2011.02.01鉄道テツペディア Vol.26「ICカード乗車券」
ちょっと気になる鉄道雑学
鉄道にまつわる「知ってトクする豆知識」を紹介するコーナーです。今回は、ICカード乗車券について調べてみました。
読み取り装置にピッと軽く触れるだけで、改札を通ることができるICカード乗車券。
あなたの財布にもSuica(スイカ)やICOCA(イコカ)など、1枚は入っていませんか?
キャッシュレスでお出かけ&買い物!
駅の改札で駅員がきっぷに改札ばさみで切り込みを入れる、パスケースに入れた定期券を駅員に見せながら通過する――。ひと昔前ならどこの駅でも見られたごく当たり前の風景でしたが、今、都市圏ではこんなシーンは滅多に見られなくなりました。
従来のきっぷや定期券の常識を一変させたのが、「ICカード乗車券」です。
きっぷや定期券の代わりに1枚のICカード乗車券があれば、読み取り装置に軽くタッチするだけで、電車にも乗れるし、買い物もできる。チャージ機能を使ってあらかじめお金を入れたり、後払いのICカード乗車券を使ったりすれば、いちいち券売機に並ぶこともなくキャッシュレスで出かけられる。
そんな夢のような暮らしの先鞭をつけたのは、2001年11月18日に利用がスタートしたJR東日本の「Suica(スイカ)」でした。
驚異的なスピードで広がったICカード乗車券
かわいいペンギンのキャラクターと「タッチ&ゴー」の合言葉で登場したSuicaは、「Super Urban Intelligent CArd」が名前の由来。「スイスイいけるICカード」という意味も込められています。
Suicaは、財布やパスケースにICカードを入れたままでも自動改札機に軽く触れるだけで改札を通ることができるため、朝夕のラッシュ時でも改札の通過がスムーズになりました。
ほかにも、チャージや定期券のリライト機能、キヨスクや自動販売機、コンビニなどで買い物ができる「電子マネー」が評判を呼び、利用開始から19日目に発行枚数は100万枚を突破。開始から1年も経たない339日目には500万枚に、さらに、2004年10月には1000万枚に到達するなど、あっという間に首都圏の鉄道利用者に広がっていきました。
この勢いに関東圏の私鉄各社も負けてはならじと、2007年にSuicaと相互利用ができる「PASMO(パスモ)」のサービスを開始。わずかひと月で販売枚数300万枚を超え、用意していた在庫がなくなってしまい、定期券を除く新規カードの発売を一時停止するほどの人気を集めました。
後払い方式のICカード乗車券も登場
一方の関西圏でも、2003年にJR西日本が「ICOCA(イコカ)」の利用を開始しました。「IC Operating CArd」が名前の由来で、「ICOCAで行こか」のキャッチコピーがいかにも関西らしいと話題になりました。また、2004年には、関西圏の私鉄などでつくる「スルッとKANSAI協議会」が「PiTaPa(ピタパ・Postpay IC for“Touch and Pay”)」のサービスをスタートしました。
PiTaPaは、SuicaやICOCAなどが、あらかじめいくらかの金額をチャージしておく「プリペイド方式」なのに対して、名前の通り「ポストペイ方式」をとっています。ポストペイ方式は、運賃をすべて後から金融機関で引き落とす“後払い”の方式です。支払いは月ごとに決済するクレジットカードのようなシステムで、利用額ごとに割引サービスを行ないます。
ICOCAとPiTaPaも連携しているので、ICOCAのエリアでチャージすればPiTaPaを使うことができます。
ちなみに、ICカード乗車券が生まれる前提として欠かせなかった「自動改札機」の導入は、関西の私鉄が早かったそうです。1967(昭和42)年に阪急の北千里駅で実用的な磁気式自動改札機第1号の使用が開始されました。1975(昭和50)年代には関西圏ではごく当たり前のものになっていた自動改札機が、首都圏で広がったのは平成に入ってからの1990年代。冒頭のような鉄道駅のきっぷ切りの風景は、関西圏ではいち早く消えたようです。
全国で展開、相互利用にも期待
今年はSuicaがスタートしてからちょうど10年目。今では全国の鉄道会社で次々とICカード乗車券が使用されるようになりました。
JR各社をみると、JR東海は2006年に東海地方の海岸線をイメージしたデザインの「TOICA(トイカ・Tokai IC CArd)」を、JR北海道は2008年にエゾモモンガをキャラクターとした「北」の「Kitaca(キタカ)」をそれぞれスタート。また、JR九州は2009年にカエルと時計がキャラクターの「SUGOCA(スゴカ・Smart Urban GOing CArd )」を発売しました。
さらに、札幌市交通局の「SAPICA(サピカ)」や静岡鉄道・しずてつジャストラインの「LuLuCa(ルルカ)」、福岡市交通局の「はやかけん」、西日本鉄道の「nimoca(ニモカ)」など、各鉄道会社が工夫をこらしたネーミングのICカード乗車券を発行しています。
現在あるJR各社のICカード乗車券(Kitaca、Suica、TOICA、ICOCA、SUGOCA)は、大都市圏の大手私鉄のICカード乗車券も含めて「2013年度の相互利用開始に向けて協議を進める方針」とのこと。今後、ますます新しいサービスや便利さが期待できそうですね。
- ※掲載されているデータは2011年2月現在のものです。
- ※参考:『Suicaが世界を変える』椎橋章夫 東京新聞出版局、『鉄道の基礎知識』所澤秀樹 創元社