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鉄道遺産を訪ねて vol.16

SL時代の花形施設「転車台・扇形庫」

 蒸気機関車は運転台が一方向にしか無く、一般的に終着駅などでは機関車を転向させて運転を行ないます。ここで必要になるのが「転車台(ターンテーブル)」です。

 転車台は「鈑桁」で構成され、回転部分の中心には機関車の重量を支える「中央支承」があり、桁の外側にある「円形軌条」が重量の一部を負担します。

 転車台には中央支承のみで重量を支える「バランス形」、「円形軌条」に重量を負担し回転させる「三点支持形」があります。

 一方、この転車台を活用し、効率よく機関車を収納させた車庫が「扇形庫」です。鉄道黎明期の車庫は矩形庫(くけいこ=長方形の車庫)が主流でしたが、北海道の手宮機関区で扇形庫が使用されるようになると、後に機関車の車庫として広く普及しました。

 今回は、今も残る転車台と扇形庫を訪ねてみましょう。

  • 図1

    【転車台の構造】

  • 図2

    【梅小路蒸気機関車館の転車台と扇形庫】

希少な「下路式」転車台をもつ「SLばんえつ物語」の拠点 旧会津若松機関区[JR東日本](きゅうあいづわかまつきかんく)

 磐越西線に運転される「SLばんえつ物語」のC57形が転向し、転車台、扇形庫共に現役で健在です。

 旧会津若松機関区(現、郡山総合車両センター会津若松派出所)は、会津地方の中枢を担う名門機関区で、多くの蒸気機関車が活躍をしました。転車台、扇形庫は古く、昭和初期に造られたものです。

 転車台は明治〜昭和期に広く活躍した原形スタイルの「バランス形」です。バランス形は機関車が桁の中心に乗ってしまえば、円形軌条とは宙に浮き離れ、人力など小さな力でも動かすことができます。会津若松機関区では、桁に設けられた牽引機により、電動で転車台を操作します。

 また、この転車台は桁の下にレールが配置された「下路式」です。国内の転車台はレールが桁の上にある「上路式」が圧倒的に多く、下路式の転車台は稀少な存在です。

 扇形庫は15線を持つ鉄筋コンクリート造りで、昭和49年に蒸気機関車が全廃されても、ディーゼル機関車等の拠点として君臨し、現在はキハ40形など只見線の気動車が入線し、車両基地として使用されています。

 「SLばんえつ物語」は新潟〜会津若松間に季節運転され、大変好評な列車です。1〜3月は運休になりますが、春期からはC57形の勇壮が見られます。また、只見線にも臨時列車としてSL列車等が走ることがあり、その際にも旧会津若松機関区の転車台と扇形庫が大いに活躍します。

 冬期は同区が排雪列車の発進基地にもなりますが、除雪機関車(DD14型)の転向にも転車台が利用されています。

会津若松の転車台に入線するC11 325。建物は鉄筋コンクリート製で威風堂々とした堅牢な造りだ

下路式転車台に載るC11 325。只見線ではSL列車が人気で、C11形により例年運転が行なわれている

重要文化財に指定される20線の雄大な扇形庫 梅小路蒸気機関車館[JR西日本](うめこうじじょうききかんしゃかん)

 京都府の梅小路蒸気機関車館にある転車台と扇形庫です。休館日を除く毎日、蒸気機関車が転車台に載り、扇形庫に入る生きた姿を見ることができます。

 梅小路蒸気機関車館は現役の梅小路運転区の一部でもあり、施設内では蒸気機関車やディーゼル機関車の検査や修理を行なっています。転車台は「三点支持形」の「上路式」です。「三点支持形」は「バランス形」以降に改良発展されたもので、車両の重心を中央に合わせなければ回転できない「バランス形」と異なり、重量を円形軌条が負担するので、水や石炭の量などで重心をとるのが難しい大型の蒸気機関車なども楽に入線できます。但し、転向に大きな力が必要になります。

