『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
小浜線は、若狭湾に沿って走る風光明媚な路線。古代より朝廷に御贄(みにえ)を納めてきたことから「御食国(みけつくに)」とも呼ばれた若狭は、その食材を育んできた豊かな自然と歴史に満ちている。車窓の旅も、敦賀駅から東舞鶴駅へと、若狭の名所を訪ねる旅だ。
北陸の玄関口・敦賀駅。平成18年10月に電化方式が交流から直流に切り替わり、大阪駅から新快速に乗れば、2時間足らずで直通できるようになった。地下道を抜けて小浜線の列車が発車する1・2番線ホームに上がり、ステンレス製電車に乗って、出発しよう。
敦賀駅を発車した列車は、しばらく北陸本線と並走した後、右にカーブして山間に入っていく。粟野駅を出ると関峠にかかるが、電車は軽快なモーター音を響かせて快走する。やがて、車窓右に若狭湾が現れ、東美浜駅、美浜駅と停まっていく。しばらく水田地帯を走れば、車窓右には三方五湖のひとつである久々子(くぐし)湖が見えはじめ、気山駅を過ぎると菅(すが)湖、三方湖、そして狭い地峡を隔てて一瞬ながら水月(すいげつ)湖も望むことができる。
さらに列車は、水田地帯や山間を進み、やがて小浜駅に到着。「海のある奈良」とも呼ばれる小浜は、若狭と京の都を結んだ鯖(さば)街道の起点。途中下車をして、往時の面影を残す町並みや名刹を訪ねてみたい。
列車は再び小浜の町中を快走し、小さなトンネルを2つ抜けると勢浜駅。国道と並んで加斗トンネルをくぐると加斗駅で、過ぎれば小浜湾をはさんで大島半島、その向こうには「若狭富士」とも呼ばれる青葉山を望むことができる。ほどなくして列車は、若狭湾のマリンレジャーの玄関口・若狭本郷駅に到着。さらに、若狭和田駅、若狭高浜駅と停車し、青郷駅を発車して吉坂トンネルで峠を越えれば、福井県から京都府へ。低く続く丘陵の裾を走り、家並みの中の高架線を進めば、終点の東舞鶴駅は目前だ。
波穏やかな小浜湾に沿って走る。小浜駅~勢浜駅
青い海が車窓に広がる。小浜駅~勢浜駅
勢浜駅に進入する125系電車。車両の両端に運転台とワンマン運転用の機器を搭載するローカル線用の直流電車で、小浜線のほか、兵庫県の加古川線などでも活躍している
運転席越しに風景を眺めるのも楽しい。東美浜駅~美浜駅
「花の万博」のSL駅だった「風車の駅」を移築した若狭本郷駅
北陸本線の敦賀駅と舞鶴線の東舞鶴駅を結ぶ営業キロ84.3kmの単線・電化路線。大正6年(1917)12月に敦賀駅~十村駅間が開業したのを皮切りに、同7年11月には小浜駅、同10年4月には若狭高浜駅へと延長され、同11年12月に敦賀駅~新舞鶴駅(現・東舞鶴駅)間の全線が開業した。ただし、軍港があった東舞 鶴に至る舞鶴線の開業は古く、明治37年(1904)11月には、当時の阪鶴鉄道によって大阪駅~新舞鶴駅間の直通運転が開始されている。
かつては、金沢駅と大社駅を結ぶ急行「大社」などが運転されていた時代もあったが、現在は普通列車のみの運転。平成12年から直流電化工事に着手し、同15年3月に電化開業。125系電車の1~4両編成または521系電車の2・4両編成で運転されており、ほとんどの列車がワンマン運転となっている。
若狭路を快走する125系電車。かつては北陸と山陰を結ぶ急行「大社」やC58形SLが引く客車列車も運転されていた小浜線だが、電化された今は、写真の125系電車と521系電車が主役だ。若狭有田駅~上中駅
※掲載されているデータは平成21年9月現在のものです。詳しい運転時刻については『JR時刻表』をご確認ください。
次回は、「只見線」(予定)です。