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ネーミングの妙と歴史、調べます『国鉄&JR列車名研究所』人と同じように列車にもそれぞれ名前がある。ネーミングが“キラリ”と光る列車たち。その名前に込められた想いと、その列車の歩んできた道のりを調べてみました。

第4回「はやぶさ」

タカ目に属するスピード感のある鳥類、「隼」に因んで命名されました。鋭く長い翼を持つ隼は特急列車らしく、隼は鹿児島の薩摩隼人にも通じ、鹿児島を結ぶ特急に相応しい愛称となりました。また「はやぶさ」は昭和33年の東京〜大阪間ビジネス特急(「こだま」に決定)公募の際、佳作だったものが選ばれています。新幹線化では公募が行なわれ、第7位(応募数3129件)であった同名が選ばれました。スピード感があり親しみやすい愛称であるのが選考理由です。

東北新幹線で返り咲いたE5系「はやぶさ」の顔

第1章 第3の九州特急「はやぶさ」誕生

 昭和31年11月19日。東海道本線全線電化ダイヤ改正に合わせ、東京〜博多間に特急「あさかぜ」が登場します。翌、昭和32年10月に特急「さちかぜ」が登場。東京〜九州間の特急列車が2本体制になると、鹿児島地区からは東京を結ぶ特急列車の要望が強くなりました。そこで、昭和33年10月1日の「あさかぜ」の新型20系客車導入に合わせ、余剰となる一般型客車を使用して車両を捻出し、東京〜鹿児島間に特急9・10列車「はやぶさ」が同日、第3の九州特急としてデビューしました。

 運転時刻は東京発19時00分→鹿児島着17時50分。鹿児島発10時40分→東京着9時30分で、東京〜鹿児島間を約23時間で結ぶ長距離日本一の特急列車となりました。車両は「さちかぜ」を改めた「平和」と同一編成で、鹿児島方からオハニ36、マロネ40×2、スロ54、オシ17、ナハネ11×2、ナハフ11、ナハネ11×4、ナハフ11形客車といった急行スタイルの13両編成で、鹿児島へは二等寝台(昭和35年の等級改正より一等寝台)マロネ40を含んだ7両編成が直通し、5両は博多で回転される運用でした。牽引機関車は東京〜姫路間EF58形電気機関車、姫路〜広島〜下関間C62形蒸気機関車、下関〜門司間EF10形電気機関車、門司〜博多間C59形蒸気機関車(下り)、博多〜鹿児島間C61形蒸気機関車(下り)、鹿児島〜門司間C61形蒸気機関車(上り)と、その1500kmに及ぶ走行距離の半分以上を蒸気機関車により運転が行なわれました。

 昭和34年7月、特急「平和」が「さくら」に改称され同時に20系客車化すると、一般型客車の「はやぶさ」は見劣りするようになりますが、昭和35年7月20日には新製された20系客車に置き換えられ、「はやぶさ」は第3の20系ブルートレインとして一新されます。運転区間も東京〜西鹿児島間となり、編成は1人用ルーメット個室のある一等寝台車(後のA寝台)ナロネ22形、一等座席車(後のグリーン車)ナロ20形を連結した電源車を含めた14両編成で、全車冷房を完備し、深いブルーに3本のクリーム帯の優雅なスタイルで、豪華さが輝きました。

 昭和38年12月、東京〜広島間にEF58形に代わって新型のEF60形500番台が投入され、これにより20系は15両に増結されます。翌、昭和39年6月には二等座席車として連結されていたナハフ20形が寝台車のナハネフ22形に置き換えられ、昭和43年10月改正ではナロ20形が寝台化されオール寝台車となり、個室のナロネ22形は開放式寝台のナロネ21形に変更。博多回転車が長崎まで延長運転されます。この間、熊本電化が達成し、東京〜下関間はEF65形500番台、下関〜門司間がEF30形、門司〜熊本間がED73(またはED75)形電気機関車、熊本以降はDD51形ディーゼル機関車が牽引。長い蒸気機関車の活躍も終焉をついに迎え、「はやぶさ」はさらに走り続けます。昭和45年10月には熊本〜西鹿児島間が電化し、東京〜西鹿児島間はすべて電気機関車により運転されるようになりました。長崎行きの付属編成は簡易電源車マヤ20形を連結し、長崎本線をDD51形により運転されていましたが、昭和50年3月に長崎行きを「みずほ」に譲り、付属編成は熊本回転となり姿を消しました。ブルートレイン「はやぶさ」としてはピークを迎えていた時期でもありました。

20系ブルートレイン時代の「はやぶさ」。テールマークは薄黄色い独特のものが用意された
東京駅を出発し浜松町を過ぎる下り列車。EF65 500番台が牽引し活況を呈する全盛期の姿

