『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

  • mixiチェック

長距離列車旅を快適にした名役者 祝!国内寝台車誕生110周年 日本初の寝台車が誕生したのは、明治33年(1900)4月8日のことでした。今年で誕生100周年を迎えた寝台車にスポットを当てて紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

What's 修学旅行専用列車とは?

 学校行事の一環として行なわれる修学旅行は、明治14年(1881)に栃木県の第一中学校が上野で開催された「第二回勧業博覧会」を教員引率で見学に行ったのがはじまりとされています。その後、修学旅行は高等小学校、旧制中学・高等学校などで行なわれるようになり、戦況悪化によって昭和18年に中止されるまで客車列車が使用されていました。

 戦後は昭和23年8月20日に国鉄の「生徒5割引」の学生団体運賃が設定されたことにより、本格的な修学旅行が復活するようになります。当時は国鉄の車両不足が深刻な状況にあったため、旧形客車をかき集めた団体列車や定期列車への増結による修学旅行列車が仕立てられていました。

 しかし、ドアの開閉が手動式の旧形客車では生徒がデッキから転落する事故などもあり、自動ドア方式の電車による運転が望まれるようになったのです。そこで、昭和33年6月に実施された東京地区から京都への修学旅行に山陽本線姫路電化用として増備された80系電車を充当したところ、教職員や生徒から好評を博すことになりました。この実績に基づいて東京都の学校関係者が国鉄に対し「修学旅行専用電車の開発」を要望したのが、初の修学旅行専用車両155系電車誕生のきっかけとなりました。

 当時の国鉄は車両増備などに伴う予算不足が問題となっていたため、三菱銀行と日本交通公社が引き受けた利用債「特別鉄道債権」で資金調達を行ない、限られた予算内で修学旅行に最適な車両設計が行なわれることになりました。東海道本線の準急列車用に開発された153系電車をベースとし、コストダウンを図るために台車や通風器を101系通勤電車と同様のものを採用。修学旅行シーズン以外は臨時列車に運用することを考慮し、中央線の狭小トンネルに対応できるように低屋根スタイル(パンタグラフの折りたたみ高さを低くする)になりました。

 また、乗降頻度が低いことからドア幅を151系特急用電車と同様の700mm幅として客室内のスペースを広く取っているほか、より多くの座席定員を確保するため、片側を3人掛けとした3+2席配置のボックス席を設置しています。

 なお、153系はオレンジとグリーンのツートンカラーですが、155系では修学旅行色と呼ばれるようになる朱色(朱色3号)と黄色(黄5号・155系登場時は黄1号)のツートンカラーになっています。

品川駅で出発記念式典を行なう日本初の修学旅行専用155系電車使用の「ひので」号

公募によって採用された明るいツートンカラーの修学旅行色で運転される155系

日本初の修学旅行専用列車155系「ひので」「きぼう」運転開始

 昭和34年4月20日、日本初の修学旅行専用車両となる155系電車を使用して、品川〜京都間に関東地区の中学生を乗せた「ひので」、神戸・大阪・京都〜品川間に関西地区の中学生を乗せた「きぼう」が運転を開始しました。いずれも往路は昼行列車、復路は夜行列車の運転時刻が設定され、現地での滞在時間を最大限に確保。関東地区の場合は夕方まで京都に滞在し、翌朝の品川到着後に解散という時間設定になりました。これは各1編成しかない車両を効率的に運用できるもので、学校側と国鉄側の要求が満たされたものでした。

 155系電車は修学旅行専用として設計されたため、3人掛けの6人ボックス席と2人掛けの4人ボックス席を配置。蛍光灯や荷物棚も枕木方向に設置し、各座席上に荷物を置けるスペースを確保しています。全ボックス席に着脱式の大型テーブルを設置し、食事や学習時に使用できるようになっています。また、洗面所も2人並んで使用できる洗面台を配置し、水筒への水汲みもできる飲料水タンクや大型ゴミ箱も設置。トイレは男子用の小便所も配置し、一般の列車よりも利用頻度が高い設備の充実が図られました。

 また、教育の一環として乗車することを考慮し、引率教師が使用する放送装置やテープレコーダーの設置、および生徒が車内清掃をするためのホウキとチリトリの備え付けなども行なわれ、まさに“動く教室”として利用できる車両になっていました。なお、夜行列車として使用する時のために客室内を減光する装置も備えています。

中京地区の修学旅行専用列車159系「こまどり」が登場

 関東・関西地区の修学旅行専用車両155系電車の成功をみた中京地区の学校関係者からも専用車両の導入が要望されましたが、昭和34年9月に中京地区を襲った伊勢湾台風により利用債の引き受けが1年延期となりました。このため、昭和35年4月20日から運転を開始した大垣〜品川間の「こまどり」は、準急・急行用の153系電車がピンチヒッターとして登場。修学旅行シーズン以外は臨時準急「ながら」として運転される往復昼行列車のダイヤが組まれました。

