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2022.04.12鉄道直流電化区間の特急列車で活躍した 183・189系特急形電車

ボンネットスタイルの181系の後継車として、首都圏や関西圏の直流電化区間で活躍した183系・189系特急形電車の足跡を紹介します。

直流特急形電車とは?


上野〜新潟間を結んだ181系特急「とき」 上野〜新潟間を結んだ181系特急「とき」

1958(昭和33)年11月1日、東海道本線の東京〜大阪間を6時間50分で結ぶビジネス特急「こだま」が登場。これまでの国鉄の特急列車はすべて客車列車でしたが、東海道本線全線電化を機に初の電車特急の運転が計画され、ボンネットスタイルの151系特急形電車が誕生しました。東京〜大阪・神戸間を1日2往復する特急「こだま」は爆発的な人気を呼び、1960(昭和35)年には客車特急「つばめ」の電車化が行なわれるなど、新幹線開業前の東海道本線のエースとして活躍しました。

また、上越線の特急「とき」用として勾配区間に対応した161系や1965(昭和40)年から電動機の出力をアップした181系が製造されました。その後の直流電化区間では181系特急形電車が主役となり、上越線の特急「とき」や信越本線の特急「あさま」、中央本線の特急「あずさ」、山陽本線の特急「しおじ」などで活躍しました。


上野〜長野間を結んだ181系特急「あさま」 上野〜長野間を結んだ181系特急「あさま」

1972(昭和47)年7月、房総方面各線の直流電化および東京地下駅が完成するのに合わせ、新たに直流区間用の特急形電車が製造されることになり、急行用車両と同じ1車両2ドア採用の183系が誕生。信越本線の横川〜軽井沢間の協調運転用として189系、豪雪地帯を走る上越線用として183系1000番台が登場。さらに首都圏の通勤輸送も担当する185系、振り子装置を採用した381系などの直流特急形電車が製造されました。


新宿〜松本間を結んだ181系特急「あずさ」 新宿〜松本間を結んだ181系特急「あずさ」

JR化後は各社で路線に合わせた性能やサービス設備がある新型車両が投入され、JR東日本では251系(※)・253系・255系・E257系・E351系(※)、JR東海では285系・371系(※)・373系・383系、JR西日本では283系・285系、JR四国では8000系が誕生し、直流電化区間の特急列車で活躍を続けています。

※定期運行終了

房総電化完成と東京地下駅開業で登場 183系特急形電車


内房線を走る183系特急「さざなみ」 内房線を走る183系特急「さざなみ」

1972(昭和47)年7月15日、総武本線東京〜錦糸町間と東京地下駅の開業および外房線(当時は房総東線)の安房鴨川電化に合わせ、房総エリアにも特急列車が運転されることになりました。当時、直流電化区間では1955(昭和30)年代に設計された151系の車体を継承する181系特急形電車が活躍していましたが、東京地下駅の乗入れでは車両火災対策の不燃化構造(A-A基準)が必要不可欠であったため、181系の後継車となる183系特急形電車が製造されることになりました。

車体の基本構造は181系およ び交直両用の485系をベースにしていますが、乗降客の乗り降りをスムーズにする ため、特急形電車では初の1車両2ドアを採用。また、普通車の座席を簡易リクライニングシートとし、さらにゆったりと利用できるようになって います。       


中央本線を走る183系特急「あずさ」 中央本線を走る183系特急「あずさ」

夏は海水浴客などの利用が多い房総エリア用として登場しましたが、房総エリアの閑散期には首都圏エリアを発着する臨時列車や団体列車などに使用するため、信越本線の横川〜軽井沢間の急勾配や中央本線・上越線の勾配区間に対応したブレーキ装置および豪雪地帯における耐寒耐雪構造の採用など、幅広いエリアで運用できる汎用性のある車両となっていました。

なお、JR化後は新系列の電車の登場によって活躍の場も少なくなり、首都圏エリアの臨時列車や団体列車などに使用されていましたが、2015年に引退となりました。

上越線の特急「とき」用として開発された 183系1000番台


上越線を走る183系1000番台の特急「とき」 上越線を走る183系1000番台の特急「とき」

1973(昭和48)年12月から1974(昭和49)年2月にかけて上越地方を襲った豪雪は、181系を使用していた特急「とき」の運休という事態を招き、181系の置き換えが急遽行なわれることになりました。すでに183系0番台をベースにして信越本線横川〜軽井沢間の協調運転が可能な189系が設計されていたため、この車両に耐寒耐雪構造を施した183系1000番台が登場しました。183系0番台では正面に貫通扉がありましたが、この扉の隙間から雪などが進入するため、扉を設置しない非貫通スタイルとなりました。


総武本線を走る183系1000番台の特急「しおさい」 総武本線を走る183系1000番台の特急「しおさい」

1974(昭和49)年12月から上越線上野〜新潟間の特急「とき」に投入され、その性能をフルに発揮して豪雪の時期を無事に乗り切りました。また、準急「日光」用として登場した157系で運転されていた東海道・伊東線の特急「あまぎ」や吾妻線直通の特急「白根」も183系1000番台に置き換えられています。

なお、1982(昭和57)年11月の上越新幹線大宮〜新潟間の開業まで上越線のエースとして活躍しましたが、新幹線開業後は房総エリアへの転出や189系への改造などが行なわれました。

信越本線横川~軽井沢間の協調運転に対応 189系特急形電車


上野〜長野・直江津間を結ぶ189系特急「あさま」 上野〜長野・直江津間を結ぶ189系特急「あさま」

今は廃止となった信越本線横川〜軽井沢間は、急勾配を克服するためEF63形電気機関車を連結して運転されていました。181系では客車のように電気機関車に牽引・推進されて走るため編成両数も最大8両に制限されるため、電気機関車と協調して運転できる特急形電車が製造されることになりました。