第2章 ブルートレイン引退と新幹線デビュー

 昭和50年3月10日。山陽新幹線博多開業ダイヤ改正では、20系客車を体質改善させた新型の14系客車の後継車である24系客車に置き換えられ、B寝台の寝台幅は70cmとなり居住性が大幅に向上しました。翌、昭和51年9月にはゆったりとした二段式B寝台、オール1人用個室のオロネ25形を連結した、新製したての24系25形に改められ、輝きを増します。この頃、東京対九州は新幹線、航空機が戦力を強めてきた時代でしたが、まだブルートレインの需要は高く、指定券は取りにくく、常に人気の高い列車でした。

 昭和55年10月1日改正では、それまで長距離日本一の座を奪っていた「富士」(東京〜西鹿児島間・日豊本線経由、昭和40年10月改正より)が宮崎発着となり、再び「はやぶさ」が長距離日本一列車の栄冠を獲得します。

 昭和60年3月14日改正では、編成中にホテルのロビーのようなフリースペース「ロビーカー」オハ24形が連結され、ソファとテーブルの置かれた室内では長旅をここでゆったりと過ごせ、大変に好評でした。このため編成両数が増加し、東京〜下関間の牽引機関車は“マンモス電機”の異名を持つEF66形に変更されました。またJR化後の平成元年3月には1人用B個室の「ソロ」オハネ25形1000番台が初めて連結され、こちらも人気を博しました。

 しかし、ブルートレインが東京対九州の主力であった時代は、対抗する新幹線、航空機などへのシフトにより終焉を迎えており、需要は少なからずあるものの、利用者は相対的には減少し、列車そのものも根本的な体質改善が行なわれず、「はやぶさ」は低迷し苦境に直面します。平成5年3月には食堂車の営業を止め、売店営業に切り替え。平成9年11月29日改正では、ついに熊本で運転を打ち切り。「はやぶさ」は東京〜熊本間の列車となり、長距離日本一列車の座を「さくら」に譲ります。

 同時に食堂車オシ24形が外されます。「はやぶさ」に限らず、栄光の、誰もが憧れた星の寝台特急は儚くも衰退を歩み始め、平成11年12月4日改正では、なんと「さくら」を併結し、鳥栖で分割併合を行なうといった併結列車になってしまいました。そして、平成17年3月1日改正では併結の「さくら」がまさかの廃止。「はやぶさ」は新たに「富士」と併結して東京〜熊本間を走ります。伝統ある「さくら」の廃止で皮肉にも「はやぶさ」は再び長距離日本一の列車に返り咲きましたが、やはり伝統ある「富士」との併結列車とは、いささか格が落ちた感があり残念でした。

 平成21年3月13日。大勢のファンに見送られ、盛大に出発式が行なわれ「はやぶさ」は東京〜熊本間の定期運行を終了しました。編成に連結されていた1人用A個室オロネ15形3000番台(オロネ25形)は古色然とした室内で、最後までブルートレインの格調と気品を損なわずに保っていました。

 しかし、長い歴史と名誉を誇る「はやぶさ」は、平成22年12月4日に全線開業する東京〜新青森間の東北新幹線の列車名で甦ることになりました。新しい「はやぶさ」は東京〜新青森間2往復、東京〜仙台間1往復運転。営業運転開始は平成23年3月5日を予定しています。最新のE5系車両を使用し、最高運転速度300km/h(平成24年度末には320km/hを予定)、東京〜新青森間を3時間10分で結びます。編成には国内新幹線初となるファーストクラス「グランクラス」が設けられ、車体には「はやぶさ」のシンボルマークが輝きます。

晩年の「富士」との併結列車が根府川鉄橋を渡る。EF66形の力強い牽引が勇壮だった
A個室オロネ25(オロネ15 3000番台)形は昭和51年から平成21年のラストランまで連結された
E5系はダブルカプス型の先頭形状。色彩は「常磐グリーン」「飛雲ホワイト」に「はやてピンク」の帯が入る

「はやぶさ」のヘッドマーク

 機関車の先頭を飾る「はやぶさ」のヘッドマークは、円形に「隼」をあしらったスピード感にあふれるデザインのものがデビュー時から用意され、各機関車に飾られました。九州内のものは「お椀型」の九州独特の丸みを帯びた形をしたもので、本州内とは異なり、「隼」が緑色で円形の縁取りがあり、蒸気機関車を始め、最後のED76形電気機関車に飾られ大変優美でした。

 「はやぶさ」は晩年、「さくら」「富士」との併結列車となりましたが、この際には、牽引機関車にも専用の複合式のヘッドマークが用意されました。デザインもバラエティ豊かで、「さくら」との複合マークは九州内では桜の花びらに隼が飛ぶ、従来の2つのマークを重ねたデザイン、本州内では上下に列車名を並べた新規デザインが使用され、このタイプはブルートレイン最後の「富士」との併結列車でも用いられました。

優美だった「はやぶさ」のヘッドマーク。最後までED76形を飾った

文・写真:斉木実  写真協力:結解学、交通新聞サービス、裏辺研究所(リン)
※掲載されているデータは平成22年12月現在のものです。

書籍紹介

国鉄型車両コレクション

  • ●定 価 1,680円(税込)
  • ●仕 様 A4変型判 160ページオールカラー

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