『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

いとしの「はまなす」フルムーン~変わりゆく鉄路をめぐる4446kmの旅~

  • ●1日目|金沢を経て北へ「はまなす」乗車
  • ●2日目|札幌から網走へ国鉄型特急の旅
  • ●3日目|釧路を経由して十勝川の湯宿へ
  • ●4日目|帯広から青森へ「はまなす」乗車
  • ●5日目|津軽海峡を往復函館を訪ね帰京

3日目|釧網本線、根室本線を経て帯広へモール泉の十勝川温泉でゆったり|釧網本線[網走⇒釧路]/根室本線[釧路⇒帯広]

  • 網走から釧路へ行く快速「しれとこ」のサボ(行先票)。釧路までは3時間半ほどの旅となる

  • 網走出発後、列車はオホーツク海沿岸を走行。流氷シーズンには押し寄せる流氷も見える

  • 海鮮丼のような網走駅の駅弁『磯宴』。写真の「かにいくら」は、カニのほぐし身がいっぱい

  • 帯広駅に到着の特急「スーパーおおぞら」。モール泉で有名な十勝川温泉へは路線バスで

  • 十勝川温泉の宿、夕食は部屋食でゆっくり味わうのもいい。食後は一休みしてまたお風呂へ

  • 十勝川温泉、源泉かけ流しの貸切風呂。琥珀色したモール泉は肌に優しい感触で気持ちいい

 サーモンにイクラ、カニにホタテ、カキなど、オホーツク海やサロマ湖の味覚満載の網走。旅の3日目はいかにも網走らしい駅弁をランチ用に買い求め、釧路を経由して十勝地方は帯広へ。全国的にも珍しいモール泉で名高い十勝川温泉に行って身体を休めよう。

 網走駅でおすすめの駅弁といえば『磯宴』のシリーズ。前もって予約をしておくと作り立てを購入できる。ほとんど海鮮丼に近い豪華な出来栄えの駅弁。これはもう従来の駅弁のイメージを超えている。

 釧路までは釧網本線の旅。途中、知床斜里にかけての区間はオホーツク海沿岸を走り、季節ともなれば海を埋め尽くす流氷が車窓に見て取れる。さらに標茶、茅沼を過ぎれば、今度は釧路川、釧路湿原が間近に。そして、運が良ければタンチョウの姿と出会うことも。雄大なパノラマを眺めながら、ローカル列車でのんびりと過ごす旅時間もいい。

 釧路で特急列車に乗り継ぎ、ほどよい時間に帯広着。駅前バスターミナル15時26分発の路線バスで十勝川温泉の宿にはちょうど16時頃にチェックイン。

 ドイツ語で湿原を意味するというモール。モール泉には植物由来の有機物が含まれており、日本では十勝川温泉がその代表に。亜炭を含む地層から湧く琥珀色の湯はつるつるとした心地よい感触だ。

 美人の湯とも言われる十勝川温泉は「北海道遺産」にも選ばれている。源泉かけ流しの貸切風呂を持つ宿もあり、夫婦水入らずでゆったりと特徴的なモール泉に浸ってみよう。

3日目●乗車距離:297.4km 運賃・料金合計2人分:21,420円
【個別区間(列車)ごとの運賃・料金と乗車距離】
網走~釧路:@3,670円(乗3,670円)乗車距離169.1km
釧路~帯広:@7,040円(乗2,490円 特グ4,550円)乗車距離128.3km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

はまなすフルムーン 3日目
3

発着駅 時間 メモ
網走から帯広へ(十勝川温泉泊)
網走 発 10:01 快速【しれとこ】普通車自由席
釧路 着 13:27 乗り換え
釧路 発 13:34 特急【スーパーおおぞら8号】グリーン車
帯広 着 15:08 この日は十勝川温泉泊

旅のメモ

観光の問合せ
■十勝川温泉:音更町十勝川温泉観光協会
TEL. 0155-32-6633

「はまなす」の愉快な仲間たち(3)「ドリームカー」(普通車指定席)

