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2022.04.15鉄道夜行列車の快適な旅を演出する! 581・583・285系 寝台電車

世界初の寝台電車として登場した581・583系電車と、新時代にふさわしい個室中心のA・B寝台を取り揃えた285系電車を紹介します。

世界初の寝台電車とは?


九州で顔を合わせる583系と485系 九州で顔を合わせる583系と485系

昭和30年代後半から国鉄の輸送力増強に伴う車両の増備を行なっていましたが、車両増備や車両基地拡充にかかる費用など、解決しないといけない問題点がありました。そこで考えられたのが、昼間は座席車、夜間は寝台車として使用できる「昼夜兼行スタイル」の電車でした。

電車は床下のモーター音や振動などが客車に比べて大きいため、世界各国の寝台列車では客車の使用が常識でした。しかし、客車列車よりもスピードが速いという電車の特性や、昼間は特急列車として運用できる利便性が当時の国鉄にとって必要不可欠であり、1967(昭和42)年9月、世界初となる本格的な寝台電車581系が誕生しました。


座席車として使用できる583系 座席車として使用できる583系

先頭車両のクハネ581、中間車両は電動車のモハネ580+モハネ581と付随車のサハネ581、食堂車のサシ581が製造され、12両編成で運用。これまで客車のB寝台(当時は二等寝台)は車内の片側に通路を配置し、ベッドは枕木方向に設置されていました。

581系電車では昼間の座席使用を考慮して中央に通路を配置し、左右のボックスにベッドが進行方向を向いた三段式寝台を設置することになりました。従来の客車の寝台幅が52cmであるに対し、581系の下段はA寝台車(当時は一等寝台)と同等の寝台幅106cm、上・中段でも寝台幅70cmとなり、寝台電車はゆったり利用できると好評を博したのです。

1968(昭和43)年の増備車から583系になりましたが、これは581系が直流および西日本の交流60Hz専用車であったため、東北エリアでも使用できるよう50/60Hz供用となったものです。また、昼間の特急列車に必要不可欠なグリーン車のサロ581が製造され、関西~九州間および首都圏~東北間において昼夜兼行で活躍するようになりました。

関西と九州を結んで昼夜兼行の活躍 寝台特急「月光」&特急「みどり」


新大阪と博多を結んだ寝台特急「月光」 新大阪と博多を結んだ寝台特急「月光」

1967(昭和42)年10月1日、世界初となる寝台電車581系12両編成を使用し、新大阪~博多間の寝台特急「月光」、新大阪~大分間の特急「みどり」が誕生。車両は九州の南福岡電車区に配置され、博多駅発の寝台特急「月光」が新大阪駅に翌朝到着後、寝台を解体・座席をセットして大分行きの特急「みどり」に使用。翌日は大分発の特急「みどり」が新大阪駅に到着後、寝台をセットして博多行きの寝台特急「月光」になるという運用でした。

これにより、従来の寝台列車は昼間は大阪に滞在していましたが、すぐに昼間の特急列車として運用できるため、大阪滞在中の車両基地の確保が不要(寝台の解体・セットは通勤時間帯で車両が出払っている車両基地を利用)になりました。


座席を前に出してB寝台下段をセット 座席を前に出してB寝台下段をセット

従来の寝台車よりも寝台幅が広く、通路を中央に挟んだ両側に進行方向を向いたベッドが配置される581系は好評を博し、翌年の1968(昭和43)年10月1日改正では大量に増備されました。

関西~九州間では、名古屋~博多間の寝台特急「金星」&名古屋~熊本間の特急「つばめ」、新大阪~博多間の寝台特急「月光1・2号」&特急「はと1・2号」&新大阪~熊本間の寝台特急「明星」が昼夜のペアを組んで活躍。その後は、京都~西鹿児島間の寝台特急「きりしま」や寝台特急「なは」、鹿児島本線博多~西鹿児島間の特急「有明」などにも運用されましたが、1975(昭和50)年3月10日の山陽新幹線博多開業で山陽本線の昼間の特急列車が廃止となり、昼夜兼行スタイルから寝台専門・昼間はアルバイト(短中距離の特急列車)という運用になりました。なお、関西~九州間の583系を使用した寝台列車は、1984(昭和59)年2月1日改正で消えてしまいました。

