『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

フルムーン夫婦グリーンパスで行く新幹線の旅|冬の北海道フルムーン~石川啄木の面影とともに、3200kmの冬紀行~

  • 1日目|東京から函館へ冬のロマン散歩
  • 2日目|函館から小樽へ夕食は札幌にて
  • 3日目|札幌から知床へウトロ温泉滞在
  • 4日目|知床から釧路へ夜は炉ばた焼き
  • 5日目|釧路から東京へ一気に帰る鉄旅

3日目|札幌から網走を経由してウトロへ流氷の季節は北浜駅で途中下車を|函館本線・宗谷本線・石北本線[札幌⇒網走]/釧網本線[網走⇒北浜⇒斜里]

  • 特急「オホーツク」は、一部のファンから「将棋の駒」と呼ばれた直線的な顔立ちが印象的

  • 札幌と網走を結ぶ特急「オホーツク」。5時間半近い道中、グリーン車でゆったりと行こう

  • 監獄で知られる網走の玄関、JR網走駅。独特のタッチで描かれた駅名をバックに記念写真を

  • 到着した特急「オホーツク」の隣のホーム、釧網本線の普通列車が発車の時を待っていた

  • 知床、ウトロ温泉、雪見の露天風呂。氷点下とはいえ、湯に浸かると身も心もポカポカに

  • ウトロ温泉の夕食。バイキング形式の宿もあり、好みの料理が好きなだけ食べられて大満足

 冬の北海道をめぐる旅。旅人にすれば雪をいただく風景すべてが輝いて見える。3日目は札幌からオホーツク海沿岸の網走へ、その名もずばりの特急「オホーツク」に乗って向かおう。

 特急「オホーツク」はフルムーン世代には懐かしいキハ183系気動車を使用。先頭車両の顔立ちはかつて一部のファンから「将棋の駒」と呼ばれた直線的なもの。昭和の時代に造られた車両であり、今なお活躍する姿にはとても元気づけられる。

 小樽から新天地、釧路へと旅立った啄木が「山なほ遠き雪の野の汽車」と歌うように、特急「オホーツク」は石狩平野をひた走る。彼は旭川から釧路へ行ったが、当時はまだ旭川と網走を結ぶ石北本線は開通していなかった。北海道の冬の旅、せっかくだから流氷もやってくる網走や知床方面も周遊したい。

 オホーツク海の冬の使者、流氷。例年の流氷初日(沿岸での目視確認日)は1月中旬から下旬頃。流氷のシーズンであれば、ぜひ釧網本線の車窓から眺め、また、流氷の海を目の前にした北浜駅に降り立ち、寒さとともに大自然の神秘に触れてみよう。そして、流氷を間近に望む知床、ウトロ温泉に滞在。最寄りの知床斜里駅前からのバス便もオホーツク海に沿って進む。

 オホーツク海沿岸に流氷が姿を見せる前であれば、プランを変更して網走市内に滞在するアレンジも。有名な網走監獄(博物館)やオホーツク流氷館などを訪ね、新名物「網走ザンギ丼」や当地自慢のカニ料理を存分に味わってみたい。

3日目●乗車距離:411.8km 運賃合計2人分:28,600 円 ※バスを除く
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
札幌~網走:@13,500円(乗6,800円 特グ6,700円)乗車距離374.5km
網走~北浜:@260円(乗260円)乗車距離11.5km
北浜~知床斜里:@540円(乗540円)乗車距離25.8km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

冬の北海道フルムーン 3日目
3

発着駅 時間 メモ
札幌から網走を経て、知床、ウトロへ
(ウトロ温泉泊)
札幌 発 7:21 特急【オホーツク1号】グリーン車
網走 着 12:46 乗り換え
網走 発 13:25 釧網本線普通列車
北浜 着 13:42 流氷のシーズン、途中下車してオホーツク海を展望
北浜 発 14:45 釧網本線普通列車
知床斜里 着 15:13  路線バスに乗り換え 駅前の斜里BT(バスターミナル)へ
斜里BT 発 15:50 路線バス(1650円)
※バス時刻は要確認
ウトロ
温泉BT 着
16:40 この日はウトロ温泉泊

