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栄光の新幹線シリーズ(3)東海道・山陽・九州新幹線 N700系・800系車両 平成19年7月1日、高速性と快適さを追求したN700系が登場。今回はハイテク装置を搭載した新世代の新幹線車両にスポットを当てて紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

What's 自動列車制御装置(ATC)

  新幹線など高速で走行する列車は、地上に設置された信号機を見て制御するのは不可能なため、運転台に列車の運転速度を示す信号を現示し、その信号の指示に従って列車の速度を制御する信号システムが採用されました。さらに列車が車内信号の許容速度以上になると自動的にブレーキが作動し、車内信号の許容速度以下になるとブレーキが解除されるという安全装置として開発されたのが「自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control)」です。昭和39年10月1日の東海道新幹線開業に合わせて採用されたのがATC-1型で、あらかじめ設定された速度信号に従って段階的にブレーキがかかる多段ブレーキ制御方式となっています。
 この方式では列車が停止するまでに数回のブレーキとブレーキ緩解が繰り返し行なわれることになるため、乗り心地が悪く、時間的なロスが発生するという欠点がありました。そこで開発されたのが1段ブレーキ制御方式で、滑らかなブレーキ制御を行なうことができるようになりました。JR東海では東海道区間において新ATCを実用化するため、平成11年度から300X試験車両を使用した走行試験を実施。前後の列車位置情報などを元にして車上で作成する減速パターンに従って、ゆっくりとブレーキがかかる新ATCシステムの実用化に成功しました。
 平成18年3月18日から東海道区間で使用を開始した新ATCシステムは「ATC-NS」の名称で呼ばれるもので、スムーズなブレーキ制御による乗り心地の向上や列車減速ロスタイムの短縮による列車の運転本数の増加、列車遅延時の回復運転の迅速化、列車の安全運行の向上など、東海道区間の運転に適した性能を発揮。将来はJR西日本の山陽区間にも導入され、東海道・山陽新幹線のスムーズな運転に貢献する予定です。  なお、JR東日本の東北・上越新幹線はDS-ATC、JR九州の九州新幹線はKS-ATCを採用しています。基本的なシステムは同様ですが、ATC-NSが減速パターンを随時車上で作成するのに対し、DS-ATCはあらかじめ作成されたパターンから最適なものをセレクトする方式となっています。

車体傾斜装置を採用した 最新鋭N700系「のぞみ」が登場

 東海道・山陽新幹線のスピードアップを図るためにJR東海とJR西日本で共同開発されたのがN700系で、平成17年3月に先行試作車のZ0編成が登場しました。
 東海道区間は制限速度のかかるカーブも多く、これが最後のスピードアップのネックとなっていました。新幹線としては初めての「車体傾斜システム」が導入されましたが、これは速度制限のかかるカーブでも空気バネで車体をわずかに1度傾かせ、制限速度+15km/hでの曲線走行を可能にしています。この1度の傾きが東京〜新大阪間の所要時間を5分短縮するキーポイントになっています。先に採用した新ATCシステム「ATC-NS」の速度・位置情報を利用することで、安全性の確保や乗り心地の向上に役立っています。
 車体傾斜システムの採用は消費エネルギーの削減にも役立っており、700系と比較して約19%の削減が実現しました。これはカーブ前後の加減速頻度が減少するための効果で、さらに空気抵抗の低減などで省エネが極限まで追求されています。初代新幹線の0系より最高速度が220km/hから270km/hに向上したにもかかわらず、電力消費量は32%低減されました。同じ最高速度220km/hで走行した場合には49%の低減となり、ECOの時代にふさわしい大幅な省エネを実現しています。

東京〜新大阪間の所要時間を5分短縮した「車体傾斜システム」導入のN700系

東海道区間で最高速度270km/h、山陽区間では最高速度300km/hで走行できるN700系

東京〜博多間の「のぞみ」で活躍する 東海道・山陽新幹線のN700系

 平成19年7月1日改正から営業運転を開始したN700系は、東京〜新大阪間を2時間25分、東京〜博多間を4時間55分で結ぶ最速列車として活躍しています。最高速度は東海道区間で270km/h、山陽区間では300km/hを実現し、500系が「のぞみ」運用から引退した現在の最高速列車となっています。
 先頭形状は鳥が羽根を広げたような形の「エアロダブルウィング」と呼ばれるデザインを採用していますが、これは空気抵抗や乗り心地、そして省エネを極限まで追求し、必然的に辿りついたものです。
 また、車体の振動を抑えるために、新たに開発された高性能なセミアクティブサスペンションを全車両に採用。車体側面の空気抵抗を軽減するために新幹線車両で初となる全周幌を採用し、車両内外の騒音も軽減することができました。新幹線の騒音の発生源として架線から集電するパンタグラフがありますが、N700系では風切り音の軽減と架線への追随性を向上させたシングルアーム式を採用しています。
 平成22年12月現在、JR東海48本、JR西日本14本の計62本が東京〜博多間の「のぞみ」全列車(臨時列車を除く)と、東京〜新大阪・岡山・広島間の「のぞみ」を中心に運用されており、700系に次ぐ新世代のエースとして活躍しています。

鳥が羽根を広げたようなエアロダブルウィングデザインの先頭形状を採用したN700系

ジェット機のコックピットのような運転台。ワイパーも騒音低減タイプを採用している

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