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フルムーン夫婦グリーンパスで行く新幹線の旅|蕎麦めぐりフルムーン~細く長く末永く愛して、蕎麦を訪ねる3000kmの旅~

  • 1日目|長野で「信州そば」福井で「越前そば」
  • 2日目|瀬戸大橋を渡り祖谷で「祖谷そば」
  • 3日目|岡山から松江へ「出雲そば」を食す
  • 4日目|秋の京都に寄り名物そばを堪能
  • 5日目|会津から越後へ蕎麦めぐりの旅

1日目|E7系新幹線と在来線を乗り継いで長野から福井へグルメな蕎麦の旅|長野新幹線[東京⇒長野]/信越本線・北陸本線[長野⇒直江津⇒金沢⇒福井]

  • 長野駅のE7系新幹線。先頭車を見れば青が印象的で、早く金沢まで乗って行きたい気分になる

  • 長野といえばまずは名刹・善光寺を参拝。「信州そば」の店やおみやげ店が並ぶ参道も歩いてみよう

  • 長野で味わう本場の「信州そば」。店によっては信州産そば粉十割の手打ちそばが食べられる

  • 北陸新幹線金沢開業により運転が取り止めとなる「妙高」。今のうちにぜひ乗車してみたい

  • 赤が印象的な特急「はくたか」は、北陸新幹線金沢開業の際、新幹線「はくたか」へ衣替え

  • 福井で食べた福井県産そば粉100%の「越前おろしそば」。大根おろし入りのつゆをかけていただく

 古くから人々は細く長い蕎麦に長寿や健康の願いも込めて食べてきた。栄養面でもビタミンB1やルチンなどを多く含む蕎麦、時は折しも食欲の秋、新蕎麦が各地に出回る季節でもある。全国のJR線を思いのままに旅することができるフルムーンパスで、各地の名高い蕎麦処を訪ね、おいしい蕎麦を満喫してみよう。

 日本で蕎麦と聞くと、真っ先に思い浮かぶのが「信州そば」だろう。来春、金沢まで開業する北陸新幹線、一足早く走り始めた最新鋭のE7系グリーン車に乗って、秋たけなわの長野へ向かう。

 善光寺のお膝元、門前町の長野では、まずはやっぱり善光寺の参拝を。参道を歩けばさすがは蕎麦処、あちらにもこちらにも蕎麦の店が並ぶ。なかには本場の十割そばもあり、ぜひお好みの店へどうぞ。おいしい蕎麦はシンプルに「もり」で味わってみたい。

 長野から北陸方面へは、来春になると北陸新幹線でひとっ飛びの旅となる。一方、信越本線や北陸本線の一部区間は第三セクター線に移行するため、今のうちに在来線の旅を楽しんでおくのもおすすめ。特急用車両を用いた「妙高」に乗って直江津(なおえつ)に出て、北陸本線の特急を乗り継いで次なるご当地そばが待つ福井へ行く。

 こちら福井も「越前そば」で知られている。「越前そば」といえば、大根をきかせたおろしそばで味わうのが一番。平打ちのしっかりとした食べごたえの蕎麦と相性が抜群に良く、滋味豊かな味わいに身体も喜んでくる。

1日目●乗車距離:551.3km 運賃合計2人分:48,640円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
東京~長野:@10,770円(乗4,000円 特グ6,770円) 乗車距離222.4km
長野~直江津:@1,840円(乗1,320円 指520円) 乗車距離75.0km
直江津~金沢:@7,930円(乗3,020円 特グ4,910円) 乗車距離177.2km
金沢~福井:@3,780円(乗1,320円 特グ2,460円) 乗車距離76.7km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

蕎麦めぐりフルムーン 1日目
1

発着駅 時間 メモ

「信州そば」と「越前そば」を味わう旅
(福井泊)
~ E7系に乗車 ~

東京 発 8:36 長野新幹線【あさま509号】グリーン車(E7系)
長野 着  10:17 本場の「信州そば」を味わう
長野 発 12:45 信越本線普通列車【妙高3号】普通車指定席
直江津 着 14:17 乗り換え
直江津 発 14:25 特急【はくたか12号】グリーン車
金沢 着 16:09  乗り換え
金沢 発 16:13 特急【サンダーバード36号】グリーン車
福井 着 17:05 「越前そば」を食べ、この日は福井泊

旅のメモ

観光の問合せ
■ 長野:長野市観光情報センター(JR長野駅構内)
TEL. 026-226-5626
■ 福井:福井市観光案内所(JR福井駅構内)
TEL. 0776-20-5348

全国蕎麦処案内(1)北海道・東北 

 北の大地、北海道。ジャガイモのイメージが強いものの、実はソバの作付面積・生産量とも日本で第1位の都道府県になっている。いわば日本の蕎麦文化を下支えする北海道、幌加内(ほろかない)町(上川管内西部)が産地としても蕎麦処としても特に有名で、他に「江丹別(えたんべつ)そば」(旭川市)や「新得(しんとく)そば」(新得町)などがある。
 蕎麦処の多い東北地方。ソバの作付面積も多く、山形県や福島県が北海道に次ぐ位置を占めている。蕎麦処としては、観光客にも人気の「わんこそば」の盛岡をはじめ、山形新幹線の沿線では、山形、天童、大石田などが連なっている。こちらでは「板そば」で味わいたい。また、福島では会津地方が知られ、「山都そば」を筆頭に、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている大内宿では、長ネギを箸がわりに食べる「高遠そば(ねぎそば)」が評判になっている。