上野と青森を結んだ老舗の寝台特急「はくつる」&「ゆうづる」


東北本線経由の寝台特急「はくつる」 東北本線経由の寝台特急「はくつる」

東北本線の全線複線電化完成などに伴う1968(昭和43)年10月1日ダイヤ改正では、東北エリアの交流50Hzに対応した583系が誕生し、電動車はモハネ582+モハネ583となりました。東北本線上野~青森間の寝台特急「はくつる」、常磐線経由の寝台特急「ゆうづる(下り1号・上り2号)」、昼間は特急「はつかり1・2号」の2往復が583系13両編成で運転され、青函航路を介した北海道方面への旅も快適さが大幅にアップしました。

特に寝台幅が106cmの下段は小さな子ども連れの乗客に人気があり、寝台券の発売と同時に売り切れるという人気ぶりでした。このため、15両編成に増強することも検討され、1970(昭和45)年にはクハネ581形の電動発電機の容量をアップし、客室の拡充(座席8人・寝台6人分増加)が図られたクハネ583形が登場。15両化は実現しませんでしたが、両端で座席16人分・寝台12人分が多いクハネ583系は輸送力増強に貢献しました。


常磐線経由の寝台特急「ゆうづる」 常磐線経由の寝台特急「ゆうづる」

1972(昭和47)年3月15日改正では、上野~青森間の寝台特急「ゆうづる」3往復、寝台特急「はくつる」1往復、そして特急「はつかり」3往復、常磐線経由の特急「みちのく」1往復、さらに上野~仙台間の特急「ひばり」1往復にも運用されるようになり、昼夜兼行の特性を生かした効率的な運転が行なわれていました。

1982(昭和57)年11月15日の東北新幹線大宮駅本格開業で昼間の特急列車は盛岡~青森間に短縮されましたが、寝台特急「ゆうづる」3往復&「はくつる」2往復が健在。しかし、1993年12月1日改正で「ゆうづる」が廃止となり、寝台特急「はくつる」2往復が残りましたが、B寝台は二段式客車の時代になっていました。このため、1994年12月3日改正で三段式の583系を使用した寝台特急「はくつる」は24系客車に置き換えられ、583系を使用した寝台特急は消滅しました。

昼行の特急列車としても活躍 特急「はつかり」&「雷鳥」


上野と青森を結んだ特急「はつかり」 上野と青森を結んだ特急「はつかり」

昼夜兼行で開発された581系は、昼間の特急列車として運用することが前提でしたが、当時の特急列車は2人掛けのクロスシートが当然でしたので、4人掛けのボックスシートは急行並みのサービスと思われていました。

しかし、天井の高い空間やワイドな座席はゆったり利用するのに最適なもので、4人掛けのボックスシートは違和感なく受け入れられました。当初は昼夜でペアを組んで活躍していましたが、新幹線の延伸によって夜行列車の活躍の場が少なくなると、昼間の特急列車専用として運用されるようになりました。

上野~青森間を結んでいた特急「はつかり」は東北新幹線開業により、盛岡~青森間の新幹線接続特急となり、485系とともに活躍。夜行急行「津軽」に座席車のみの編成で使用したほか、冬のスキー列車「シュプール号」など臨時列車でも活躍するようになりました。


大阪と富山を結んだ特急「雷鳥」 大阪と富山を結んだ特急「雷鳥」

一方、山陽新幹線博多開業では名古屋~富山間の特急「しらさぎ」に間合いで運用されるようになり、北陸路でもその姿が見られるようになりました。1978(昭和53)年10月2日改正では、大阪~金沢・富山間の特急「雷鳥」4往復が583系で増発され、その後は大阪~富山間の夜行急行「立山」に運用されるなど、関西と北陸を結ぶルートで活躍するようになりました。

