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鉄道遺産を訪ねて

北海道の鉄道を支えた産業遺産 札幌苗穂地区の工場群

 札幌市の苗穂地区は、貨物輸送の利便性などにより、明治期から「産業の町」として栄えました。多くの工場が建てられ、鉄道の「苗穂工場」もそのひとつです。「苗穂工場」は1909(明治42)年12月、鉄道院札幌管理局札幌工場として設立され、1915(大正4)年に「苗穂工場」に改称された由緒ある工場です。20万平方メートル(甲子園球場の約5倍)の敷地に20棟のレンガ造りの建物が並び、1000台の工作機械が動きました。終戦までに400両に及ぶ車両を製造、戦後は車両の検修、改造、リゾート車両の製造などが行われ、高い技術力を持つ工場として知られています。

 歴史ある建物が多い「苗穂工場」ですが、このうち機関車修理場(旧第一用品倉庫)が「北海道鉄道技術館」として一般公開されています。建築は1910(明治43)年のレンガ造りで、工場内で最古の建築物です。北海道遺産の一施設であり、「さっぽろ・ふるさと文化百選」に選定されています。

 内部は改装され、鉄道に関する数多くの資料が展示してあります。北海道初の特急気動車「おおぞら」で使用されたキハ82系の先頭部、苗穂工場で改造、落成した名リゾート列車「アルファコンチネンタルエクスプレス」の先頭部など貴重な実物のほか、運転シミュレーターなどがあります。
 屋外には蒸気機関車C62 3が静態保存され、腕木式信号機も設けてあります。

●交通 函館本線・苗穂駅よりタクシー5分

昔懐かしい「腕木式信号機」。敷地内には貴重な鉄道遺産が随所に点在しています

苗穂工場内にある「北海道鉄道技術館」。毎月第2・4土曜(13:30〜16:00)に一般公開されています

写真協力:JR北海道

先人の苦労が伝わる、鉄道構造物の傑作 大日影トンネル遊歩道

 大日影トンネルと深沢トンネルは、1903(明治36)年に貫通した歴史的なトンネルです。同時期の笹子トンネルの貫通とともに、中央本線の開通はこの地に大きな利益をもたらし、ブドウの輸送では馬で3〜6日かかったものが半日に短縮されるなど、鉄道輸送が大いに貢献しました。しかし、時代を生きたトンネルも、路線の高速化により新トンネルが掘られ、1997(平成9)年に廃線。トンネルは遊歩道やワインカーヴとして新たに活用されました。

 トンネルを見てみましょう。昔のトンネルは貫禄がたっぷりです。入口は「坑門(こうもん)」と呼ばれ、レンガや石積みで造られました。ピラスターと呼ばれる「壁柱」が両側で支え、「迫石(せりいし)」のアーチがトンネルを形成し、最上部にはキーストーンと呼ばれる「要石(かなめいし)」が入れられ出来上がります。トンネルアーチ上には水切りの役割を果たす「帯石」「笠石」が飾られ、場合によってはトンネルの名称や完成の祝いの言葉を揮毫する「扁額」が設けられます。

 これらトンネルの意匠は、構造上の役割以上に「装飾」の目的が大きかったようです。トンネルは建設に多大な苦労と人力、月日を要する鉄道構造物の傑作です。しかし、橋梁などと異なり暗い地中にあり地味な存在のため、たった2ヵ所の「坑門」は建設者たちが「主張」をできるせめてもの場所だったのです。そんな先人たちの労苦と英知を、現存のトンネルから感じとってみてはいかがでしょう?

●交通 中央本線・勝沼ぶどう郷駅下車

大日影トンネルは全長1367.8メートル。坑門は切石積み、内部はレンガ積みで、ゆっくりと見学できます

続く旧深沢トンネルはワインを貯蔵するワインカーヴに。年間温度6〜14度でワインの熟成に最適です

蒸気機関車が休息したレンガの遺構 多度津駅給水塔

 蒸気機関車のボイラーに水を汲むための給水塔です。機関車より高い位置に貯水槽があり、上から下へ、重力を利用して水を供給します。多度津駅の給水塔は塔部がレンガ造り、貯水槽はコンクリート製で構成されています。直径は4.96メートル、高さが7.35メートル。塔部には窓があり、さらに花崗岩の「迫石」「要石」が見られ、じつに優雅な仕上がりです。建造は1913(大正2)年頃と言われています。多度津駅は四国鉄道発祥の地。多くの機関車たちがこの給水塔で一息ついて活躍をしました。

 給水塔のレンガは「イギリス積み」と呼ばれる、レンガの長手面の段と小口面の段を交互に積み上げたものです。強度的に優れ推奨されたため、日本で広く普及しました。

 レンガの積み方には様々な種類があり、「イギリス積み」も端部の処理によって「オランダ積み」と呼ばれます。また、同じ段に長手面と小口面を交互に配置した積み方に「フランス積み」があります。美観に優れ、この積み方の建築物などは大変に瀟洒なのですが、構造的には「イギリス積み」などより若干劣ります。

 レンガは粘土を直方体にし、乾燥させて焼き上げたもので、建築材料として活躍してきました。レンガが日本にやって来たのは幕末の長崎が最初と言われ、鉄道ではあらゆる建築物、トンネル、ホーム、橋脚などに多数利用され、現役のものも少なくありません。

●交通 土讃線・多度津駅下車

多度津駅の駅舎の隣にたたずむ重厚な給水塔。駅を出て数分の跨線橋(写真左)がビュースポット

塔部の窓には「迫石」「要石」が設けられ、「イギリス積み」のレンガ構造も眺めることができます

写真協力:JR四国

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