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車窓で旅する日本列島:関西本線

峠を越えて歴史を秘めた桜の里へ

 名古屋駅とJR難波(なんば)駅を結ぶ関西本線。その両端の名古屋駅~亀山駅間とJR難波駅~加茂駅間は、名古屋・大阪の都市圏輸送を担う電化区間だが、その狭間になる亀山駅~加茂駅間は、1~2両編成のディーゼルカーが走るローカル線。車窓の旅も、この区間にスポットを当てて紹介したい。

 亀山駅から乗車する列車は、ちょっと小ぶりなボディーのキハ120形ディーゼルカー。亀山駅を発車して鈴鹿(すずか)川に沿って進み、東名阪自動車道をくぐって関駅へ。古代より“鈴鹿の関”が置かれていた宿場町は、国道1号を隔てたところにある。関駅を発車した列車は加太川の谷間に入り、短いトンネルを二つ抜けると加太駅。さらに上り勾配を進み、かつてSL時代の撮影名所であった“加太越え”の大築堤を進む。スイッチバック式だった中在家(なかざいけ)信号場を通過して加太トンネルを抜けると、勾配は下りになって柘植駅に到着する。この先の新堂駅、佐那具駅は、駅舎や改札、ベンチなどに昔ながらの風情を残しており、これらの駅で途中下車するのもいいだろう。

 柘植川沿いにのどかな田園風景が広がる伊賀の里を進むと、次の停車駅は伊賀上野。島ケ原駅や月ケ瀬口駅付近では、列車は木津川の谷間を走る。大河原駅を過ぎ、木津川橋梁を渡り、車窓右にゆったりと流れる木津川を眺めながら進むと、桜並木を抜けて笠置駅に到着する。春ともなると、駅前の河原には満開の桜を求めて花見客が集まり、普段は静かな駅も、ひと時のにぎわいをみせる。後醍醐(ごだいご)天皇の行在所(あんざいしょ)があったという笠置山をあとに、さらに木津川沿いを進めば、列車は終点の加茂駅に到着する。

貨物列車を引くD51が力闘した“加太越え”の大築堤を、今はステンレス製のディーゼルカーが、軽快に走り抜けてゆく。加太駅~柘植駅

柘植川の広い谷を走るキハ120形2両編成の普通列車。加太駅~柘植駅

草津線が接続する柘植駅。開業は明治23年(1890)2月

歴史とロマンを漂わせる木津川の景勝を楽しみながら、列車は進む。大河原駅~笠置駅

満開になった桜のトンネルの中を列車は進む。大河原駅~笠置駅

関西本線

 関西本線の歴史は長い。明治22年(1889)5月には、前身となる大阪鉄道が湊町駅(現・JR難波駅)~柏原駅間を開業。翌23年12月には、やはり前身となる関西鉄道が、現在の柘植駅~四日市駅間を開業させている。その後の路線延長や両社の合併などを経て、明治40年には国有化、名古屋駅~湊町駅間は関西本線となった。

 かつては、東京駅と湊町駅を結ぶ夜行急行「大和」や、名古屋駅~東和歌山駅(現・和歌山駅)間の特急「あすか」が運転されていた時代もあったが、名古屋駅~奈良駅間の急行「かすが」が平成18年に廃止されて、同線の運転系統は完全に3分割された。今回紹介している亀山駅~加茂駅間は、名阪間に張り巡らされた鉄道網のなかでは数少ない非電化・単線の路線。キハ120形の1~2両編成によるワンマン運転が行なわれている。

キハ120形は、平成4年に登場したJR西日本初の新製気動車。同社エリアの各地のローカル線で活躍しており、路線によって車体のカラーが異なる。大河原駅

※掲載されているデータは平成21年3月現在のものです。詳しい運転時刻については『JR時刻表』をご確認ください。

次回は、桜の名所と新緑の夏井川渓谷を巡る「磐越東線」(予定)です。

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