「佐世保バーガー」をヒットさせた西田氏。有田駅の駅長に赴任すると、「有田を愛するハートプロジェクト」を結成し、2007年には地元でおいしいと評判の「有田焼カレー」「有田鶏弁当」「幸せのチーズケーキ」の3種類を駅弁として販売した。

 このうち有田焼カレーは、28種類のスパイスを使用し、1週間かけて煮込んだルーを地元産の棚田米にかけ、厳選した3種のチーズをトッピングして石窯オーブンで焼いたもの。ルーの辛みとチーズのまろやかさが絶妙に絡み合い、文句なしにおいしい。陶器市の期間中、1週間で3000食を売り上げたという実績は伊達ではない。容器はもちろん有田焼で、有田駅の販売店では再加熱してくれるため、香ばしいカレーを熱々の状態で食べられる。もちろん冷たいままでも十分イケる。容器は有田みやげとして持ち帰るとよいだろう。

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有田焼をはじめ、全国の陶磁器の産地をめぐる
※掲載されているデータは2013年6月現在のものです。

 

女王PROFILE 小林しのぶ 旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家

 駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから"駅弁の女王"と呼ばれる。全国各地の調製元と新作駅弁の共同開発を手がけるほか、新聞、雑誌、ウェブ等に連載多数。プロデュースした駅弁は「1000号はっこう弁当」「東京もちべん」(東京駅)ほか。

 フードアナリスト。日本旅のペンクラブ会員。千葉県佐原市出身。

 近著に『全国美味駅弁 決定版』(JTBパブリッシング)、『五つ星の駅弁』(東京書籍)、『どんぶりこ』(交通新聞社) 、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『すごい駅弁!』(メディアファクトリー)などがある。NEXCO東日本で展開している「どら弁当」の監修者でもある。

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