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九州新幹線新八代~鹿児島中央間の部分開業に合わせ、吉松駅から肥薩線・日豊本線を経由して鹿児島中央駅までを結ぶD&S列車として誕生したのが、キハ40系車両をシックな漆黒塗色の特急車両に改造した「はやとの風」。車内は難燃木材を使用した木のぬくもりを感じるデザインで、明るくて落ち着きのあるやさしい空間を演出している。
それでは、肥薩線の吉松駅から乗車し、鹿児島中央駅までの車窓の旅を楽しんでみることにしよう。肥薩線のD&S列車「いさぶろう・しんぺい」が接続する吉松駅を発車した列車は、次の栗野駅から山間部へと入り、左手車窓には霧島連峰の山並みが映し出されるようになる。明治36(1903)年1月15日に開業した大隅横川(おおすみよこがわ)駅や嘉例川(かれいがわ)駅には、100年以上の歴史を持つ木造駅舎があり、そのレトロな雰囲気で観光スポットとなっている。霧島温泉駅は文字通り霧島温泉郷の玄関口で、霧島連峰やえびの高原などの観光エリアが控えている。隼人駅から日豊本線に入ると、左手車窓には錦江(きんこう)湾と桜島の景観が広がり、市街地の風景が近づくと列車は鹿児島中央駅に到着する。
※JR九州では、観光列車のことをデザインとストーリーを兼ね備えた特別な列車として位置付け、「デザイン&ストーリー列車(D&S列車)」と呼びます。
方向転換ができる2人掛けのリクライニングシートが並ぶ車内。座席も木材を多用した木のぬくもりを感じることができる仕様となっている。
1号車・2号車の車両中央部に展望スペースを設置。仕切り板やテーブル、ベンチシートに木材を使用し、天井にはレトロな雰囲気の電灯が並んでいる。
ベンチシートに座って車窓の風景を楽しめる展望スペース。足元から天井まで続くワイドな窓があり、山海の風景を思う存分堪能することができる。
日豊本線隼人~鹿児島間の車窓を飾る錦江湾と桜島の風景。このほか、仙巌園(せんがんえん)や霧島連峰など鹿児島を代表する景観を楽しめる。
各種アルコール、おつまみ、スイーツ、駅弁などの車内販売が充実。展望スペースでグラスを傾けながら沿線の味覚を味わうことができる。
車両は漆黒一色に塗色されたシックな外観で、エンブレムは華やかな金色を使用。古きよき時代を感じるノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
明治36(1903)年1月15日に開業した当時の木造駅舎が現存する。大隅横川駅舎とともに100年以上の歴史が刻まれ、レトロな雰囲気がある。
鹿児島県などで栽培されるサツマイモを原料とした焼酎。主に宮崎県南部や鹿児島県で生産・愛飲されており、全国的にも有名な銘柄がある。
霧島山中腹に点在する温泉の総称。坂本龍馬夫妻が訪れたといわれる硫黄谷温泉、林田温泉、丸尾温泉、栄之尾温泉などがある。
D&S列車「はやとの風」の旅を楽しむには、新八代~八代~人吉~吉松~隼人間と霧島神宮~鹿児島中央間が乗り降り自由のフリー区間となる「霧島のんびりきっぷ 」(福岡市内からおとな15,000円・3日間有効)が便利でおトクだ。このほか、肥薩線がフリー区間となる「肥薩線一周ぐるりんきっぷ」(鹿児島中央駅からおとな9,500円・2日間有効)もある。いずれも片道は九州新幹線の利用となり、フリー区間内では特急・普通列車の普通車指定席が利用できる。
文・写真:結解喜幸
写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟
※掲載されているデータは2013年10月現在のものです。