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長距離列車旅を快適にした名役者 祝!国内寝台車誕生110周年 日本初の寝台車が誕生したのは、明治33年(1900)4月8日のことでした。今年で誕生100周年を迎えた寝台車にスポットを当てて紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

What's 食堂車のはじまり?

 明治32年(1899)年5月25日、神戸〜三田尻(現在の防府)間の運行をしていた私鉄の山陽鉄道(現在の山陽本線)では、官設鉄道直通の京都〜三田尻間の急行列車に食堂付き一等車を連結しました。これが日本初の食堂車で、一等旅客のためのサービス設備として導入されたものでした。明治34年12月15日には官設鉄道の新橋〜神戸間の急行107・117・106・118列車に食堂車が連結されましたが、国府津(こうづ)〜沼津間(現在の御殿場線)および馬場〜京都間(現在は廃線・稲荷〜京都間は奈良線に転用)は急勾配区間であったため、同区間では食堂車を切り離して運転されていました。

 明治36年1月20日改正からは、新橋〜神戸間の急行1・2列車の全区間、急行3・4列車の新橋〜山北・米原〜神戸間で食堂車を連結しましたが、当時の食堂車は一・二等旅客専用の洋食堂車で、一般の三等旅客には無縁の存在でした。

 食堂車の登場当時は洋食専門でしたが、明治39年4月1日から新橋〜神戸間の三等急行列車に初の和食堂車が登場。このほか、急行5・6列車にも和食堂車が連結されるようになり、車内で調理した温かい料理を食べられる食堂車が誰でも利用できるようになりました。一・二等旅客は洋食堂車、三等旅客は和食堂車と区分されていましたが、これは日常的な生活習慣などを考慮したもので、和食堂車でも一般に普及している洋食は提供されていました。

 明治45年6月15日には新橋〜下関間に一・二等特別急行列車の運転が開始され、展望車や洋食堂車が連結されました。使用されたのは定員26名の洋食堂車スシ10150形で、4人掛けと2人掛けのテーブルが各窓側に配置。当時は欧米の習慣に習って食堂内禁煙とし、車端には定員6人の喫煙室が設置されていました。なお、当時の三等旅客のための和食堂車には「ワシ」という形式が付けられていました。

 その後は長距離区間を走る鈍行列車にも食堂車が連結されるようになりましたが、太平洋戦争の戦局悪化に伴って、昭和19年4月1日に食堂車・寝台車・一等車の連結が廃止となりました。

明治45年6月に登場した新橋〜下関間の一・二等特別急行列車に連結された洋食堂車

昭和26年登場のマシ35形は4人掛けと2人掛けのテーブルが各窓側に配置されていた

戦後の復興にあわせ特急・急行列車に食堂車復活

 太平洋戦争の戦況悪化に伴って昭和19年4月1日から連結を中止した食堂車ですが、戦後は占領軍専用列車で連結を再開しました。戦後は食糧事情も悪く、さらに荒廃した一般の車両整備に重点が置かれていたため、一般の列車への食堂車の連結は不可能な状況でした。昭和24年9月15日、東京〜大阪間に特急「へいわ」が復活したのを機に、同列車と東京〜鹿児島間の急行列車で食堂車の連結が復活しました。

 戦後の混乱期から順次復興を果たした国鉄では、寝台車や食堂車の連結など旅客サービスの向上に力を注ぐようになります。昭和30年代に入ると主な特急・急行列車には食堂車が連結され、長距離列車の旅の楽しみが増加。食事時間帯になると食堂車の空席待ちの列ができるようになりました。

 昭和33年10月1日、元祖ブルートレインとなる20系客車を使用した東京〜博多間の寝台特急「あさかぜ」が誕生しました。編成中にはナシ20形食堂車が連結され、長い旅路の中で夕食と朝食を提供。オール冷房完備の最新設備を備えた列車の登場により、食堂車の利用もより快適なものになりました。車内は中央通路を挟んで4人用テーブルを配置し、車端に厨房と窓側に通路という食堂車の基本スタイルで、その後に登場する食堂車も同様のスタイルになっています。

特急・急行列車の華全国各地で食堂車が活躍

 昭和33年11月1日、東京〜大阪・神戸間に151系ビジネス特急「こだま」が登場しましたが、所要時間が6時間50分であることから軽食堂車のビュッフェを連結。特急列車の華であった食堂車が連結されない特急列車が登場しました。ところが、昭和35年6月1日に客車特急「つばめ」「はと」の151系電車化が実施された際、乗客からの要望もあって食堂車サシ151形を連結することになり、食堂車とビュッフェ車を連結した豪華な編成となりました。

 また、昭和35年12月10日には上野〜青森間を結ぶ特急「はつかり」が、新登場のキハ80系気動車に置き換えとなり、20系ブルートレインや151系電車と同じスタイルの食堂車キサシ80形(翌年からの増備車はキシ80形)を連結。昭和30年代に誕生した特急用客車・電車・気動車を使用した全列車に食堂車が連結されることになりました。

