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車両の海側が白色、山側が黒色という大胆なデザイン。2011年春、九州の指宿(いぶすき)枕崎線に登場した特急「指宿のたまて箱」。車内には錦江(きんこう)湾沿いの海の風景を楽しむのに最適な座席を配置。さらに沿線の「竜宮伝説」をテーマにした様々な意匠が施されているのが特徴の観光列車だ。それでは鹿児島中央駅から乗車し、指宿枕崎線の車窓やJR最南端の駅と終着駅、旧南薩鉄道の歴史を訪ねる南薩エリア一周の旅に出かけてみることにしよう。
鹿児島中央駅を出て左手車窓に広がるのは、沿線車窓のハイライトとなる錦江湾の風景。窓側の回転腰掛けからカメラを構えると、海の向こうに桜島の雄姿が映し出される。終着の指宿で名物の砂湯を楽しむのもよし、普通列車に乗り継いで西大山駅、そして指宿枕崎線の終点・枕崎駅へ向かうのもよし。枕崎では名物のかつお料理を堪能したい。バスを利用して加世田の南薩鉄道記念館、最後はバスの車窓に南薩鉄道の遺構を眺めながら伊集院駅へ向かえば、日帰りまたは指宿温泉1泊2日の旅を楽しむことができる。
列車の乗降時にドアが開くと、ドア上部から浦島太郎の「玉手箱」に見立てた煙(ミスト)が噴霧されるという楽しい演出が見どころ。
客船やヨットに用いられるチーク材を使用したインテリアの1号車。リクライニングシートと海側に向いた回転腰掛けや本棚を設置。
南九州産の杉材を使用した明るいインテリアの2号車。海側の座席がすべてカウンター付きの回転腰掛けになっていて、美しい車窓が楽しめる。
2号車の山側中央には本棚とソファーを配置したコーナーを設置。本棚には絵本や指宿に関する書籍などが並ぶ。
沿線に伝わる「竜宮伝説」をテーマにした車内壁面には、浦島太郎の「玉手箱」をデザインしたエンブレムを設置。
車内サービスの一環として乗車記念証とスタンプを用意。指宿枕崎線の楽しい列車旅の思い出を手元に残そう。
デビュー年:2011年3月12日
運転日:毎日
運転区間:指宿枕崎線 鹿児島中央〜指宿(1日3往復)
車両形式:キハ47形8060+キハ47形9079
錦江湾に沿って走る指宿枕崎線の車窓には、青く輝く錦江湾の風景が展開。晴れていれば噴煙たなびく桜島の雄姿も映し出される。
昭和35年3月22日に開業した西大山駅。北緯31度11分に位置する「JR日本最南端の駅」で、ホームには記念の標柱が立っている。
薩摩半島の南端に位置する標高924mの名峰。日本百名山のひとつに数えられ、その優美な山容から「薩摩富士」の別名で呼ばれている。
指宿枕崎線の終点はJR日本最南端の終着駅。枕崎市観光協会では日本最南端の終着駅のある町「到着証明書」を発行している(1枚200円)。
市のキャッチフレーズは「太陽とカツオのまち枕崎」。枕崎港に水揚げされる新鮮なかつおを使用した「かつお料理」を堪能できる。
伊集院〜枕崎間を結ぶ南薩鉄道(廃止時は鹿児島交通)の中心地であった加世田駅。跡地は車両を展示するバスターミナルになっている。
加世田バスターミナル内にある記念館。館内には約70年間に渡って南薩エリアの足として活躍した車両など同社の歴史が展示されている。
指宿枕崎線〜旧鹿児島交通線(バス運行)と乗り継いで到着。鹿児島本線の列車に乗り継げば20分ほどで鹿児島中央駅に戻ることができる。
指宿枕崎線の旅を楽しむには、車内サービスが充実した観光特急を利用するのがベスト。今回の南薩エリア一周の旅ではおトクなきっぷを利用できないが、鹿児島中央から指宿までの往復に特急「指宿のたまて箱」、指宿〜西大山の往復に普通列車を利用する指宿エリア往復の旅なら「指宿レール&バスきっぷ」(おとな3000円、こども1500円)を利用するのがおトク! 有効期間は2日間なので、指宿温泉に1泊して砂湯を存分に楽しむことも可能だ。
文・写真:結解喜幸 写真協力:JR九州
※掲載されているデータは平成23年4月現在のものです。