旅のメモ

観光の問合せ
■ウトロ:知床斜里町観光協会
TEL. 0152-22-2125

冬の北海道コラム(3)流氷

 冬の北海道、大自然の営みといえば、やはりオホーツク海を南下してくる流氷だろう。冬の北海道観光でイチオシの流氷。これはロシア、極東の大河、アムール川から流れ込む大量の淡水もあって海が凍り、風や海流によって北海道のオホーツク海沿岸地方までやってくるもの。
 例年、1月中旬頃に流氷初日を迎え、陸への接岸は2月上旬にかけて。自然現象のため年によって時期は微妙に変動するものの、流氷シーズンともなると、第一管区海上保安本部「海氷情報センター」等のインターネット・サイトで流氷の最新位置を知ることができ、旅行の目安となる。
 網走や紋別からは砕氷能力を持つ流氷観光船が運航され、海から眺めれば流氷の醍醐味もダイレクトに伝わってくる。また、知床半島のウトロ温泉周辺も流氷の名所。こちらは接岸期間が長く、迫力も満点だ。

知床、ウトロの海を埋め尽くすダイナミックな流氷。流氷を眺めるのならウトロがおすすめ

4日目|釧網本線の快速列車で釧路へ行き観光そして炉ばた焼きを堪能する|釧網本線[知床斜里⇒釧路]

  • 北海道とくれば朝食から海の幸が食べたい。ウトロでも自己流の海鮮丼をこしらえて満腹に

  • 特急列車のない釧網本線。1両編成のディーゼルカーでのんびり車窓を眺める旅もまた楽しい

  • 釧路で新聞記者として働いた石川啄木。彼がよく行ったという料亭跡も文学散歩のコースに

  • 釧路川べりに立つ啄木像。太平洋側にある釧路は真冬でも意外なほど雪が少なかったりする

  • 釧路川にかかる幣舞(ぬさまい)橋。灯りがともる冬の夕方、あたりは旅情に満ちてくる

  • 釧路の夜、炉ばた焼きの店へ出かけ、じっくり焼いたホッケなどを夫婦で味わってみよう

 夏と冬とではその風景が一変する知床、ウトロの海。特に流氷が押し寄せる季節、海は果てしなく広がる氷の大平原のよう。大自然が織りなす雄大な景色をぜひ眺めておこう。

 ウトロ温泉から路線バスで知床斜里駅に戻り、釧路行きの快速「しれとこ」に乗車。この列車は始発駅が網走であり、もし3日目、網走に宿泊された方は網走駅(10時1分発)からご乗車を。

 釧路市と網走市を結ぶ釧網本線。両者の一字をいただく路線名は「せんもう」と読む。途中、今も噴気を上げる硫黄山の近くを通り、その硫黄を輸送する明治24年(1891)設立の釧路鉄道が釧網本線の下地となった。やがて昭和6年(1931)になって釧網本線は全線開通したが、旧釧路鉄道の路盤は現在も一部区間で使用されている。

 硫黄が一つの礎となって積み出し港、釧路は発展を始めた。明治35年(1902)には地方新聞が創刊され、同41年(1908)1月、旭川経由で釧路にやってきた啄木はその新聞社の記者となった。

 啄木の歌碑が27もある釧路。太平洋側に位置し、冬は寒さ厳しいものの雪は少なく晴れの日が多い。文学散歩やグルメ散歩に出かける際、雪に不慣れな旅人にとって釧路の道は北海道とは思えないほど歩きやすい。しかし、足元の注意だけはどうぞおこたらずに。

 釧路の夜、当地に根付く炉ばた焼きの店に出かけ、おいしい魚介をじっくりと味わってみたい。寒い冬、炉ばたのぬくもりが心に染み入り、ホッケやシシャモを炙る煙にさえ旅情が漂う。