先に登場した183系1000番台は189系の設計をベースにしたもので、183系1000番台に協調運転設備を追加したスタイルとなっています。1975(昭和50)年7月から信越本線の特急「あさま」「そよかぜ」が181系8両編成から189系10両編成へと順次置き換えられ、輸送力の増強と車内サービスの向上が図られています。


碓氷峠ではEF63形と協調運転する189系特急「あさま」 碓氷峠ではEF63形と協調運転する189系特急「あさま」

189系は上野寄りにEF63形電気機関車を連結するため、上野寄りのクハ189は協調運転用の総括制御用ジャンパ栓がある500番台で、長野寄りの0番台と上野寄りの500番台の2タイプの先頭車両があります。

なお、1997(平成9)年10月1日の長野行新幹線の開業により信越本線横川〜軽井沢間は廃止となり、189系の本来の目的である協調運転は終了。その後は信越本線長野〜直江津間の「妙高」や首都圏エリアの臨時列車、団体列車などで活躍し、2019年に引退しました。

福知山線・山陽本線用の485系改造車 183系700・800番台


赤帯付きの国鉄色で走る183系特急「北近畿」 赤帯付きの国鉄色で走る183系特急「北近畿」

1986(昭和61)年11月に直流電化が完成した福知山線宝塚〜福知山間・山陰本線福知山〜城崎間では、西日本エリアに直流区間用の183系が配置されていなかったため、紀勢本線の特急「くろしお」に使用されていた交直両用の485系を転用して特急「北近畿」の運転がスタートしました。

1991(平成3)年9月1日の七尾線直流電化では、直流用の113系を改造して交直両用の415系800番台を投入することになり、福知山線・山陰本線の直流区間で使用している485系の交流機器を撤去して再利用。これにより485系を直流専用とした183系700・800番台が誕生することになりました。

外観は交直両用の485系とほぼ同じですが、直流専用であることを区別する必要から赤い帯1本が窓下に追加されています。


JR西日本オリジナル塗装の183系特急「きのさき」 JR西日本オリジナル塗装の183系特急「きのさき」

最初に「北近畿」用として改造された車両は、グリーン車と普通車の合造車となるクロハ183形を連結した4両編成で、国鉄色に赤い帯を1本追加した塗装です。また、1996(平成8)年3月の山陰本線電化ではグリーン車のクロ183形を連結した6両編成が登場し、JR西日本のオリジナル特急色となっています。

改造前の形式(485系・489系)および番台によって多彩な番台区分があるのが特徴で、2003(平成15)年には併結運転の際に中間車となるクハ183形およびクモハ183形の200番台も登場。なんと先頭車両でもクハ183形200・600・700・750・800・850番台、クモハ183形200番台、クロ183形2700・2750番台、クロハ183形700・800番台という11タイプがありました。

JR東日本で活躍! 183・189系特急形電車(JR東日本)


旧「あずさ」色で活躍した183・189系 旧「あずさ」色で活躍した183・189系

国鉄からJR東日本に引き継がれた183・189系は、房総各線の特急列車および信越本線の特急「あさま」や中央本線の特急「あずさ」で活躍を続けていました。しかし、旧来の設備では台頭する高速バスとの勝負に勝てないため、指定席車の車内設備をデラックス仕様としたグレードアップ改造を行なうことになり、1987(昭和62)年から特急「あずさ」用8本、1990(平成2)年から特急「あさま」用7本が外部塗色も変更してデビューしました。

その後は長野新幹線の開業や新系列車両への置き換えによる廃車が行なわれ、最後の定期列車として運転されていた信越本線長野〜直江津間の「妙高」には、旧「あさま」色の6両編成が使用されていました。


東武線直通用の485系塗装を施した183系「彩野」 東武線直通用の485系塗装を施した183系「彩野」

このほか、旧「あずさ」色の183・189系6両編成や、国鉄色の183・189系6・8・10両編成、東武線直通用の485系塗装を施した183系8両編成の「彩野」があり、首都圏エリアの「ホリデー快速」や「ムーンライトながら」、「ムーンライト信州」など臨時列車や団体列車を中心に活躍をしていました。

先頭車の全面スタイルも多彩 183系特急形電車(JR西日本)


ステップ付きのドアが特徴の183系特急「まいづる」 ステップ付きのドアが特徴の183系特急「まいづる」

JR西日本の183系はすべて交直両用の485・489系から改造した車両で、外観のスタイルは種車によって異なっているため、先頭車両だけでも11の番台区分があります。

編成の種類は3タイプで、JR西日本オリジナル塗色で1号車にグリーン車を連結した4+3両の7両編成、同じく1号車にグリーン車を連結した4両編成、国鉄特急色に赤い帯を巻いた塗色で1号車にグリーン&普通車の合造車を連結した4・6両編成が活躍しました。

山陰本線・福知山線の特急「はしだて」「きのさき」「まいづる」「たんば」「文殊」「北近畿」の各列車に運用されていますが、4+3の7両編成は京都駅発着の併結列車「きのさき」+「まいづる」、「たんば」+「まいづる」、「はしだて」+「まいづる」に使用。中間の4・5号車には北陸本線の特急「スーパー雷鳥」の併結列車で活躍した貫通タイプの運転台付きクハ183形200番台とクモハ183系200番台が組み込まれています。


山陰本線京都口で活躍する183系特急「たんば」 山陰本線京都口で活躍する183系特急「たんば」

なお、2011年(平成23)年春には新系列の287系特急形電車の投入されたため、交直両用の485・489系を改造した183系も廃車となりました。

  • 文:結解 喜幸
  • 写真:結解 学
  • 本記事は2009年11月初出のものを再構成しました
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