しかし、特急列車のリクライニングシート採用などのサービス向上および夜行列車の廃止などで余剰となった581系が約150両も発生したため、1984(昭和59)年2月1日改正では583系を通勤用車両に改造した九州エリア用の715系が誕生。さらに1985(昭和60)年3月14日改正では東北エリア用の715系1000番台、北陸エリア用の419系が登場し、ローカル列車に新たな活躍の場を移すようになりました。

583系最後の活躍 急行「きたぐに」&特急「ふるさとゴロンと号」


大阪と新潟を結ぶ夜行急行「きたぐに」 大阪と新潟を結ぶ夜行急行「きたぐに」

華やかな活躍を続けていた世界初の本格的な寝台電車583系でしたが、昼間の特急列車の4人掛けボックスシートや寝台特急列車の三段式寝台は時代のニーズに合わず、新たな道を模索する時代となりました。その第1陣となったのが1985(昭和60)年3月15日改正で客車を置き換えて誕生した大阪~新潟間の急行「きたぐに」で、サハネ581形の上・中段のベッドを撤去し、二段式に改造したA寝台のサロネ581形が投入されました。

関西地区では10両編成6本が急行「きたぐに」1往復のほか、臨時列車用として残ることになり、JR西日本オリジナル塗色を採用。外観のお色直しは2回行なわれ、1997年9月からはニューカラーで登場しました。当時、関西と北陸・新潟エリアを結ぶ唯一の夜行列車として利用客も多く、1~4号車は普通車自由席(座席で使用)、6号車はグリーン車、7号車はA寝台車、5・8~10号車はB寝台車でした。


急行「きたぐに」のA寝台 急行「きたぐに」のA寝台

一方、JR東日本の583系は1994年12月3日改正で定期運用がなくなり、臨時列車に運用されるようになりました。2009年時点では、秋田と仙台に国鉄色の583系6両編成が各1本の計12両在籍しており、この冬も上野~青森間の臨時特急「ふるさとゴロンと号」(指定席特急料金でベッドに横になれるゴロンとシートで運用)に使用されていました。

その後、リバイバルトレインなどの臨時列車でも活躍し、昼夜兼行で活躍した往時の姿を見せていましたが、2017年にすべての583系が引退となりました。

個室寝台中心の285系寝台電車 寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」


285系「サンライズエクスプレス」 285系「サンライズエクスプレス」

国鉄時代は二段式や三段式の開放寝台がメインであったB寝台車ですが、次第にプライベート空間でゆったりできる個室を望む声が時代のニーズとして高まりました。各地を走るブルートレインにもB寝台1人用・2人用個室が連結されるようになりましたが、24系客車からの改造車のみで新たに製造されることはありませんでした。

このため、車両の老朽化も問題となり、東京~出雲市・高松間を結ぶ寝台特急「出雲」「瀬戸」を新たに開発する寝台電車に置き換えることが計画されました。内装は大手住宅メーカーが担当するなど、居住性を重視した個室寝台中心の車両になっています。

これまでのブルートレインは「夜」をイメージしたものでしたが、「サンライズエクスプレス」の愛称が付けられた285系は、「サンライズ」の文字通り「夜明け」をイメージした明るい塗色になっています。


A寝台1人用個室「シングルデラックス」 A寝台1人用個室「シングルデラックス」

1998年7月10日から東京~出雲市間の寝台特急「サンライズ出雲」および東京~高松間の寝台特急「サンライズ瀬戸」で運転を開始しましたが、オール個室のA・B寝台は人気の的となりました。さらに、運賃と指定席特急料金で乗車できる「ノビノビ座席」(カーペット敷き・二段構造で横になって利用できる)を連結。ライバルの夜行高速バスに対抗したリーズナブルなサービスも行なわれています。

A寝台は洗面所やテレビモニターを設置した1人用の「シングルデラックス」、B寝台は2人用の「サンライズツイン」、1・2人用の「シングルツイン」(二段式ベッドの上段が使用できる)、1人用の「シングル」「ソロ」の5タイプの個室を用意。このほか、シャワー室やミニサロンが設置されるなど、快適な夜行列車の旅を楽しめるものになっています。


  • 文:結解 喜幸
  • 写真:結解 学、ARIC
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