4日目●乗車距離:131.8km 運賃合計2人分:5,620円 ※バスを除く
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
知床斜里~釧路:@2,810円(乗2,810円)乗車距離131.8km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

冬の北海道フルムーン 4日目
4

発着駅 時間 メモ
知床斜里から釧路へ
(釧路泊)
ウトロ
温泉BT 発
9:40 路線バス(1650円)
※バス時刻は要確認
斜里BT 着 10:30 乗り換え
知床斜里 発 10:46 快速【しれとこ】普通車自由席
釧路 着 13:27 冬の釧路を観光し、この日は釧路泊

旅のメモ

観光の問合せ
■釧路:釧路市観光案内所(釧路駅構内)
TEL. 0154-22-8294

冬の北海道コラム(4)グルメ

 北の幸が豊富な北海道。冬には冬の美味がある。特に季節感が際立つのは海の幸で、一番のおすすめは「まだち」だろう。これは真鱈の白子で、濃厚な口どけが絶品の味わい。食べ方としては、ピリ辛ポン酢風味でいただく「たちぽん」や、天ぷらがいい。札幌をはじめ、道内各地で味わうことができる。
 また、厚岸をはじめサロマ湖、知内など、カキ(牡蠣)の産地も旬を迎える。プリプリのカキはジューシーで旨い。そして、函館では「ごっこ」と呼ばれるホテイウオの季節。こちらはコラーゲンたっぷりの身が入った「ごっこ汁」が冷えた身体を温めてくれる。ホテイウオの身はプルプルしており、から揚げで食べてもおいしい。
 オホーツク海側、網走では、極寒の季節、最高級のバフンウニが獲れる。こちらもできれば味わってみたい。

冬の北海道の旨いもの。まずは「まだち」(真鱈の白子)だろう。寿司で味わうのもいい

5日目|釧路から東京まで1453㎞を一気に在来線と新幹線の弾丸フルムーン|根室本線・石勝線・千歳線・室蘭本線・函館本線・江差線・津軽海峡線・津軽線・奥羽本線[釧路⇒南千歳⇒函館⇒新青森]/東北新幹線[新青森⇒上野]

  • 釧路、和商市場といえば勝手丼。最初にごはんを買い、好みのネタをのせて完成させていく

  • 海の幸いっぱいの和商市場。カニ好きな人はここでもカニを。甲羅に盛った身がおいしそう

  • 釧路から東京へ帰る弾丸フルムーン。最初の列車、特急「スーパーおおぞら」で南千歳へ

  • 特急「スーパー白鳥」も函館~青森間の列車の一つ。2席+1席の横3席グリーン車は快適だ

  • 新青森からは東北新幹線E5系「はやぶさ38号」に乗車。啄木ゆかりの上野駅で下車をしよう

  • 上野駅ホームの啄木歌碑。「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」

 朝から市場に出かけ、新鮮な海の幸を食べたくなる北海道。釧路では駅すぐのところにある和商市場が知られ、函館朝市、札幌二条市場と並ぶ「北海道三大市場」の一つに数えられている。

 ここ和商市場といえば本場の「勝手丼」。ごはんを最初に買って各店舗で好みのネタを選び、自分だけの丼を作り上げていくもの。新鮮なネタは小分けされ、市場らしく値段も手頃。季節に合わせたオリジナルの丼を朝食としたい。また、鮭など自宅へのおみやげは宅配便で発送すると楽ちんだ。和商市場の営業は朝8時からとなっているが、7時過ぎには営業を始めている店もある。

 旅の最終日は東京まで一気に帰る弾丸フルムーン。距離は1453㎞あるものの、全区間が快適なグリーン車ゆえ、ことのほか疲れ知らずの旅が楽しめる。石川啄木は釧路に76日間滞在の後、東京での創作活動にあこがれて船で釧路を離れたが、今の時代のように、当日中に鉄路で東京まで行けると知ったらそれは驚くだろう。

