『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東北本線の小牛田駅と奥羽本線の新庄駅を結ぶ陸羽東線。車窓の旅は、小牛田駅からスタートしよう。ホームに停車中の列車は、2両編成のディーゼルカー。「奥の細道湯けむりライン」という路線愛称のとおり、車両の正面に描かれた奥の細道の文字が鮮やかだ。
小牛田駅を発車した列車は、すぐに左に大きくカーブして東北本線と離れ、大崎平野の水田地帯を一直線に進む。東北新幹線と接続する古川駅を過ぎ、しばらく走ると岩出山駅。 岩出山は、伊達政宗が仙台に移るまで居城を構えた、伊達氏ゆかりの地。次の有備館駅は平成8年の開業。現存する日本最古の学問所である「有備館」の最寄り駅で、重厚な構えの駅舎は「東北の駅百選」に選定されている。池月駅あたりから徐々に山が迫り、杉林を抜けて勾配区間を上っていくと川渡温泉駅。荒雄川を渡って鳴子御殿湯駅。さらに山裾に沿って進んで温泉街が見えてくれば、鳴子温泉駅だ。 ほとんどの列車がこの駅で乗り換えとなるので、途中下車して湯めぐりを楽しみたい。
鳴子温泉駅を発車した列車は、ふたたび上り勾配をゆく。車窓右に荒雄川の流れを見ながら進むと、間もなく鳴子トンネル。抜ければ断崖絶壁の鳴子峡が車窓右に現れる。秋ともなれば錦繍をまとった絶景が、車窓に飛び込んでくる。紅葉のシーズン中は、列車も減速運転をするので、この風景をゆっくりと眺めることができる。ふたたびトンネルを抜けて進むと中山平温泉駅。山々を望みながらさらに上れば、宮城県から山形県へと入って堺田駅に到着する。
ここからは一転して下り勾配。赤倉温泉駅を過ぎ、鵜杉駅を発車すると、列車は小国(おぐに)川に寄り添うように走り、車窓左に瀬見渓谷が見えてくれば瀬見温泉駅。対岸には、静かにたたずむ瀬見温泉の宿も望める。徐除に田園風景が広がり、車窓左に山形新幹線「つばさ」も走る奥羽本線の線路が並んでくれば、南新庄駅を過ぎて、列車は終点の新庄駅に到着する。
赤倉温泉駅に停車するキハ111・112形ディーゼルカー。正面に奥の細道のロゴ、窓の下には鳴子峡の紅葉をイメージした赤のラインが入った、陸羽東線オリジナル塗装の車両だ
鳴子トンネルを抜けると、車窓を染めつくすように紅葉の鳴子峡が広がる。鳴子温泉駅~中山平温泉駅
鳴子峡を行く陸羽東線の列車。鳴子峡は、荒雄川に注ぐ大谷(おおや)川が刻む大峡谷。鳴子温泉駅から歩いて30分ほどの大谷橋から見晴らし台まで、約2.5キロの遊歩道がつづいている。鳴子温泉駅~中山平温泉駅
堺田駅~赤倉温泉駅間を走る普通列車。先頭の車両は、窓の下のラインが黄色のキハ110形で、主力のキハ111・112形とともに陸羽西線でも運用されている
午後の日差しを浴びて、のどかな時間が車内に流れる。堺田駅~赤倉温泉駅
東北本線小牛田駅と奥羽本線(山形新幹線)新庄駅を結ぶ、営業キロ94.1kmの非電化・単線の路線。奥羽山脈を越えて、東北地方を南北に走る東北本線と奥羽本線を結ぶ路線はいくつかあるが、最初に全通したのが陸羽東線。大正2年(1913)4月に、陸羽線として小牛田駅~岩出山駅間が開通。同6年11月には全線が開通し、同13年に陸羽東線と改称された。
路線愛称の「奥の細道湯けむりライン」が示すように、平成9・11年の駅名改称によって、6つもの温泉駅が誕生した(川渡=川渡温泉、東鳴子=鳴子御殿湯、鳴子=鳴子温泉、中山平=中山平温泉、羽前赤倉=赤倉温泉、瀬見=瀬見温泉)。
現在の運転は、普通列車のみ。一日3本の直通列車以外は鳴子温泉駅で乗り換えとなるほか、小牛田駅~古川駅間の区間列車も多い。
また、新型リゾートトレインの「みのり」を使用した臨時快速列車「リゾートみのり」が、小牛田駅~新庄駅間(土曜・休日は仙台駅~新庄駅間)に一日1往復運転されている。全車普通車指定席。
掲載されているデータは平成20年10月現在のものです。詳しい運転時刻については「JR時刻表」をご確認ください。
次回は、飛騨路の絶景を駆け抜ける「高山本線」です。