 扇形庫は大正3年(1914)の建設で、現存する最古の鉄筋コンクリート造りとして重要文化財に指定されています。引込み線は20線あり、8〜20番が梅小路蒸気機関車館の展示線、1〜7番が梅小路運転区の検修線に使用されています。扇形庫内は広く、検修に使用される電動天井クレーン(重要文化財指定)が備わります。

 また、特徴的なものとして、蒸気機関車から排出される煙を庫外に逃がす目的として設けられた、「煙抜き煙突」が残存しています。

 梅小路蒸気機関車館には19両の蒸気機関車が保存され、このうち7両が動態保存です。館内では蒸気機関車や鉄道の文化、歴史を多くの鉄道遺産を通して学ぶことができます。

「梅小路蒸気機関車館」について詳しくはコチラ

ズラリと並んだ扇形庫は壮観の一言に尽きる。左手7番までが梅小路運転区のもの。「煙抜き煙突」が右手に見える

転車台に載り悠々と回転するC61形蒸気機関車。毎日実演シーンが見られるのは同館ならではだ

大畑越えも控えた鉄道の要衝 旧人吉機関区[JR九州](きゅうひとよしきかんく)

 平成21年4月、肥薩線八代〜人吉間に復活した「SL人吉」の終点、人吉。ここには鉄道の重要拠点として機関区が設置されました。

 かつて熊本方面と宮崎、鹿児島方面を結ぶ重要な交通路として、多くの優等列車が運転されていた肥薩線。人吉はここから始まる吉松への大畑(おこば)越え、また湯前線(現、くま川鉄道)などの列車の基地になる鉄道の要衝でした。多くの蒸気機関車が集い、給水をし、出発の準備を整えました。

 旧人吉機関区(現、人吉運転区)にある転車台は古く、建設年は不詳ですが、構造設置は明治44年(1911)頃、回転部は昭和40年(1965)頃の改修と言われています。

 上路式で電動牽引機によって転向できるように改修されていますが、風格があり8620形がよく似合います。蒸気機関車時代に大いに活躍をしましたが、「SL人吉」の運転開始で再び注目を集めています。

石積みの車庫は8620形をはじめ、かつてはD51、C55、C57形など多くの蒸気機関車と気動車で賑わった

人吉の転車台で転向する58654。同機は昭和43年に人吉機関区に配属され、昭和50年まで活躍した

ピックアップCOLUMN 蒸気機関車の復元、続々と JR東日本「C61形蒸気機関車」2011年春に復活!

伊勢崎市の華蔵寺公園に保存されているC61 20。2011年春に再び汽笛を鳴らす
写真協力:新! 鉄道写真館『宿命』

 近年のSL人気で、一度現役を退いた蒸気機関車が各地で復活し、再び熱い視線を集めている。平成21年には肥薩線で「SL人吉」が復活し、大きな話題になったが、このたびJR東日本では、群馬県伊勢崎市の華蔵寺(けぞうじ)公園遊園地に展示保存されている蒸気機関車「C61形20号機(以下「C61 20」)」を復元するプロジェクトを開始する。

 C61 20は、戦後の旅客輸送需要が急増した昭和24年に製造された大型旅客用機関車で、廃車になる昭和48年までの24年間、東北本線や常磐線、奥羽本線などで活躍。東北初となる特急「はつかり」や寝台特急「はくつる」の仙台〜青森間にも使用されていた。

 車軸の配列は「ハドソン型」と呼ばれる2C2型{先輪2軸+動輪3軸(C)+従輪2軸}で、日本では33両製造されたC61形に初採用。復元後は、本線運転できる唯一のハドソン型蒸気機関車となる予定だ。

 復活は平成23年春。昭和63年に復活した「D51 498」とともに、週末や繁忙期など高崎エリア(高崎〜水上、高崎〜横川)を中心に運行される予定だ。

イラスト:熊谷江身子(栗八商店)
写真協力:鐵路巡業鈴屋の鉄道写真館九州ヘリテージ
※掲載されているデータは平成22年1月現在のものです。

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