 昭和36年3月、中京地区用の修学旅行専用車両として159系電車が登場。155系から159系に形式変更されましたが、これは中京地区の修学旅行専用列車の運転期間が短く、臨時列車の運用期間の方が長くなるため、座席配置を153系と同じ4人ボックス席に変更したためです。外観スタイルなどは155系と同じですが、車内サービス設備では男子用小便所の廃止や通常の荷物棚の設置など、一般の準急・急行列車にも運用できる車両となっています。

 昭和36年4月9日から大垣〜品川・東京間の「こまどり」で運転を開始し、修学旅行シーズンが終了すると東京〜大垣間の臨時準急「ながら」として活躍。昭和37年秋からは中京地区と山陽地区を結ぶ「わかあゆ」にも使用されることになりました。

山陽地区の修学旅行専用列車167系「なかよし」「友情」「わこうど」登場

 昭和40年7月、165系をベースとした山陽地区の修学旅行専用車両として167系が登場しました。東京〜大阪間の増強も兼ねた修学旅行専用車両の増備となり、昭和40年10月から品川〜京都間の「わかくさ」、明石〜品川・東京間の「わかば」として運転を開始。昭和41年4月からは小学生を対象とした下関〜広島間の「なかよし」、中学生を対象とした下関〜京都間の「友情」、高校生を対象とした下関〜品川間の「わこうど」の運転が開始されました。

 165系急行用電車をベースとしていますが、ドア幅は特急用電車と同様の700mmで、車内には着脱可能な大型テーブルを配置。一般の列車に使用することを前提としているため、165系と同様の車内設備(デッキ部に飲料水タンクなどは設置)になっています。下関地区の修学旅行列車が運転されない期間には、東京〜下関間の夜行臨時急行「長州」として運転されることになりました。

 これにより、各地で修学旅行専用車両が活躍をすることになりましたが、昭和45年3月16日に東海道新幹線に修学旅行専用列車を初めて設定。昭和46年3月から新幹線を利用した修学旅行に順次移行されることになり、同年10月16日の大阪発の「きぼう」、10月26日の品川発の「ひので」をもって廃止となりました。昭和50年3月10日には山陽新幹線が博多まで延長開業となり、最後まで残っていた167系の「なかよし」「友情」「わこうど」も廃止となり、時刻表上から「修学旅行列車」の文字が消滅しました。

 なお、車齢が若い167系は一般の急行列車用として残ることになり、その後に冷房改造や165系と同じ車内設備への変更、湘南色への塗装変更が行なわれました。さらにアコモデーションを改造してオリジナル塗色となり臨時列車で活躍しましたが、平成15年までに全車が廃車となっています。

キハ58・28系800番台が登場「おもいで」「とびうめ」運転開始

 非電化区間においても旧形客車を使用した修学旅行列車が運転されていましたが、昭和37年4月9日に急行用気動車のキハ58系をベースとした修学旅行専用車両のキハ58・28系800番台が登場。東北地区〜上野間の修学旅行列車として「おもいで」が運転を開始しました。159系と同様に一般の列車にも使用できる4人用ボックス席を配置していますが、使用頻度が高い洗面台などのスペースは、ほかの修学旅行専用車両に準じています。外部塗色は急行用気動車のクリーム色よりも濃い黄色となり、一般の車両と区別されていました。また、昭和38年4月10日には北九州地区〜京都間の「とびうめ」が運転を開始。東北と北九州エリアでも修学旅行専用車両による快適な旅が楽しめるようになりました。

 しかし、東北地区では在来線の特急列車などを使用することになったため、昭和48年4月に「おもいで」は廃止。昭和49年4月には「とびうめ」も廃止となり、非電化区間用として活躍したキハ58・28系800番台は本来の役目を終了しました。その後も冷房化されることはなく、国鉄時代に全車廃車となっています。

最初に登場した155系は3+2席のボックスシートを配置して座席定員の増加を図っている

関東地区の小学生の日光方面への団体専用列車としても活躍することになる155系

昭和40年代に165系をベースとして誕生した高運転台スタイルの167系

修学旅行シーズンになると中京地区の159系や山陽地区の167系が品川駅で顔を揃えた

4人用ボックス席を採用した中京地区の159系は153系の編成にも使用されていた

修学旅行の用途が無くなった後は湘南色となって一般の急行列車でも活躍した159系

アコモ改善にあわせてアイボリーの車体にオレンジ・赤・黄緑の帯を巻いた167系

非電化区間用として登場したキハ58・28系800番台。写真はJR東日本の塗装再現車両

 

※掲載されているデータは平成22年4月現在のものです。

バックナンバー

このページのトップへ