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華々しいデビューを飾ったアイドル的列車カタログ JR名車両列伝1 JRスタートから24年。従来の国鉄の殻を破り、斬新なスタイルやサービスでデビューした当時のJR車両たちも、世代交代の時期を迎え、新型車へのバトンタッチ、リニューアルなどが行なわれています。最新車両の礎にもなった当時の名車両の数々にスポットを当て、歴史を振り返ってみましょう。

第2章 中京圏のスプリンター 311系近郊形電車●JR東海

近郊形電車初の120km/h運転 パノラミックなフロントマスク

 東海道本線の豊橋〜岐阜間の新快速用として、平成元年に登場したのが311系電車です。311系は近郊形電車としては120km/h運転を初めて行なった形式で、グレードの高いサービスと相まって大いに注目されました。

 311系は211系に準じた3扉ステンレス車ですが、車内は大きく異なり、チャコールグレーの転換クロスシートが配置されています。シートピッチは910mmとゆったりし、背もたれも高くして快適性を持たせています。車内全体は明るいグレー系でまとめられ、落ち着いた雰囲気があります。

 各車にはLED式の情報案内表示機があり、カード式の公衆電話も設けられました。

 フロントマスクも211系の平面ガラスからパノラミックウインドウとなり、車内からの眺望も配慮され、先頭車両では前面展望がよく得られます。

 制御方式は界磁添加励磁制御で回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用していますが、120km/h運転のためブレーキに増圧システムを加え、またボルスタレス台車にはヨーダンパを追加しています。

新快速に投入され俊足を発揮 転換クロスシートで快適さが充実

 311系は平成元年7月のダイヤ改正、金山総合駅開業に併せ、東海道本線の豊橋〜岐阜間の新快速としてデビューをしました。同区間では各社による輸送競合が盛んであり、311系は大きな戦力として投入されました。

 120km/hの高速運転と快適な車内などのサービスは大好評で、同区間の主力として活躍し、ライバルに影響を与えました。

 平成2年3月からはさらに増備が行なわれ、運転区間も豊橋〜大垣間に延長されます。

 311系の運転区間は拡大され、北陸本線長浜までの「ナイスホリデー近江路号」、中央本線塩尻までの「ナイスホリデー木曽路号」が運転され、大いに活躍をします。

 そして311系は中京圏の新快速列車で常に高速運転を行なってきましたが、平成11年に後継車の313系が登場すると新快速運用から離脱し、主に静岡・浜松〜岐阜間の普通列車を中心に運転されます。

 平成20年3月には一部列車ながら新快速が復活したのが明るい話題です。311系は、普通列車、新快速で、313系列車と共に、東海道本線で今日も力走しています。

中京圏で新快速として運転の登場時の311系。120km/hで駆ける姿は勇ましい

心地よい転換クロスシートなどはグレー系の色彩。化粧板も白系で明るい車内になった

前面展望のよい先頭車両の最前部。上部にLED式の情報案内表示機がある

東海道本線の普通列車で運用される311系。313系が増備されても、まだまだ同線の主役

 

コラム 関西急電ヒストリー

晩年は飯田線で余生を過ごしたクモハ52、53形

 東海道本線の京阪神間には電車線、列車線が分かれて運転されていますが、かつては電車線に料金不要の「急行電車」が運転されていました。この「急行電車」こそが現在の新快速の前身です。「急行電車」は競合する私鉄に対抗するため、速達、豪華な車内、二等車の連結など列車並みのサービスが行なわれてきました。なかでも昭和11年登場のモハ52形は当時流行の流線型の前面形状で、茶色(葡萄色)とクリーム色の塗色、砲弾型の前照灯を持ち「流電」の愛称で親しまれ、京阪神間を疾走し「関西急電」として名を馳せました。急行運転は太平洋戦争で一時中止されますが、戦後に復活し、新型の80系電車が投入されます。「急行電車」は昭和33年に快速に変更されましたが、昭和45年の新快速の運転、昭和47年の新快速の153系電車投入、昭和55年の117系電車、そして平成元年の221系、平成7年の223系の新製投入と、関西急電から継承された運転とサービスが今日まで生き続いています。

文・写真:斉木実
※掲載されているデータは平成22年7月現在のものです。

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