2016.11.01鉄道いさぶろう・しんぺいースイッチバックにループ線、これ鉄道の醍醐味! 日本三大車窓のひとつもここにあり(THE列車)
鉄道技術の粋を集めた肥薩線を走る列車
明治42年(1909)、当時の鹿児島本線として、八代(やつしろ)駅から人吉駅、吉松駅を経て隼人(はやと)駅に至る現・肥薩線が全線開通しました。最後に開業した人吉駅〜吉松駅間は高低差が大きいため、ぐるりと旋回するループ線と前進・後退を繰り返して坂を上るスイッチバックを組み合わせて急勾配を克服しています。このような鉄道技術の粋が集められた肥薩線を走る観光列車が「いさぶろう・しんぺい」です。列車名は当時の逓信(ていしん)大臣・山縣伊三郎(やまがた いさぶろう)と鉄道院総裁・後藤新平(ごとう しんぺい)から名付けられました。
大畑(おこば)駅や真幸(まさき)駅のスイッチバック、大畑駅〜矢岳駅間のループ線、そして「日本三大車窓」のひとつに数えられる霧島連山の絶景を楽しめるほか、平成28年3月からは1往復が熊本駅発着となり、球磨川沿いの風景を望むこともできます。
※令和2年7月豪雨の影響による肥薩線不通に伴い、運転を休止しております
鉄道コンシェルジュ ミスターKのとっておき情報
熊本駅から肥薩線へ 川と山の風景を満喫
肥薩線人吉駅〜吉松駅間を1日2往復する「いさぶろう・しんぺい」ですが、現在は1往復が九州新幹線の接続する熊本駅発着で運転されています。肥薩線八代駅〜人吉駅間では球磨川沿いの風景、人吉駅〜吉松駅間では山の風景を満喫できます。九州新幹線を利用すれば博多駅から日帰りでも楽しむことができます。
鉄道の醍醐味がつまった線路を楽しむ
「いさぶろう・しんぺい」は2両編成または3両編成での運転です。自由席は車端のロングシート部分のみで、2人掛けシートや4人掛けボックスシートは指定席です。自由席の場合、座れないこともあるため指定席券の購入をおすすめします。
鹿児島本線として建設されたスイッチバックとループ線
明治42年11月21日に開業した人吉駅〜吉松駅間は、門司駅(現・門司港駅)と鹿児島駅を結ぶ鹿児島本線の一部でした。大畑駅は日本で唯一、ループ線の中にスイッチバックがある駅で、スイッチバックとループ線の両方を体験することができます。このほか、SL時代に使われたホーム上の洗顔用湧水盆やレンガ造りの給水塔の一部など、貴重な鉄道遺産もあります。
日本三大車窓のひとつ、えびの盆地と霧島連山を望む!
旧根室本線狩勝峠や篠ノ井線姨捨(おばすて)駅付近とともに「日本三大車窓」のひとつに数えられるのが、えびの盆地と霧島連山の雄姿を一望できる肥薩線の矢岳越えです。車窓に絶景が映し出されるのは、山縣伊三郎の「天険若夷(てんけんじゃくい)」と後藤新平の「引重致遠(いんじゅうちえん)」の扁額が残る矢岳第一トンネルと真幸駅の間で、パノラマ風景を楽しめるように列車は一時停車します。
人吉駅の駅弁立ち売り 窓を開けて駅弁が買える!
かつては全国の主な駅のホームで見ることができた駅弁の立ち売りですが、今は数駅のみに残る懐かしい光景となりました。肥薩線人吉駅の駅弁店「やまぐち」では、今なおホーム上での駅弁の立ち売りを行なっており、窓を開けることができる「いさぶろう・しんぺい」の車両では、窓から声をかけて駅弁を買うという貴重な体験ができます。
片道新幹線が利用できる「肥薩線のんびりきっぷ」
熊本駅〜八代駅〜人吉駅〜隼人駅〜鹿児島中央駅間などのフリー区間が3日間乗り降り自由となるきっぷで、ゆきとかえりのどちらか片道は新幹線、片道が肥薩線経由。フリー区間内では新幹線と「SL人吉」を除く特急・普通列車の普通車指定席が利用でき、肥薩線の旅に便利です。
列車情報
運転日 | 毎日 |
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運転区間 | 鹿児島本線・肥薩線 熊本駅・人吉駅〜吉松駅間 |
運転時刻 |
「いさぶろう1号」 熊本駅08:31発 → 吉松駅11:22着 「いさぶろう3号」 人吉駅13:22発 → 吉松駅14:48着 「しんぺい2号」 吉松駅11:49発 → 人吉駅13:05着 「しんぺい4号」 吉松駅15:16発 → 熊本駅18:18着 |
著者紹介
- ※文/ミスターK(結解喜幸)
- ※写真/ミスターK(結解喜幸)、熊本県
- ※掲載されているデータは2016年11月現在のものです。
- ※運転日・運転区間等は変更となる場合があります。