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列車でひとり旅●日帰り食べ歩きII 祝!日本一 餃子のまちに飛び込んでみる●静岡県浜松市
キャベツのジューシーさ、甘さに箸が止まらない|むつぎく

キャベツ9:肉1の割合で、圧倒的にキャベツの量が多く、このジューシーさは食べた者のみが知る醍醐味だ。甘く、軽い食感は、何個でも食べられる。皮のとじ目が少し開いて具がのぞく餃子もあるが、たくさん食べてもらいたい店の気持ちが、つい、そうなるのだとか。
暖簾をくぐると、バンダナ巻きの女性スタッフたちが元気に出迎えてくれる。昭和37年創業。長年、千歳町で地元に愛されたが、一昨年移転し、駅に近くなり、より便利に。「女性ひとりでも気軽に入れる店」を目指している。

焼き餃子特大20個1150円、大16個920円、中12個690円、小8個490円
持ち帰り:焼き餃子
TEL.053・455・1700
営業時間:11:30〜14:00LO・17:00〜21:00LO(日曜・祝日は〜20:30LO)月・第2・4火曜ほか不定休。
住所:浜松市中区砂山町356-5
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諸事情で浜松を離れても、
実家より先にここ「むつぎく」に立ち寄る人も

極限まで薄い皮だからこそ、外パリ・中モッチリ|喜慕里(きぼり)

大ぶりで、皮は厚めかな? と思ったが、じつは極限まで薄くしてもらう特注なのだとか。この薄さだからこそ、外はカリッ、中はモッチリの餃子が焼ける。仕込みや包みは従業員に任せるが、焼きだけは譲れないという店主。具はしっとり系で、キャベツ5:肉5の割合。
開店前には人が並び始め、持ち帰り注文の電話もひっきりなしで人気がうかがえる。焼いて焼いて、焼きまくる店主は、いったいいつ休むのだろうと余計な心配をしてしまう。

餃子大20個1008円、中15個756円、小10個504円。エビ入り、イカ入り、カニ入りもある
持ち帰り:焼き餃子、冷凍餃子
TEL.053・447・5737
営業時間:11:30~14:30・16:30~21:00、木・第3水曜休
住所:浜松市南区増楽町563-3

 

フライパンではなく厚みのある鉄板で焼くのがこの店の特徴

塩ゆでキャベツ入り! 四角い個性派|大福

げんこつ餃子の原点は、店主の学生時代にある。店を出すと決めたとき、浜松餃子定番のカタチと味に負けない餃子を、と看板商品にした。
底の四角い、大きめの餃子は、名前どおり味もパンチが利いている。キャベツ中心に、肉、ショウガ、ニンニクも主張。塩ゆでしたキャベツを包むので食感が独特だ。生キャベツを入れた、普通の餃子と食べ比べるのもいい。
JR浜松駅から徒歩圏内、佐鳴湖方面へ歩く。西郵便局が目印だから、わかりやすい。

餃子8個400円、しそ入り8個500円、げんこつ餃子4個420円、6個630円。海老入り、焼豚入りの餃子もある
持ち帰り:焼き餃子、生餃子、冷凍餃子
TEL.053・457・1169
営業時間:11:00~14:00・16:00~20:00、火・水曜休
住所:浜松市中区西伊場町57-15
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どの店もタレは自家製だが、
当店は餃子に合わせた自家製ラー油まである

浜松餃子といえばのモヤシはこの店が原点|きよ

「モヤシのせ」は今や浜松餃子の顔だが、じつは当代の両親が始めた。
フライパンで焼く屋台スタイルも老舗の印だ。仕上げに、豚の背脂を煮出しただし汁をかけて蒸し焼きにする。動物性油脂の組み合わせがかもしだす、サクッと感は秀逸だ。皮の形も、店主が考案した楕円。向こうが透けるほど薄い。ひと工夫が、オリジナルの旨さを決める。厨房にズラッと並んだフライパンと木蓋を前に、餃子を焼く姿が美しく感じるほど。

鍋貼強子(ぎょうざ)大16個940円、小12個740円
持ち帰り:焼き餃子、生餃子
TEL.053・454・1931
営業時間:17:00頃~21:00頃、水・第3火曜休
住所:浜松市中区鴨江1-33-5

洗練された味わいが特徴。「鍋貼」は焼き餃子の中国語

 昔から地元浜松では、家庭、店内、持ち帰りを問わず、とにかく、なにかと言えば餃子を食べる傾向があるのだそう。2011年に引き続き2012年も、世帯当たりの購入額が日本一の餃子のまちになった浜松。取材で歩いて感じたことは、びっくりするほど、どの店も、そして浜松のどの人も、「餃子」への思いが熱い。
 面積でいうと、日本で2番目に広い市、そして話題の政令指定都市でもある。楽器、自動車やバイクなどの工業都市として知られると同時に、お茶やミカン、意外なところではジャガイモ産地でもある農業都市。地元産のキャベツもあるし、隣接する愛知県もキャベツ産地で名高く、野菜中心の浜松餃子の特徴は地産地消ゆえか。

 作る側もハンパじゃないが、食べる側も熱い。皆、お気に入りの店があり、さらに飽くなき探究心と呼びたいほど、新しい店も開拓する。小腹がすいてラーメンを食べる感もとは屋台の狭い調理場でフライパンを使って焼かれた餃子が原点らしい。花が咲いたように丸く盛りつけ、真ん中のすき間にモヤシをのせるスタイルも必然といえる。「浜松餃子」の定義めいたものは後づけで、5年ほど前から馴染んできたネーミング。
 すでに創業50年になる老舗も数ある。老舗の、いわゆる浜松餃子は「おふくろ」の味がするのが特徴だ。先代、先々代の味が受け継がれつつ、新しい今の味も加わっている。餃子を食べて、気持ちがやわらぐのも、そのせいだろう。

 ウナギで有名な浜松だが、餃子パワーも見逃せない。JR浜松駅から徒歩で行ける店もあるが、日帰りの食べ歩きなら、放射状に走行するバスを使うのが便利。遠鉄バスが出す1日乗車券もいくつかタイプがあるので、お目当ての店にあわせて選ぼう。持ち帰り餃子は、鍋の具や水餃子にもグッド。
 さらに浜松市を楽しむなら、1泊してゆっくりするほうが賢明かも。有名な浜名湖よりも小さいが、餃子エリアに近い佐鳴湖の散策はひとり旅向きだ。

餃子といえば……!! BEER


「餃子」にビールは、条件反射的なセットメニューだ。せっかく浜松餃子を食べるなら、浜松の地ビールをお供にしたい。
浜松の地ビールを製造する浜松酒造が営む『天神蔵』には残念ながら餃子メニューがないので、ビールを買い、餃子を持ち帰りし、帰途の新幹線内で名残り惜しみつつ食するのがおすすめ。ニンニク臭が少ないのも浜松餃子の特長だから安心して。

天神蔵麦酒おつまみ付き500円。天神蔵ほか、遠鉄百貨店でも購入可能。330mlビン入りで410円。

天神蔵浜松酒造株式会社
TEL. 053・461・6145 
営業時間:10:30~19:00、火曜休
住所:浜松市中区天神町3-57

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取材・文・撮影=北須賀 可央利 
※本記事は、月刊『旅の手帖』2012年4月号をもとに再構成しています
※掲載されているデータは平成25年5月現在のものです

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