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トレタビ列車図鑑

第6回 「奥出雲おろち号」

「奥出雲おろち号」*出雲市・木次~備後落合間(JR西日本)*

山間の三段スイッチバックを越えるトロッコ車両

 奥出雲の美しい山間の風景を楽しむことを目的に登場したトロッコ列車が、ヤマタノオロチ伝説に因んだ愛称の付いた「奥出雲おろち号」だ。12系客車を改造したトロッコ車両と控車の2両編成で、トロッコ車両の側面は手すりがあるだけのワイドな窓になっており、車窓のパノラマ風景と心地よい風を合わせて楽しむことができる。
 それでは、木次(きすき)駅から「奥出雲おろち号」に乗車し、紅葉の美しい奥出雲の旅を楽しむことにしよう。

「トロッコ弁当」を販売する八川(やかわ)駅を出ると、列車の左手に線路が現われて出雲坂根駅に到着。停車時間中は駅に湧き出る「延命水」を飲んで休憩するのが定番。列車は進行方向を変え、今度は先ほど現われた線路を上がって信号場に進む。ここで再び進行方向を変えた列車は、右手下に奥出雲おろちループなどを眺めて三井野原(みいのはら)駅に向かう。この先も紅葉の美しい山河の風景を眺めながら走ると、列車は間もなく芸備線が接続する終着の備後落合駅に到着する。

1 奥出雲おろち号

木次寄りに専用塗色のDE10形1161号機またはDE15形2558号機を連結。下り列車はディーゼル機関車が客車+トロッコ車両を後押しして走る。

2 トロッコ車両

備後落合寄りに連結される1号車はトロッコ車両のスハフ13 801。2両目のスハフ12 801は雨が降った時などに避難できる客車タイプの控車となる。

3 トロッコ車両の車内

12系客車を改造したトロッコ車両のスハフ13 801。車内は木製のベンチスタイルの座席を窓方向に配置。風を受けながら車窓の風景が楽しめる。

4 前面展望風景

下り列車の先頭1号車の運転台横は前面展望が楽しめるフリースペース。ここから眺めていると出雲坂根駅の三段スイッチバックの仕組みがわかる。

5 天井イルミネーション

列車がトンネルに入ると美しいイルミネーションの「おろち」が天井に浮かび上がる。車窓の風景が遮られるトンネルでは天井に注目が集まる。

6 トロッコ思い出ノート

旅の思い出を自由に書き込める「トロッコ思い出ノート」や乗車記念にスタンプを用意。乗車時には記念スタンプを押すのを忘れずに。

DATA

デビュー年:1998年4月25日
運転日:2011年10月10日までの金・土曜・休日と10月14日~11月23日の毎日。なお、11月23日までの休日と11月5・12・19日の下り列車は出雲市駅始発で運転
運転区間:山陰本線・木次線 出雲市・木次~備後落合間
車両形式:12系客車2両編成(スハフ12 801+スハフ13 801)

「奥出雲おろち号」でめぐる木次線の旅

出雲横田駅

神社を模した駅舎が特徴の駅で、駅舎の出入口には大きなしめ縄が飾られている。駅に隣接して「雲州そろばん伝統産業会館」がある。

亀(かめ)嵩(だけ)駅

松本清張の小説『砂の器』の舞台となった駅で、駅事務室は奥出雲そば「扇屋」の店舗。電話予約で列車到着時にそばを受け取ることができる。

トロッコ弁当

八川駅前の八川そばがホームで立ち売りをする「トロッコ弁当」。舞茸を添えた出雲そばの味覚をトロッコ列車の車内で味わえる。

三段スイッチバック

八川駅~出雲坂根駅~三井野原駅の間にある三段スイッチバック。1段目は出雲坂根駅、2段目は途中の信号場が折り返し地点となる。

奥出雲たたらと刀剣館

町を一望できる「むらくもの丘」に建つ資料館。たたらの歴史や伝統的な鍛冶の技術を紹介するほか、月2回ほど日本刀作刀の実演も行なわれる。

絲原(いとはら)記念館

奥出雲の代表的なたたら製鉄師であった絲原家の歴史資料館。館内にはたたら製鉄に関する資料や道具、美術工芸品などの展示物がある。

鬼の舌震(したぶる)

「出雲国風土記」にも記されている国の名勝・天然記念物。全長2kmに及ぶ奇岩が織り成す渓流沿いの美しい緑の中をゆっくりと散策できる。

奥出雲おろちループ

奥出雲町の三井野原道路(国道314号)にあるループ橋。標高差105mを二重ループで結ぶもので、木次線の列車の車窓からも眺めることができる。

鉄道写真作家 結解喜幸の
「奥出雲おろち号」○得利用術

この季節は「青春18きっぷ」などの木次線が乗り降り自由となるトクトクきっぷはないので、「奥出雲おろち号」の乗車では普通乗車券+指定席券が必要になる。なお、関西方面から松江・出雲市エリアへは「松江・出雲ぐるりんパス」(大阪市内発おとな19,500円、こども9,750円。2人同一行程など利用上の制限がある)を利用し、おトクな値段で楽しめる松江・出雲市エリアの観光と合わせ、車窓に紅葉が楽しめるトロッコ列車に乗車するのがベストだ。

文・写真:結解喜幸 写真協力:交通新聞サービス。
※掲載されているデータは平成23年9月現在のものです。

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