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国宝に指定されている松本城。天守閣までは急こう配の階段が続くが、眺めは最高だ
安曇野名産のわさび田が広がる大王わさび農場では、のんびり散歩するのがおすすめ
村の守り神として、村の中心や道の辻、三叉路に立つ道祖神は、もっとも身近な神様
現在放映中のNHK連続テレビ小説『おひさま』の舞台、信州の安曇野・松本。ドラマの舞台のように激動の昭和の時代から現代まで、なお変わらずにある北アルプスの北麓に広がるのどかな田園風景と、5月が見ごろのリンゴの白い花に合いに行こう。
新宿駅から特急「あずさ」で2時間50分、松本駅に着く。駅レンタカーに乗り換えたら、まずは松本のシンボル・国宝松本城へ。現存する五層天守の城の中では日本最古の城で、黒と白のコントラストが美しい。5月1日は松本市制記念日のため入場が無料になる。
松本城見学を終えたら北に30分ほど走り、安曇野の大王わさび農場へ向かう。大王わさび農場は、安曇野わさび田湧水群の中にあり、北アルプスの雪解け水が豊富に湧く。真夏でも水温が15度を超えない清涼な水で、大正時代からわさびを栽培してきた。東京ドーム11個分もの敷地にわさび畑が広がり、黒澤明監督の映画『夢』の舞台にもなった情緒ある三連の水車は記念撮影スポット。売店では、人気のわさびソフトクリームやわさびコロッケが買えるほか、トンボ玉づくりなどの体験もできる。トンボ玉などのガラス工芸や、名水で打ったそばやコーヒーを楽しむなら、公共の宿も併設する「安曇野の里」にも足を延ばそう。
安曇野は道祖神の宝庫ともいわれ、豊科地域と穂高地域とあわせて500体を超えるバラエティに富んだ道祖神が見られる。安曇野市観光協会では、5月、6月に『おひさま』に出てきた道祖神などをめぐるツアーもあるので、参加するのも楽しい。
60年ぶりの式年大祭が開催される櫻山八幡宮では、毎年、秋の高山祭が行なわれている
奥飛騨温泉郷の基点、家庭的な雰囲気の栃尾温泉洞谷一帯の桜がライトアップされる
2階建ての新穂高ロープウェイは、東洋一、世界第2位のスケールの空中散歩が楽しめる
東西を険しい山に、南北を厳しい河川峡谷に囲まれている飛騨エリア。古い町並みの残る高山市で60年ぶりに行なわれる櫻山八幡宮式年大祭を見学した後は、奥飛騨温泉郷まで足を延ばし、平地より1ヵ月遅い桜と情緒豊かな温泉を楽しみたい。
名古屋駅から特急「(ワイドビュー)ひだ」で約2時間半、高山駅に到着。駅から歩いて約20分の櫻山八幡宮では、5月3日から5日に飛騨一円の神社約130社が参加する大祭が行なわれる。古式ゆかしい御神幸行列や、境内の特設舞台で獅子舞や神楽舞などが奉納されるこの大祭は、五六豪雪があった昭和56年以来約30年ぶりの開催。天災や世情不安なことが起きた時に行なう祭りのため「世直しの大祭」ともいわれる。「今回は、東日本大震災の被災者の皆様のお見舞いと、復旧復興を祈念して取り行ないます」と大会事務局。ぜひ参加して祈りを込めたい。
高山駅から駅レンタカーに乗り換え、北アルプスの懐に抱かれた奥飛騨温泉郷へ。平湯、福地、新平湯、栃尾、新穂高とそれぞれ異なる特徴を持つ温泉地は、5月上旬に桜の見ごろを迎える。奥飛騨は露天風呂の数で日本一といわれているが、栃尾温泉の公共露天風呂「荒神の湯」周辺では桜の期間中、ライトアップも行なわれる。桜が終わった後にも、木々がみずみずしい新緑へ移ろう奥飛騨の風景は、雪深い土地だからこその躍動感にあふれている。見上げればまだ雪を抱いた北アルプスの山々。新穂高ロープウェイも夏山のトップシーズンにはない、この時期ならではの景色を楽しめる。