 急行「はまなす」で、最も夢のあるネーミングの車両「ドリームカー」。直訳すると「夢の車、理想の車」となるが、通常2両連結(連結がない場合も)されている。
 「ドリームカー」と聞くと、急行「はまなす」の最上位設備にあたりそうなイメージ。ところが実は普通車指定席のことで、B寝台車、のびのびカーペットカーの次にあたる設備と思ってよい。しかし、ただの普通車指定席にはない「夢の車」にまとめられている。
 元来、グリーン車のなかった14系座席車にあって、特急グリーン車(キロ182形)から発生したグリーン席を転用。リクライニングの角度も深く、普通車ながらも「ほぼグリーン車」に近く、それだけに良い夢が見れそうだ。もちろんフルムーンパスで追加料金不要で乗車でき、女性専用席の設置もある。

急行「はまなす」の普通車指定席「ドリームカー」。特急列車のグリーン車みたいな雰囲気

4日目|帯広から札幌に戻り夜の街を散策いとしの急行「はまなす」で青森へ|根室本線・石勝線・千歳線・函館本線[帯広⇒札幌]/函館本線・千歳線・室蘭本線・函館本線・江差線・津軽海峡線・津軽線[札幌⇒青森]

  • 今では高架の駅になった帯広駅。かつての帯広駅からは幸福駅へも行く広尾線が出ていた

  • 北陸の金沢と同じく帯広にも名物カレーがある。こちらはスパイシーな「インデアンカレー」

  • キハ283系特急「スーパーおおぞら」。グリーン席はリニューアルされ、一段と快適になった

  • 冬の北海道で食べたい味覚の一つ「たちぽん」。マダラの白子にピリ辛ポン酢をかけたもの

  • 高層ホテルといい夜に輝きを増す札幌駅。上り急行「はまなす」は22時ちょうどに発車する

  • 夜の札幌駅、旅情というオーラを振りまきながら機関車を先頭にした急行「はまなす」が入線

 十勝川温泉で迎えた4日目。帯広駅へ向かう路線バスの時刻に合わせ、9時半過ぎにチェックアウト。バス停は主だった宿のすぐそばにあって便利だ。

 この日は帯広でランチを食べて札幌に戻り、夜は上りの急行「はまなす」に乗車して車中泊で青森を目指す。「はまなす」は上りと下りで走行距離が異なるのもまたユニーク。『JR時刻表』の北海道の路線図ページを開けば、函館と森の間で「8の字」みたいになった区間が目に留まる。「はまなす」は上りが渡島砂原駅を経由し、下りは大沼公園駅を経由する。そのため上下列車で距離が異なる。

 さて、十勝地方といえば酪農や農業も盛んな土地柄。北海道でお土産の定番として知られる菓子メーカーの帯広本店もある。北海道産生乳100%のバターをあわせたクリームが特徴のバターサンドを買い求め、喫茶室で小休止。

 帯広では廃線となった旧広尾線の幸福駅を訪ねるアレンジもできる。フルムーン世代であれば、かつて幸福駅が一大ブームを巻き起こしたことを懐かしく思い出されるだろう。現在は観光地に整備され、アクセスは帯広駅前バスターミナルから路線バス(広尾線)で約50分、「幸福」バス停下車、徒歩5分となっている。帯広周辺をゆっくりとめぐる場合は、帯広17時51分発の特急「スーパーおおぞら10号」にて札幌へ。20時19分の到着となる。

 札幌からは再び急行「はまなす」で車中泊。北海道新幹線開業に向けた準備等のため、上下列車で運休する日が一部設定された。運休日については『JR時刻表』であらためてご確認を。

4日目●乗車距離:699.3 km 運賃・料金合計2人分:53,580円
【個別区間(列車)ごとの運賃・料金と乗車距離】
帯広~札幌:@10,810円(乗4,320円 特グ6,490円)乗車距離220.2km
札幌~青森:@15,980円(乗8,200円 急B寝7,780円)乗車距離479.1km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

