熊本駅から乗った特急「九州横断特急」は、八代駅から肥薩線に直通乗り入れをする。八代から単線の肥薩線に入ると、車窓からは球磨川の絶景が楽しめ、地形に逆らわずひたすら川に沿ってカーブを描きながら走っていく。
肥薩線は明治42年(1909)に全線開通。当時は「鹿児島本線」と呼ばれていた幹線だったが、海岸廻りの鹿児島本線(現・肥薩おれんじ鉄道)が開業すると「肥薩線」と改称してローカル線になった。
昭和40年代初頭から肥薩線を走る蒸気機関車を追って何度か訪れたものだが、今は復活した「SL人吉」が観光シーズンを中心に熊本~人吉駅間を走っている。
今回、特急列車を選んだのは、球磨川沿いの「一勝地(いっしょうち)駅」で途中下車をするため。この駅はその名の通り、縁起の良い駅名として知られ、平日のみ「必勝お守り記念入場券」を販売している。そして、もう一つの目的は、駅近くにある球磨焼酎の小ぢんまりした酒蔵。ここの焼酎はお気に入りのひとつで、試飲をしながら酒蔵見学が楽しめる。これも列車の旅ならではの業である。
次発の各駅停車に乗って人吉駅に向かう。人吉盆地の中心都市・人吉市は、街の中心部を球磨川が流れ、相良藩700年の歴史が今も息づく「九州の小京都」。市内に豊富な湯量の温泉が湧き、共同浴場を中心に湯宿が建ち並ぶ。
常宿「人吉旅館」に旅装を解く。球磨川に面した老舗旅館で、女将は韓国から嫁いできた見目麗しき若女将。着物姿も板について、今や人吉温泉の顔といった存在だ。何よりも我々鉄道ファンに理解ある接客がうれしい。
翌日は話題の列車「いさぶろう1号」に乗車して、大畑ループと真幸(まさき)のスイッチバックに挑む。人吉駅を発車した気動車は、エンジン音を高鳴らせて急勾配を進む。蒸気機関車D51が前後重連で列車を大畑に押し上げていた時代が蘇ってきた。大畑は大ループとスイッチバックのある駅。蒸気機関車時代の給水塔や、当時の木造駅舎が残っている。
真幸を出れば「いさぶろう」の終着駅・吉松に到着。かつては蒸気機関車の機関区があり、煙に包まれた町だった。
ここからさらに特急「はやとの風」に乗り継ぎ、肥薩線の旅を続ける。レトロ駅舎の嘉例川(かれいがわ)駅は話題の駅だが、大隅横川(おおすみよこがわ)駅もなかなか風情のある駅だ。ホームの駅舎の柱には太平洋戦争時に米軍の機銃掃射を受けた貫通跡が残っている。生々しい昭和の痕跡といったところであろう。肥薩線の旅では、昭和を色濃く、間近に感じられる。
- アクセス
- 人吉駅へは、鹿児島本線八代駅から肥薩線特急で約1時間、普通列車で約1時間30分。 ※金・土曜・休日を中心に八代~人吉駅間で「SL人吉」が1往復運行中
- 主な観光スポット
- 人吉温泉元湯⇒人吉駅から徒歩20分
- 人吉城跡⇒人吉駅から徒歩20分
- 青井阿蘇神社⇒人吉駅から徒歩5分
- 大村横穴群(古墳時代)⇒人吉駅から徒歩5分
- 観光の問合せ
- 人吉市観光振興課 TEL.0966-22-5610
- 1月24日
- グアム島で元日本兵・横井庄一さん発見
- 2月3日
- 第11回冬季オリンピックを札幌で開催
- 2月19日
- 連合赤軍浅間山荘事件
- 3月15日
- 山陽新幹線(新大阪~岡山駅間)開業
- 5月15日
- コンビニ国内第1号店「セブン-イレブン」豊洲店オープン
沖縄返還、沖縄県発足 - 8月26日
- 第20回ミュンヘンオリンピック開催
- 9月29日
- 日本と中国、国交を樹立
- 10月14日
- 日本の「鉄道開業100年」
- 11月5日
- パンダ2頭(カンカン・ランラン)が上野動物園で公開開始
第二球磨川橋梁を渡るキハ40形の普通列車。のんびりと球磨川を眺めよう(那良口~渡駅間)
栗野駅のすぐ近くには名水百選「丸池湧水」がある。泉のほとりを列車が通過する景色が見られる
スイッチバックのある真幸駅。「幸せの鐘」がホームに設置され、数分の停車時間に「真の幸」を求めて鳴らす
人吉温泉には風情ある共同浴場が点在する。「元湯」は、地元の人たちに愛される温泉だ
百年駅舎として鉄道ファンの絶大な人気を誇る大隈横川駅。木造駅舎にレトロな赤ポストが映える
肥薩線をネットワークとする特急のひとつ「はやとの風」は、鹿児島中央~吉松駅間を結ぶ(嘉例川駅)