向島と因島を結ぶ因島大橋は、しまなみ海道で唯一の2階建てのつり橋だ
耕三寺博物館は大阪の元実業家が母を追悼し建立した。美術コレクションを公開する
尾道みなと祭では、震災復興の祈りをこめた創作踊り「ええじゃんSANSA・がり」を披露
新大阪駅から新幹線で1時間強、駅前に城のある福山駅に着く。早速、駅レンタカーに乗り換え、西へ約35分の尾道市へ向かう。古くから港町として栄えてきた尾道では、4月30日、5月1日に「尾道みなと祭」を開催。創作踊り「ええじゃんSANSA・がり」を中心とした春の尾道を代表するイベントで、今年は東日本大震災の復興を願いを込めて「尾道から元気を!」が合言葉だ。
本州と四国をつなぐ島の道、瀬戸内海しまなみ海道へ入る。しまなみ海道の数ある橋のうち、尾道側から2番目にあたる因島大橋は2階建て構造になっている。上部が車道で下部が自転車歩行者道の珍しい橋だ。瀬戸内海に浮かぶ美しい島々を眺めながら、しまなみ海道の中心に位置する生口島(いくちじま)へ向かおう。生口島には平山郁夫美術館や、飛鳥から江戸時代の代表的仏教建築を復元した塔堂のある耕三寺・耕三寺博物館など、美術館や博物館が点在する。国産レモン発祥の地でもあり、ぜひレモンやみかんなどのフルーツを使ったジェラードを食べたい。
「伯方の塩」で有名な伯方島を通って、愛媛県側に渡るとそこは今治市。タオルの一大生産地として知られ、5月14・15日には地元メーカーが安くタオルを販売する今治タオルフェアも予定している。また、5月末まで市内各地の神社では、県の無形民俗文化財に指定されている伝統芸能「継ぎ獅子」が披露される。
余裕があれば、松山まで足を延ばしてみよう。正岡子規や夏目漱石など多くの俳人や文人ゆかりの地の松山で、専属ガイドと一緒に街を歩きながら一句したためる「松山はいく」に参加するのもおすすめだ。
「はな阿蘇美」のローズガーデンでは、イングリッシュローズなど世界のバラが咲く
「仙人が酔うほど美しい峡谷」が由来の仙酔峡で咲くツツジ(ミヤマキリシマ)
杖立川を挟んで約3500匹の鯉のぼりが泳ぐ杖立温泉は、あちこちに昭和の雰囲気が残る
3月に全線開通した九州新幹線。九州をひとつにした新幹線に乗って、熊本県の阿蘇エリアで花めぐりの旅をしよう。機動力のあるレンタカーとの組み合わせだから、あこがれの黒川温泉も、美肌効果の高い「蒸し湯」のある杖立温泉にも楽々行ける。
熊本駅までは、博多駅から九州新幹線で約33分。ここで駅レンタカーを借りてもいいし、豊肥本線に乗り換えて阿蘇駅まで列車旅を楽しむのもいい。4月23日~5月8日までと5月29日までの土・日曜日には、特急「阿蘇ゆるっと博」号も運行する。
5月の阿蘇エリアは、花の名所がたくさん。まず、5月上旬~中旬にかけて阿蘇五岳の高岳周辺の仙酔峡では、ミヤマキリシマが峡谷をピンク色に埋め尽くす。また日本最大級のバラドーム温室のある「はな阿蘇美」では、5月中旬~6月中旬に世界各国のバラ約300種1000株が咲くほか、ローズガーデンで優雅なバラの世界が堪能できる。さらに、阿蘇山の東側には「南限のスズラン」といわれる野生のスズラン約5万本が群生し、5月中旬ごろから可憐な花を咲かせる。この時期だけの贅沢な花めぐりだ。
阿蘇駅から「やまなみハイウェイ」を1時間ほど走ると、黒川温泉に着く。黒川温泉では、今年5月に露天風呂めぐりの「入湯手形」が25周年を迎えるため、来年3月末まで総額250万円相当が当たるキャンペーンを実施中。さらに北へ約40分行くと、日本屈指の湯量と高い湯温を誇る杖立温泉だ。蒸気を利用した蒸し湯は、のどによく、エステ効果も得られるそう。GW期間中には、温泉街を約3500匹の鯉のぼりがはためく姿も見られる。