はまなすフルムーン 4日目
4

発着駅 時間 メモ
札幌を観光し、青森へ(車中泊)
帯広 発 12:59 特急【スーパーおおぞら6号】グリーン車
札幌 着 15:36 北の都を観光
札幌 発 22:00 急行【はまなす】B寝台 ※運休日に注意!
青森 着 6:19 車中泊で青森着

旅のメモ

観光の問合せ
■帯広:帯広観光コンベンション協会
(帯広駅エスタ東館2階)TEL. 0155-22-8600
■札幌:北海道さっぽろ観光案内所
(JR札幌駅西コンコース)TEL. 011-213-5088

「はまなす」の愉快な仲間たち(4)普通車自由席

 急行「はまなす」で、一番気軽に乗車できる普通車自由席。通常2両連結されている。
 この普通車自由席、「はまなす」では最安の設備にあたるものの、かつて一般的だった急行列車の普通車自由席と比較すると、もはや特急列車並みの空間に思えてくる。
 そもそも「はまなす」の普通車自由席には特急列車用に製作された14系座席車が使われており、車内は4人掛けのボックスシートではなく、特急電車の183系に相当する2人掛けのクロスシートが並んでいる。183系特急電車の普通車クロスシートといえば、ロックできずに不評だった「簡易リクライニング」を思い出すが、現在、「はまなす」に充当されている普通車自由席車両では、リクライニングはロックできるようになり、座り心地は格段に良くなった。フルムーンパスでももちろん追加料金不要で乗車できる。

急行「はまなす」の普通車自由席。座席は簡易リクライニングながらもロック可能になった

5日目|消えゆく在来線特急列車で函館へ北海道新幹線への期待を胸に帰京|津軽線・津軽海峡線・江差線・函館本線[青森⇒函館]/函館本線・江差線・津軽海峡線・津軽線・奥羽本線・東北新幹線[函館⇒新青森⇒東京]

  • 北海道新幹線開業に伴い運転取り止めとなる特急「白鳥」。消えゆく485系の旅も今のうちに

  • 青森から函館への旅、青函トンネルを抜け、江差線に入ると右側前方に函館山が見えてくる

  • 函館といえばイカ。駅近くの函館朝市ではイカも盛り込んだ海鮮丼がお手頃価格で味わえる

  • 旧青函連絡船「摩周丸」が浮かぶ函館。函館は鉄道とともに歩み、いよいよ新幹線の時代へ

  • 函館駅で発車を待つ789系特急「スーパー白鳥」。北海道新幹線開業で運転取り止めになる

  • 旅の締めくくり、東北新幹線E5系「はやぶさ」に乗車。北海道新幹線の開業が待ち遠しい

 さまざまな車両を連結して列車を編成することができるのも鉄道の魅力の一つ。とはいえ実際にはオーソドックスな列車が多く、寝台車やカーペットカー、ドリームカーといった客車をつなぎ、機関車で牽引する急行「はまなす」はとても希少な存在。いかにも列車らしく、ここまで走り続けてきたのはある意味、奇跡的だ。

 いとしの「はまなす」を下車した青森。朝風呂派の方は、また駅近くの温泉施設へ。早朝6時から営業している。5日目は在来線特急列車で函館を往復。新幹線開業によって変わりゆく鉄道を見届けよう。

 明治時代以降、長らくの間、青森と函館は鉄道連絡船である青函連絡船によって結ばれてきた。昭和63年(1988)3月13日の青函トンネル開通によって両都市は列車で行き来できる時代となり、平成14年(2002)12月1日の東北新幹線八戸開業からは特急「白鳥」、同「スーパー白鳥」が走行を開始。そして、いよいよ北海道新幹線の時代を迎える。

 北海道新幹線開業によって青函を結ぶ在来線特急列車も姿を消すが、新幹線開業に備え、平成28年3月22日から25日まで、青函トンネルを通る旅客列車はすべて運休に。フルムーンパスが利用できない期間(12月28日~1月6日、3月21日~4月5日、4月27日~5月6日)とはいえ、注意点としてお忘れなく。

 北海道新幹線開業にあたって盛り上がりを見せる函館。港にはメモリアルシップとなった旧青函連絡船「摩周丸」の姿が。鉄道とともに歩み、エキゾチックな風景が広がる函館は何度も何度も訪ねてみたい街。次回はぜひ北海道新幹線に乗って旅をしよう!