 昭和39年10月1日、東海道新幹線 東京〜新大阪間が開業。所要時間が短いため食堂車は製造されず、151系の登場時と同様にビュッフェ車が連結されることになりました。客車急行の電車化でも食堂車は製造されず、サハシ153形やサハシ451形などのビュッフェ車を連結。新幹線を除く特急列車および客車急行列車は食堂車、新幹線や電車急行列車はビュッフェ車というスタイルになりました。

特急列車が大増発!新幹線にも食堂車登場

 昭和43年10月1日、特急列車の大増発をメインとしたダイヤ改正が実施され、主な幹線では特急列車が主体の運転となりました。それに伴って食堂車を連結した列車も大増発となり、列車旅では食堂車を利用した食事が手軽に楽しめるようになりました。また、当初はビュッフェ車だけであった東海道・山陽新幹線でしたが、昭和50年3月10日の博多開業を控えた昭和49年9月5日から一部列車において36形食堂車が営業運転を開始。これにより、博多開業時から「ひかり号」の全列車で食堂車が利用できるようになりました。

 昭和60年10月1日、東海道・山陽新幹線のニューフェイスとして100系が登場。2階建て食堂車を連結した100系「ひかり」は好評を博し、車窓の風景を眺めながら食事が楽しめるようになりました。これまでの0系でも富士山側の通路の壁に窓を設置して車窓の風景を楽しめる工夫がされていましたが、左右の視界がワイドに開けている2階建て食堂車は特等席と言えるものでした。

 昭和50年代から昭和60年代にかけては、新幹線を含めた食堂車が活躍をすることになりましたが、在来線の特急列車では食堂車を連結しない特急列車や、連結していても非営業の列車が出るようになりました。食堂従業員の労働条件が厳しいことから人手が不足するようになり、さらに駅構内にある食堂などに比べると割高な列車食堂が敬遠されるようになったためです。また、食堂車の狭い厨房ではメニューの品数にも限界がありました。

 なお、在来線の九州ブルートレインの食堂営業は平成5年3月18日改正で、新幹線100系の食堂営業は平成12年3月10日改正で終了しています。

食堂車で味わうフルコースディナー

 青函トンネル開業に伴う昭和63年3月13日改正では、上野〜札幌間を青函トンネル経由で結ぶ寝台特急「北斗星」が登場。予約制のフルコースディナーを味わえる食堂車「グランシャリオ」が連結されました。平成元年7月21日には大阪〜札幌間を結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」が営業運転を開始し、同じく予約制のフルコースディナーを味わえる食堂車「ダイナープレヤデス」を連結。席とコース料理を予約して列車に乗車するという新しいスタイルの食堂サービスがスタートしました。

 いずれの列車もプライベート空間が魅力の個室寝台を連結し、さらに予約制のディナーが楽しめる食堂車があることから人気を博しました。さらに平成11年7月16日にはオールA寝台2人用個室という豪華な寝台特急「カシオペア」が登場し、予約制のディナーが楽しめる2階建ての食堂車を連結。首都圏・関西圏と北海道を結ぶ3本の寝台特急列車において、車窓の風景を眺めながら食事が楽しめる食堂車が活躍を続けています。

データ

カシオペア

運転区間:
上野〜札幌間
使用車両:
E26系客車マシE26形「ダイニングカー」
メニュー:
フランス料理コース(肉魚料理)7,800円、懐石御膳(カシオペア風)5,500円
営業時間:
予約制ディナー=17:15〜18:15(懐石御膳のみ)/18:30〜19:50/20:10〜21:30、パブタイム(予約不要)=ディナータイム終了後〜23:00

北斗星

運転区間:
上野〜札幌間
使用車両:
24系客車スシ24形「グランシャリオ」
メニュー:
フランス料理コース7,800円、懐石御膳(北斗星風)5,500円
営業時間
予約制ディナー=下り19:45〜21:05、上り18:00〜19:20/19:40〜21:00、パブタイム(予約不要)=ディナータイム終了後〜23:00

トワイライトエクスプレス

運転区間:
大阪〜札幌間
使用車両:
24系客車スシ24形「ダイナープレヤデス」
メニュー:
フランス料理12,000円
営業時間
予約制ディナー=17:30〜19:00/19:30〜21:00、パブタイム(予約不要)=21:00〜23:00

昭和24年9月15日に復活した東京〜大阪間の特急「へいわ」の食堂車

昭和33年10月1日に登場した東京〜博多間の寝台特急「あさかぜ」の食堂車

函館本線函館〜札幌・旭川間で活躍したキハ80系気動車特急「北斗」

20系客車や151系電車と同じ4人掛けのテーブルが配置されたキシ80形の車内

2階建て食堂車を連結した100系新幹線。ワイドな車窓の風景を眺めながら食事が楽しめた

予約制フルコースディナーを楽しめる食堂車「グランシャリオ」を連結した寝台特急「北斗星」

寝台特急「トワイライトエクスプレス」は481・489系電車から改造したスシ24形を連結

眺めの良い2階建て食堂車を連結したオールA寝台2人用個室の豪華寝台特急「カシオペア」

 

写真協力:交通新聞サービス
※掲載されているデータは平成22年5月現在のものです。

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