国鉄の車両近代化計画に伴う新系列の車両開発が進められてきましたが、昭和32年に電車近代化の第一陣となる101系通勤形電車(登場当時はモハ90系)が登場しました。電動車を2両1ユニットとしたMM’方式やカルダン駆動の採用など、高速運転および乗り心地の向上に寄与する新機軸が盛り込まれた新系列の電車で、翌年9月から10月にかけて101系開発で培われた最新技術をベースとして151系特急形電車(登場当時はモハ20系)と153系急行形電車(登場当時はモハ91系)が相次いで誕生しました。
昭和30年代に入るまで「優等列車=客車列車」が当たり前でしたが、昭和31年11月19日の東海道本線全線電化完成は中・長距離区間における「電車」運転を実現させる契機となり、東京〜大阪・神戸間の151系特急「こだま」の誕生が実現。この当時の特急・急行列車に使用された最新鋭の10系軽量客車と同等の車内設備を備えた153系でしたが、まずは昭和33年11月1日から東海道本線東京〜名古屋間の準急「東海」1往復で運転を開始しました。
最初に登場した車両は三等制御車のクハ153形、三等電動車のモハ152+モハ153形、三等付随車のサハ153形、二等付随車のサロ153形で、当時の80系準急列車の仕様にあわせたモノクラス中心の編成となりました。先頭車両は80系非貫通の「湘南スタイル」とは異なる貫通タイプとなり、編成の中間に先頭車両が組み込まれても通り抜けができるようになりました。また、80系湘南電車と同じくオレンジとグリーンのツートンカラーが採用され、東海道本線の新系列の準急列車として好評を博すことになりました。なお、最初に運用された列車が準急「東海」であったことに因み、153系は「東海形」の愛称で呼ばれるようになっています。