 この日、最初の列車は釧路始発の特急「スーパーおおぞら4号」。石勝線を経由して南千歳で下車する。ここでランチの駅弁を買い求め、特急「スーパー北斗10号」に乗って函館へ。函館からは特急「スーパー白鳥34号」で青函トンネルをくぐり新青森に到着。新青森駅にはエキナカ施設「あおもり旬味館」があり、ここで夕食をとり、津軽のおみやげを購入。

 さあ、旅を締めくくる最後の列車、東北新幹線「はやぶさ38号」はぜひ上野駅で下車を。地平ホーム15番線、車止め付近にある啄木の歌碑に立ち寄ってから帰ろう。ただし終電にはご注意を。

5日目●乗車距離:1453.6km 運賃合計2人分:106,920円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
釧路~南千歳:@12,420円(乗5,720円 特グ6,700円)乗車距離304.5km
南千歳~函館:@11,560円(乗5,070円 特グ6,490円)乗車距離274.7km
函館~新青森:@7,720円(乗3,240円 特グ4,480円)乗車距離164.3km
新青森~上野:@21,760円(乗10,150円 特グ11,610円)乗車距離710.1km ※「はやぶさ」の運賃・料金
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

冬の北海道フルムーン 5日目

5

発着駅 時間 メモ
釧路から列車を乗り継いで、一気に帰京
~ E5系に乗車 ~
釧路 発 8:38 特急【スーパーおおぞら4号】グリーン車
南千歳 着 12:02 乗り換え
南千歳 発 12:45 特急【スーパー北斗10号】グリーン車
函館 着 15:46 乗り換え
函館 発 15:56 特急【スーパー白鳥34号】グリーン車
新青森 着 18:01 夕食タイム&乗り換え
新青森 発 19:44 東北新幹線【はやぶさ38号】グリーン車(E5系)
上野 着 22:58 旅の終わり

冬の北海道コラム(5)宿泊

 夏のシーズンと同じく、冬もたくさんの観光客がやってくる北海道。なかでも、札幌の「雪まつり」や、オホーツク海沿岸に押し寄せてくる流氷が観光の中心に。これらの時期、北海道のホテルや旅館は予約でいっぱいになるところが多く、予約にはかなり苦労することも。
 普段は呑気な私たちでさえ、冬の北海道を旅する際、宿の予約だけは早い時期からするよう心掛けている。冬の観光がピークを迎える1月や2月の旅行では、本当に早いうち、できれば秋から計画を立て、11~12月には予約を始めておきたい。一般的にみて、予約は早期のほうが価格も安めで、希望の宿泊プランもいろいろと選べる。
 間際になってからの予約では良い宿が見つからず、結果的に良い旅行ができなくなることも。宿の予約はどうぞお早めに!

冬の観光シーズン、北海道の宿の予約はぜひお早めに。できれば年内に予約をしておきたい

<東京発 冬の北海道フルムーンの運賃総額、総乗車距離>
JR運賃総額:229,160円 (2名分合計 通常期で算出) 
JR総乗車距離:3261.5km
お得になった金額:146,360円 (JR運賃総額-フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用 82,800円])
乗車倍率:2.76倍 (JR運賃総額÷フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用 82,800円] )
※運賃計算キロは、JR東日本のサイト、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示のものです。

● 旅人(著者)紹介 相澤秀仁&相澤京子

写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡している。これまでに130日以上フルムーンパスでの旅をし、JR路線も約12万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』『わらいねこ』をはじめ、 『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年にわたって連載。
夫婦旅ブログ http://fullmoon.aizawa22.com

 

文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは2014年11月現在のものです。
※時刻は、JR時刻表2014年11月号、えきねっと「乗換・運賃案内」、JRおでかけネット「マイ・ダイヤ」等のものを使用。
※時刻は臨時に変更となる場合があります。
※運賃は2014年11月22日をモデルに算出しました。

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