5日目●乗車距離:1038.4km 運賃・料金合計2人分:74,820円
【個別区間(列車)ごとの運賃・料金と乗車距離】
青森~函館:@7,720円(乗3,240円 特グ4,480円)乗車距離160.4km
函館~新青森:@7,720円(乗3,240円 特グ4,480円)乗車距離164.3km
新青森~東京:@21,970円(乗10,150円 特グ11,820円)乗車距離713.7km ※「はやぶさ」の運賃・料金
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

はまなすフルムーン 5日目

5

発着駅 時間 メモ
函館を観光し、帰京
~ E5系に乗車 ~
青森 発 8:25 特急【白鳥93号】グリーン車
函館 着 10:26 港町、坂の町を観光
函館 発 17:07 特急【スーパー白鳥38号】グリーン車
新青森 着 19:19 乗り換え
新青森 発 19:44 東北新幹線【はやぶさ38号】グリーン車 E5系
東京 着 23:04 旅の終わり

旅のメモ

観光の問合せ
■函館:函館市観光案内所
(JR函館駅内)TEL. 0138-23-5440

「はまなす」の愉快な仲間たち(5)ミニラウンジ

 個性豊かな車両が連結されていて愉快な感じがする急行「はまなす」。しかし、食堂車やシャワーといった寝台特急列車で見られる設備はない。とはいえ、ちょっとした時間を過ごしてみたいミニラウンジが設置されていてうれしい。
 ミニラウンジは普通車指定席「ドリームカー」の4号車寄りあって、元々は喫煙スペース(現在、急行「はまなす」は全車禁煙)だったところ。禁煙のマークが目立つテーブルといい、丸い赤い椅子といい、どことなく昭和の時代のスナックみたいな雰囲気を醸し出している。
 なかなか寝付けない時、ここで流れゆく車窓を眺めてみるのもいい。ただ、深夜の時間帯を走る列車でもあり、くれぐれも騒いだりせず、お静かに!

どことなく昭和を感じさせる急行「はまなす」のミニラウンジ。赤い丸椅子がいい感じだ

<東京発 いとしの「はまなす」フルムーンの運賃・料金総額、総乗車距離>
運賃・料金総額:323,520円 (2名分合計 通常期で算出)※このコースはすべてJR線を利用
総乗車距離:4446.7km ※運賃計算キロ ※このコースはすべてJR線を利用
JR運賃・料金総額:323,520円(2名分合計 通常期で算出)
JR総乗車距離:4446.7km ※運賃計算キロ
お得になった金額:240,720円(JR運賃・料金総額-フルムーン夫婦グリーンパス料金[5日間一般用82,800円])
乗車倍率:3.90倍 (JR運賃・料金総額÷フルムーン夫婦グリーンパス料金[5日間一般用82,800円] )
※運賃計算キロは、JR東日本のサイト、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示のものです。

● 旅人(著者)紹介 相澤秀仁&相澤京子

写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡している。これまでに140日以上フルムーンパスでの旅をし、JR路線も約13万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。
また、英語クロスワードパズルを新聞に17年にわたって連載。
夫婦旅ブログ http://fullmoon.aizawa22.com

 

文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは平成27(2015)年9月20日現在のものです。
※時刻等は、時刻表9月号、えきねっと「乗換・運賃案内」、JRおでかけネット「マイ・ダイヤ」等のものを使用。
※時刻は臨時に変更となる場合があります。
※運賃例は、全JRが通常期の2015年10月11日付で算出。

前のページへ

バックナンバー

このページのトップへ