東北地方では山形新幹線沿線に蕎麦処が連なっている。写真は銀山温泉の宿で供されたもの

2日目|福井から一路、四国徳島、祖谷へ かずら橋を渡り「祖谷そば」を食べる|北陸本線・湖西線・東海道本線[福井⇒新大阪]/山陽新幹線[新大阪⇒岡山]/宇野線・瀬戸大橋線・予讃線・土讃線[岡山⇔大歩危]

  • 福井駅で購入した駅弁「香ばしい焼かにめし」。「越前そば」と並び、福井ではカニも食べたくなる

  • 特急「サンダーバード」のグリーン車。大型のゆったりシートで新大阪までくつろぎの旅を

  • 岡山からは特急「南風」に乗車。絶景の瀬戸大橋を渡り、同じく絶景のかずら橋を目指そう

  • 吉野川沿いにある大歩危駅。かずら橋のある“秘境”祖谷へのバス便が駅前から発着している

  • かずら橋は祖谷川の渓流に架かる日本三奇橋の一つ。ゆらりゆらりと揺れるスリル満点の橋だ

  • 太くて短い「祖谷そば」は都会風の蕎麦とは対極にある。蕎麦の原点が感じられる素朴な味わい

 さて、旅の2日目はさらに西へ、瀬戸大橋を渡り四国を目指す。うどん県のある四国はどうしてもうどんのイメージが強いものの、徳島県の祖谷地方ではソバが栽培され、郷土料理として定着している。

 福井から四国への旅。駅弁が有名な福井駅では名物の「焼かにめし」をゲット。蕎麦もいいがカニもいいもの。ブランチに駅弁を頬張りながら新大阪、岡山へ。

 岡山ではディーゼル列車である特急「南風」に乗り継ぎ、絶景の瀬戸大橋を渡って四国に入る。いろいろな列車の旅が楽しめるのがフルムーンパスのいいところで、多度津(たどつ)からは土讃線となり、琴平を過ぎれば列車は次第に四国山地の懐へと進む。やがて吉野川の渓流が姿を見せ、祖谷への玄関である大歩危(おおぼけ)駅に到着。

 ここからは路線バスに乗ろう。駅前を14時8分に出発するバスなら、祖谷のかずら橋に14時30分に着く。日本三奇橋の一つ、シラクチカズラなどの葛類を使って架けられたかずら橋は瀬戸大橋とは対照的に原始的な吊り橋。平家の落人が当地に潜み、追手が来ても橋を切り落とせるよう作ったという伝説を胸に、恐る恐る渡ってみるのも思い出に残るだろう。

 スリルの後は、お蕎麦でほっと一息。祖谷の蕎麦は当地収穫のそば粉をつなぎなしの十割で打ち、太くて軟らかくて短い麺が特徴に。都会の洗練された蕎麦とはまるで対照的で、素朴な味わいは蕎麦食の原点みたいだ。

 かずら橋に別れを告げ、17時10分発のバスで大歩危駅には17時32分の到着。特急「南風」に再び乗って今宵の宿を取る岡山へ向かおう。

2日目●乗車距離:603.8km 運賃合計2人分:60,100円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
福井~新大阪:@8,260円(乗3,350円 特グ4,910円) 乗車距離187.1km
新大阪~岡山:@8,250円(乗3,020円 特グ5,230円) 乗車距離180.3km
岡山~大歩危:@6,770円(乗2,190円 特グ4,580円) 乗車距離118.2km
大歩危~岡山:@6,770円(乗2,190円 特グ4,580円) 乗車距離118.2km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

蕎麦めぐりフルムーン 2日目
2

発着駅 時間 メモ
福井から四国へ行き「祖谷そば」を食す旅 
(岡山泊)
~ N700系に乗車 ~
福井 発 8:48 特急【サンダーバード10号】グリーン車
新大阪 着 10:35 乗り換え
新大阪 発 10:59 山陽新幹線【さくら553号】グリーン車(N700系)
岡山 着 11:45 乗り換え
岡山 発 12:05 特急【南風9号】グリーン車
大歩危 着 13:50 路線バスで「かずら橋」へ行き、「祖谷そば」を味わう
大歩危 発 18:05 特急【南風24号】グリーン車
岡山 着 19:41 この日は岡山泊

旅のメモ

観光の問合せ
■祖谷(三好市):三好市観光案内所
TEL. 0120-404-344

全国蕎麦処案内(2)関東

 関東で蕎麦処というと、神田の「やぶそば」、麻布の「更科そば」、調布の「深大寺そば」など、名店ひしめく大消費地で、東京が江戸だった頃から広い意味で蕎麦処に。多くの文化人にも愛され、東京は蕎麦食文化発信にも一役買っている。
 そして意外かもしれないが、関東でも茨城県や栃木県はソバの作付面積では全国上位を占め、最近では蕎麦処としても頭角を現している。茨城では「金砂郷(かさなごう)そば」(常陸太田市)、栃木では「今市そば」(日光市)が知られ、那須烏山市では「八溝(やみぞ)そば街道」を立ち上げて自慢のそばをアピールしている。これらのエリアは、けんちん汁をアレンジした「けんちんそば」が郷土の味として定着し、野菜もたっぷりで身体が温まる。さらに、埼玉県では山国・秩父が蕎麦処になっており、くるみ汁で食べる「くるみそば」が一つの特徴に。

蕎麦処として名を挙げる茨城県などでは、けんちん汁をアレンジした「けんちんそば」が旨い

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